人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Emmanuelle Parrenin - Maison Rose (Ballon Noir/CBS, 1977)

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Emmanuelle Parrenin - 薔薇色の館 Maison Rose (Ballon Noir/CBS, 1977) Full Album : https://www.youtube.com/playlist?list=PLxrXGVhRQhdrLHJVie9zw3XfbDrh696GK
Released Ballon Noir/CBS ?- BAL 13001, 1977
(Face A)
A1. この朝はフラモンテル… Ce Matin A Fremontel... (E. Parrenin)* - 2:45
A2. 白い羽根、黒い羽根 Plume Blanche, Plume Noire (J.C. Vannier)* Guitar /Denis Gasser - 3:01
A3. 礼拝式 Liturgie (E. Parrenin)* - 3:12
A4. チボールと金の木 Thibault Et L'Arbre D'Or (E. Parrenin)* - 4:01
A5. 間奏 Ritournelle (E. Parrenin)* - 2:29
A6. シルクのショール L'Echarpe De Soie (E. Parrenin)* - 1:56
(Face B)
B1. トパーズ Topaze (E. Parrenin, B. Menny)* - 6:40
B2. かわいいヴァージニー Belle Virginie (E.Perrenin)* - 1:35
B3. ネプチューンのバラード Ballade Avec Neptune (E. Parrenin)* - 3:02
B4. 薔薇色の館 Maison Rose (B. Menny, E. Parrenin)* - 2:34
B5. シャワーの後で Apres L'Ondee (B. Menny)* - 3:03
B6. 夢 Le Reve (B. Menny, E. Parrenin)* - 1:42
(Import Edition Bonus Track)
1.Voyage Migrateur (E. Perrenin) - 2:22
[Personnel]
Emmanuelle Perrenin - Vocals, hardy-gurdy, spinet, dulcimer & percussion
Bruno Menny - Drums & special effects
Didier Malherbe - Flute
Yan Vagh - Guitar & Vocals,
Dennis Gasser - Guitar
Doatea Bensusan - Vocals
Arranged By - B. Menny* (tracks: A1, A3 to A6, B1 to B6), D. Gasser* (tracks: A2), E. Parrenin* (tracks: A1, A3 to A6, B1 to B6), J.C. Vannier* (tracks: A2)
Producer - B. Menny*
Producer - E. Parrenin*

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 (Original "Maison Rose" LP Liner Cover)
 エマニュエル・パルナンのこのアルバムは80年代から超のつく幻の名盤として名のみ知られていた。生年ははっきりしない人で、1972年にブリジット・フォンテーヌ以降のヌーヴェル・シャンソンのオムニバス・アルバムに楽曲が収録されて知られるようになり、1977年に初の単独フルアルバム『薔薇色の館』をCBS傘下のバロン・ノワール・レーベルに残して、78年、79年まではオムニバス・アルバムへの曲提供はあるがその後95年までオムニバス・アルバムへの参加もなくなる。2009年に今世紀初のオムニバス・アルバム参加曲があり、2011年に『薔薇色の館』以来の単独フルアルバムになる『メゾン・キューブ』が発表された。前作から34年ぶりのセカンド・アルバムになる。

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 (Emmanuelle Perrenin "Maison Cube" 2011)
 77年のLPはずっと廃盤になっていたが、2000年には『薔薇色の館』はようやくフランス本国でCD再発され、珍しいことにアメリカで人気が出てアメリカ盤CDも2006年に発売、さらにアメリカではコレクター仕様のアナログ盤も出る。日本盤は2009年に国内初発売・初CD化され、韓国盤も翌年発売された。『薔薇色の館』のCD化の好評を受けてようやく『メゾン・キューブ』が制作された、ということだろう。以降のパルナンさんはライヴは活発らしいが、CDは2012年のオムニバス・アルバム参加曲が最新作になるらしい。レコード・デビューの1972年に22歳として、『薔薇色の館』が27歳のアルバムとしても今年65歳なので、フルアルバムの予定はもうないかもしれない。

