人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(19)

 だいたい私たちが戦場で働いている自体無理がなくない?とメラニーが言うので、そうでもないわよ、やってることはそれまでの私たちと大して変わりはないじゃない、とつとめて冷静にミッフィーは答えました。窓の外では味方・敵軍入り混じっての殺戮戦が繰り広げられていましたが、この店は一種の次元断層で外界から護られているので危険が及ぶようなことはなく、窓外の激戦は三次元式テレビ・モニターのようなものでしかありません。また彼女たちは軍事要員といっても赤十字社のように非戦闘員と位置づけられていましたから、もしこの地帯が敵軍の占領地になっても俘虜にはならず、軍務に変化はないのです。その意味ではミッフィーたちのディヴィジョンには敵も味方もなく、お客さまがいるだけ、とも言えます。うさぎがナイチンゲールというのも変な話ですが、慰安部隊には一応非戦闘員特権がありました。はむかわなければ、の話ですが。
 だいたいここは戦場よ、って言っていたのはニナじゃない?とミッフィーは立ち上がり、窓を閉めながら説明を求めました。あんたにああ言われてハロー何たらの店に偵察に行ってきたんじゃない、なのにあんたが真っ先に折れていたら、何のために偵察に行ってきたのかわからなくなるわ。実際自分でそう言いながら、ミッフィーちゃんはメラニーへの八つ当たりめいた憤怒がむらむらと湧いてくるのを感じました。メラニーは彼女にしてはしおらしいとも、またはあえて感情を抑えているようにも見えましたが、そうね、とあっさりと前言を認めたのでミッフィーとしては拍子抜けした思いでした。それならあんたは何をどうしたいってわけ?そうねえ、とメラニーは慎重に言葉を選んでいる様子です。そうねえ……。
 もし私たちが戦っていて、とうてい勝ち目のない戦いだとわかったらどうする?問いかけられて、ミッフィーは耳を疑いました。それってハローキティの店のこと?メラニーは答えませんでしたが、沈黙そのものが返答とも言えました。勝ち目がないってどういうこと?どうしてそんなことが言えるわけ?とミッフィーは質問をたたみかけたくなりましたが、うかつに訊き返してわからないの?と混ぜかえされるのも癪に障ります。早呑み込みをしてからかわれるのもご免です。それに本来うさぎは無口ですから、黙っているのは根くらべのようなものでした。根くらべなら負けないわ、とミッフィーは×の口を*に結びました。