人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Elmo Hope - Hope Full (Riverside, 1962)

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Elmo Hope - Hope Full (Riverside, 1962) Full Album : https://youtu.be/WwAQoXjzISs
Recorded at New York, November 9 & 14, 1961
Released by Riverside Records RLP 408, 1962
All compositions by Elmo Hope except as indicated
(Side one)
1. Underneath - 4:35
2. Yesterdays (Otto Harbach, Jerome Kern) - 5:18
3. When Johnny Comes Marching Home (Traditional) - 4:58
4. Most Beautiful - 5:03
(Side two)
1. Blues Left and Right - 6:05
2. Liza (All the Clouds'll Roll Away) (George Gershwin, Ira Gershwin, Gus Kahn) - 3:32
3. My Heart Stood Still (Lorenz Hart, Richard Rodgers) - 5:23
4. Moonbeams - 4:50
[ Personnel ]
Elmo Hope - piano
Bertha Hope - piano (with tracks A2,? B1 & B3)

 エルモ・ホープ(1923~1967)は生前12作のリーダー作を残した。今回がホープ紹介の最終回だから、改めてリストを掲げると、
1・New Faces New Sounds: Elmo Hope Trio (Blue Note, 1953.6)
2・New Faces New Sounds: Elmo Hope Quintet, Vol.2 (Blue Note, 1954.5)
3・Meditations (Prestige, 1955.7)
4・Hope Meets Foster (Prestige, 1955.10)
5・Informal Jazz (Prestige, 1956.5)
6・Elmo Hope Trio (Hi-Fi Jazz, 1959.2)
7・Here's Hope! (Celebrity, 1961)
8・High Hope! (Beacon, 1961)
9・Homecoming! (Riverside, 1961.6)
10・Hope-Full (Riverside, 1961.11)
11・Sounds from Rikers Island (Audio Fidelity, 1963.8)
12・Elmo Hope Featuring Philly Joe Jones/The Final Sessins (Specialty, 1966.3&5)

 メジャー・レーベルからの作品は1枚もなく、ほとんどのアルバムが70年代までは初回プレスきりだったと思われ(ブルー・ノートからの10インチLP2枚がカップリング再発されたのも1989年になってからで、ハイ・ファイ・ジャズ盤がコンテンポラリー社から再発されたのもホープ没後だった)、ホープの生前に発売された最後のアルバムは『Sounds from Rikers Island』だから、ライヴ活動もできなかった晩年4年間の不遇は想像するにあまりある。遺作となったファイナル・セッションズから5曲がLP発売されたのはホープ没後11年経った1977年で、日本のレーベルが録音記録を調査して初めて世界初発売したものだった。
 アルバムを楽器編成で大別すると、1,3,6,7,8,12がピアノ・トリオ作品(ピアノ、ベース、ドラムス)で、9はピアノ・トリオとセクステット(トランペット、2サックス、ピアノ・トリオ)が半々になっている。モダン・ジャズではもっとも一般的なクインテット(トランペット、サックス、ピアノ・トリオ)作品は2,4と少なく、4もトランペットの抜けたカルテット曲の比率が高いので純然たるクインテット作品は2しかない。完全なセクステット作品も5だけで、9はセクステットとピアノ・トリオ半々、11はセクステット、ヴォーカル入りセクステット、カルテット、ピアノ・トリオが混在している。そして今回の『Hope-Full』は全8曲中夫人のバーサ・ホープ(1936~)とのピアノ・デュオが3曲、ホープのみのソロ・ピアノ演奏が5曲で、オリジナル新曲4曲、スタンダード4曲からなる。
  (Original Riverside "Hope-Full" LP Liner Notes)

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 ピアノ・トリオ作品6.5作、クインテット作品2作、セクステット作品2.5作、デュオ&ソロ・ピアノ作品1作で合計12作だからエルモ・ホープのアルバムの半数はピアノ・トリオになり、アルバム9割がピアノ・トリオのバド・パウエルほどではないが、ホープの管楽器入りアルバムでホープ自身の積極的なリーダーシップが認められるのは極論すれば最初期の『New Faces New Sounds: Elmo Hope Quintet, Vol.2』しかなく、『Hope Meets Foster』はテナーのフォスターのアルバム、『Informal Jazz』はプレスティッジの、『Homecoming!』はリヴァーサイドの所属アーティストのオールスターズ企画で、『Sounds from Rikers Island』の企画アルバム性は言うまでもない。
 ホープが純然たるサイドマン参加、またはレギュラー・メンバー参加したアルバムも数少ないものだが、ホープ自身の名義で出されたアルバムの半数弱を占める管楽器入り作品でもホープの役割はセッション・リーダーにとどまり、ホープ自身の音楽をやっているとは言えない。フォスターは『New Faces New Sounds: Elmo Hope Quintet, Vol.2』のメンバーでもあるので、かろうじて『Hope Meets Foster』はホープの音楽性を反映したものになったが、それを言えば半数がホープが提供したオリジナル曲のクリフォード・ブラウンルー・ドナルドソンクインテット『New Faces-New Sounds』1953やハロルド・ランド『The Fox』1959は『Informal Jazz』や『Homecoming!』以上にホープの音楽になっている。
  (Original Riverside "Hope-Full" LP Side1 Label)

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 結局ホープ名義のアルバムは1、2の例外を除きピアノ・トリオ作品だけが真にホープのアルバムで、管楽器入り作品はむしろ管楽器メンバーをフィーチャーしたホープのサイドマン作と見た方がすっきりする。『Hope Meets Foster』はフランク・フォスター、『Informal Jazz』はジョン・コルトレーンハンク・モブレー、『Homecoming!』はジミー・ヒース、『Sounds from Rikers Island』はジョン・ギルモアのアルバムだろう。しかしそれはホープのアルバムを大半聴いてようやくわかってくる特殊事情なので、入手しやすいアルバムからエルモ・ホープ作品を聴いていくとホープの音楽の特徴がなかなかつかめず、当然魅力も感じないので深追いする気がなくなってしまう。
 ホープの傑作はブルー・ノートの2作(CDでは1枚)、『Meditations』、ハイ・ファイ・ジャズ盤(コンテンポラリー盤)『Elmo Hope Trio』、ビーコン/セレブリティ盤『Here's Hope!』『High Hope!』(CDでは1枚)、ファイナル・セッションズ(CD2枚)なのだが、普通半ダースも名盤があるジャズマンは評価も人気も一流とされるのに、ホープは人気もなければ評価も定まらない。それは中途半端な管入り企画が他半ダースを占め、しかも参加メンバーの知名度でそれらの方がホープ作品では流通している、という皮肉な事情が原因になっていると思われる。つまりホープ作品を制作したインディーズ・レーベルの企画がまずかったので、この『Hope-Full』もピアノ・デュオで統一するか完全なソロ・ピアノ作品にすべきだった。バーサ夫人に責はないが、デュオとソロが混在しているのがこのアルバムの印象をかえって焦点の甘いものにしている。エルモ・ホープはピアノ・トリオ作品をじっくり聴いて、それから他に進むのがいいのだが、ホープに限って名盤ほど廃盤になっているのはつくづく不遇の念に堪えない。傑作に上げた上記アルバムを安価な中古CDで見かけられたらお薦めする。