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 (Emmanuelle Perrenin "Maison Rose" Face A Label)
 このアルバムは1枚きり残して消えた幻のロック系女性シャンソニエの名盤、タイトルが『メゾン・ロゼ』ならジャケットも格調高く、いったいどんな音楽なんだろう、アルバム紹介の文面や楽器編成からはヴァシュティ・バニヤン(英)とジェニー・ソレンティ(サン・ジュスト/伊)の中間みたいなスタイルのフィメール・ヴォーカルのアシッド・ロック作品か、と想像をたくましくしたものだ。フランス盤に強いと言われる輸入盤店で何回玉砕しただろう。ああいう専門店では、1.置いていないので「ない」と言う、と言うのと、2.知らないので「ない」と言う、のを正直に言わないのだ。もっとも初回プレスで廃盤になったパルナンの77年作品など80年代にそう簡単に中古市場に出回るわけない。そもそも日本に輸入された枚数だって3桁に達したとは思えない。
 そういうわけでユーロ・ロック専門誌や専門店、マニアの間でだけエマニュエル・ペルーナン(当時はそう呼んでいた)の『めぞん一刻』は羨望のアルバムになっていたので、ついに本国で初再発・CD化されたかと思いきや、アメリカ盤まで出たので意外だった。そういえばよく比較されるヴァシュティ・バニヤンとは確かに良く似ているが、やはりアメリカで着実な人気があるポポル・ヴー(独)のアコースティック期に入ってからの作品と、インストルメンタルと女性ヴォーカルの配分が良く似ている。バニヤンシンガー・ソングライターだが、パルナンはメディテイショナルなサウンドにもヴォーカルと同等以上に力を入れており、そこが一般的なシャンソニエとは違うアシッド・ロック系ミャージシャンならではの発想がある。

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 (エマニュエル・パルナン『薔薇色の館』日本盤CD)
 だがヴァシュティ・バニヤンはヴォーカルの存在感ではパルナンさんを圧倒する、という強みがあり、『薔薇色の館』は半数あまりの曲はインストルメンタルで、ヴォーカル入りの曲も(アカペラ曲まで含めても)器楽的発想から作られている印象を受ける。パルナンさんのヴォーカルも楽器のひとつとして使われている。ヴァシュティ・バニヤンはやはりブリティッシュ・フォークの伝統を踏まえた歌手だが、エマニュエル・パルナンはシャンソニエの伝統から出てきたとも、シャンソニエの伝統に戻っていく個性の人でもないだろう。作風は異なるが、器楽的なヴォイスの使用を発想の原点にしてサウンドを作り出している点で、パルナンはケイト・ブッシュやエンヤの手法を先取りしていた人とも言える。ただし当時は受けなかった。
 エマニュエル・パルナンを取り上げたのは、カトリーヌ・リベロ + アルプの記事の閲覧頻度が高いからで、確かにフランスのフィメール・ロックの記事など珍しい。ブリジット・フォンティーヌの登場はシャンソニエの伝統からは画期的なものだったが、リベロやパルナンはシャンソニエの伝統には属さない異質さがあり、リベロの場合フォーク・ロックから出てフリー・フォームに進んだのはティム・バックリィやアラン・ソレンティと近かった。アルプはこれ以上アルバム単位でまとまった音源がサイト上にないが、パルナンが現代音楽家ブルーノ・ベニーと制作した(フォンテーヌ&アレスキーを連想するが、オパス・アヴァントラやピエロ・リュネールらの方がもっと近い)このアルバムを埋もれさせてしまうのは惜しい。2009年発売の日本盤(インディーズのベル・アンティークより)はまだ完売していないようだ。リンク先のまとめリストでアルバムは全曲試聴できるが、曲順がばらばらになっている。正しい曲順は冒頭にご紹介した通りです。