人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(48)

 ネネちゃんとあいちゃんはしばらくにらみあっていましたが、根くらべなら負けないわとはいえお嬢さま育ちのあいちゃんにはネネちゃんの勝ち目はありません。それに考えてみれば酢乙女あいちゃんはかすかべ防衛隊には何の関心もなく、しん様への恋心しかないのですから干渉している意識もなければ、その事実もないので、勝手にネネちゃんが喧嘩を売っているだけなのは誰の目にも明白でした。
 ん、まあね、とネネちゃんは両手を肩の高さでひらひらさせ、今日のところはこのくらいにしてあげるわ、と口元だけで笑ってみせました。風間くんたちはホッとしましたが、しんのすけはいつもの調子で、
・あー、ネネちゃんがごまかしたゾ!?
 ち、ち、違うよしんちゃん、とマサオくんが慌てる一方、それは言わぬが仏、とボーくんが悟ったような言葉を返し、風間くんはぼくが何とかしなきゃ、とオロオロしました。あいちゃんはフッと大人びた笑いをすると、でもしん様は私のしん様ですわよ、と言ってのけました。おお!?としんちゃんは言いましたが、おお!?はしんちゃんの口癖で大した意味はありません。ねえねえしんちゃんどういう意味、とマサオくん。そうだよしんのすけ、はっきり言えよ、と風間くん(ボー、とボーくん)。そんなこと訊かないでよう、子供じゃあるまいし、としんのすけ。まだ5歳だよ!と風間くん。
 スヌーピーはにやにやしながら後ろ手(前肢)を組み、腰を落としてチャーリーの周りを一周しました。正面まで戻ってきて立ち止まりウッシッシと笑うと、またチャーリーの周りを一周してウッシッシ笑いをし、また一周と見せかけてチャーリーの真後ろで立ち止まり、右足(後肢)で飼い主の少年のおケツを思い切り蹴り上げました。痛たたった!もう止めてくれよスヌーピー、いつまでこんなこと続けるんだい、とチャーリー・ブラウンはまた前のめりに倒れ、両手を地面についたまま呟きました。
 その頃偽ムーミンは拘束しておいたムーミンからの波動がほとんど途絶えているのに気づきました。しかしムーミンには脳を模した器官はあっても機能は果たしていないので、脳波の消滅がすなわち生命停止を表すとは限りません。もしムーミンが消えたら、と偽ムーミンはゾッとする思いがしました、このままおれがムーミンでいなければならないのだろうか。偽ムーミンムーミンになるということは、いったいどういうことだろうか。