人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

魍猟綺譚・夜ノアンパンマン(16)

 都合よく雨は止んだので、今朝のパトロールはいつも通りにパンを頭にして(賞味期限切れになったアンパンマンたちの頭は頭脳としての機能を失うので、そのまま廃棄され、新しい頭にその記憶と人格、精神が移転します)、アンパンマンたちはとりあえずパン工場から外に出ました。彼らの出自やPKO活動の手段はそれぞれ微妙に異なり、アンパンマンカレーパンマンジャムおじさんが生みの親ですが、今でもパン工場を活動拠点にしているアンパンマンカレーパンマンが違うのはカレーパンマンがはカレーが丘に住んでおり、顔面の揚げパン部分以外、つまりカレーは自作しており、ふだんはカレーを補充するだけでも回復できることです。人びとにふるまうのも緊急時以外は自分の顔ではなく、いつもご飯とカレーの仕切りがあるズンドウ一杯に作り置きしたカレーをカレーライスにして配ります。
 しょくぱんまんの出生はジャムおじさんパン工場ではなく、アンパンマンカレーパンマンとは仲間であり、ジャムおじさんは師範かつ協力者のような関係でした。しょくぱんまんはトースター山の小規模噴火から生まれ、トースター山のふもとに自分のパン工場(食パン専門)を持っており、水陸両用のしょくぱんまん号で小中学校やドヤ街、ブラック企業にパンを配るのが日課です。カレーパンマン同様、緊急時には自分の顔を食糧に提供できますが、しょくぱんまんは顔の表面からスライスするように剥がす、というダンディな態度をよほどの危機以外は回避していました。ただし賞賛を求めてながらサーヴィス精神もあり、一瞬でオゾン層上空まで行って戻ると顔をトーストして分け与える、と奇抜なこともすることがありました。
 要するに、雨の日パトロール対策に顔を乳頭にする、とジャムおじさんが言い出しているのは、アンパンマン以外のふたりは必ずしもその必要がないのです。カレーパンマンはズンドウを持って飛びますから顔を保護する必要はあるかもしれないが、救援食糧が頭である必要はない。しょくぱんまんしょくぱんまん号がある。ただし朝に限らずパトロールは上空からだからこそ、とも言えるのですが、そこを突かれたらしょくぱんまんは開発中のしょくぱんまん号飛行形態をたちどころに完成させてしまうでしょう。水陸空、きっと宇宙飛行仕様にだってできるに違いない。アンパンマンたちは、望んだだけで望みが実現する世界に住んでいるのですから。