中華あんかけ焼きそば

　一人前のあんかけ焼きそばを作るだけには面倒は省きたい。焼きそばは3玉100円のものを使い、中華あんかけは市販のレトルト中華丼の素、これも安い100円のものを使う。うずら玉子やキクラゲを一食分だけ買うよりも割安に済む。ただレトルトでは野菜が少ないので、白菜を一葉、焼きそばと一緒に炒める。白菜は水分が多いので、炒めながら出た水分で焼きそばもふっくら蒸したように仕上がる。
　吾妻ひでお氏の日記マンガで「焼きそばは私の主食」という記述があるが、氏にはかつてホームレス経験(『失踪日記』)もアルコール依存症治癒歴(『失踪日記2 アル中病棟』)もある。氏ほどでなくても似たような経験があればわかるが、境遇や病状から主菜、副菜、汁物、主食といった食事が摂れなくなるので、健康を回復しても食習慣にはかつてのやむを得ない嗜好がなかなか抜けないこともある。
　それでも中華あんかけ焼きそばなどは、まだ健康的な方だろう。ホームレスとアル中の違いは、いつも空腹か、酒以外に食欲を感じなくなるかで、アル中でさえ食べれば自分が空腹だったのがわかる。だが自然な状態でも動物はいつも空腹か、食欲など全然ないかの両極端だろうし、食べなくなるのは死のサインだろう。生きる本能に較べて死の本能が蔑まれる根拠など健康こそ正常とする傲慢ではないだろうか。