人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(46)

・世界、または歴史はなぜ終わったか、
 と、突然小石は語り始めました。はあ?とぽかんとするかすかべ防衛隊の幼稚園児たち。そんなのオラ5歳だからわかんないゾ、としんのすけ。つられてうなずくネネちゃんや風間くんたち。
 いいからお聞きなさい、と小石は続けました。歴史はその創成期を知ればよいと考えます。理由のひとつが最も輝いていた黄金時代であるからです。今は天才達が次々と現れてひとつのムーブメントが形成されていくような時代ではない。彼ら創成期の巨人たちが行き着いた境地は他を圧倒しています。
 これは私が過去に考えたことから抜粋し要約した結論です。ではなぜこの時代に多くの偉人たちが出現したのでしょうか。それは、
・1917年レーニン十月革命によるボリシェヴィキ政権樹立の後も労働者は理不尽な搾取をされ常に抑圧され続けてきたのであった。
 はあ、としんちゃんたちは、これは困ったことになったゾ、と思いました。小石は幼稚園児たちの困惑にかまわず、無産階級層の生み出した文化と階級闘争の歴史を語り続けました。第二次世界大戦後のアフリカ大陸では民族解放運動が勃発した。欧米各国に侵略されたこの地域では奴隷の輸出によって人口が減少していた。植民地だった多くの国々が1950~1960年代に独立宣言を成し遂げた、といった調子です。
・その影響もあって、
 と小石はなおも世界各地にフィードバックしていく階級闘争の歴史を説き、このような背景を考証すると歴史とは闘いの累積ではなかったのかと考えたい。人間はハングリーな状況下で最高の業績が生まれるものだと思う。人々は自らに科せられた抑圧に加えて、搾取から起こった様々な事件に憤りを覚えたのは間違いない。その怒りが創造的な歴史の発展に関与していると思う。彼らによる解放闘争がさらに世界中の反戦運動や闘争につながり、瞬く間に全世界へと広まっていったという。それは社会的、文化的、政治的にも多大な影響を与えたのであった(と小石は言いました)。
 時は経ち今、世界はどうなったのでしょうか。はっきり言って何も無いというのが私の印象です。今なお事件や暴動を見るにつけ社会問題としての搾取は一向に無くなる気配はありません。法律的には解消されましたが闘争はまだ終わっていません。労働と闘争は切り離されてしまいハングリーな状況は無くなったようです。それは現実に現れていると思います。
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