人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

school food punishment - air feel,color swim (July Records, 2007)

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school food punishment - air feel,color swim (July Records, 2007)
Released by July Records JKCA-1043, November 21, 2007
(tracklist) total time; 39:07
1. you may crawl : https://youtu.be/K0p0tpfm-lQ - 4:58
2. sky step : https://youtu.be/MK9IaCuPRjo - 5:46
3. loop,share : https://youtu.be/SOOLLzkSVBM - 4:06
4. 煙に白 : https://youtu.be/R5qiG2uOEnU - 4:37
5. turn - 4:33 *no links
6. 曖昧に逸れる : https://youtu.be/DFauju50kok - 5:07
7. art line : https://youtu.be/ELenVdd_4t0 - 6:19
8. transient : https://youtu.be/g9Yqdon9Ao4 - 3:51
[ school food punishment ]
西村友美 - vocal, guitar
蓮尾理之 - keyboards
上田睦 - bass
比田井修 - drums
(credits)
作詞 : 内村友美
作曲 : 内村友美(2,3,4,5,6,7,8), 蓮尾理之(2,3,5,6,7), 上田睦(2), school food punishment(1)
編曲 : school food punishment(1-7), 内村友美(8), 蓮尾理之(8)
Produced, Recorded and Mixed by 成田忍

 このグループのアルバムはこれまで2作ご紹介している。2004年結成、2007年インディーズよりデビュー、計3作のミニアルバムをリリースし、2009年にEPIC JAPANからメジャー・デビューして2010年・2011年にアルバム発表、2012年に解散した。2011年からバンド名の表記を大文字で始まるSchool Food Punishmentに改めている。アルバム・リストは次の通り。
1. school food is good food (July Records, April 4, 2007)
2. air feel, color swim (July Records, November 21, 2007)
3. Riff-rain (Fiveman Army Rocks, December 10, 2008(Ltd.)/January 14, 2009)
4. amp-reflection (EPIC JAPAN, April 14, 2010)
5. Prog-Roid (EPIC JAPAN, July 13, 2011)

 日本語のオリジナル曲を歌っているバンドだから聴いてもらった方が早い。デビュー・アルバム『school food is good food』よりもサウンドはより緊張感を増していて、A1~A3の流れは強い訴求力を持っている。ミニアルバムといっても全8曲・トータル39分を越え、アナログ時代のLPなら30分台の名盤はざらにあるから(ビートルズのアルバムも『Sgt. Pepper's~』1967以前のアルバムはすべてこれよりずっと短く、A面7曲・B面7曲の構成をとっている)、アナログ盤時代にレコードを聴いていた中高年リスナーにはつい前半をアルバムA面、後半をアルバムB面の感覚で聴いてしまう。
 全8曲の構成だから、A面に相当するのは1~4だろう。冒頭3曲をファスト・テンポでたたみかけ、4のソフトで穏やかなバラードで締める。残念ながら5のリンクが引けなかったが、後半は前半とは逆でスリリングな変拍子ナンバー(平歌パートは5/4、サビは6/8になる)でアルバム中プログレッシヴ・ロック度的な曲だが、6~8は広義のバラードでA面と対照をなす。A面に相当する1~4がロック・サイドならB面に相当する5~8はバラード・サイドで、バラードの4とハードな変拍子の5が本来属するべき位置と入れ替わっていることで全編のトータル感をうまく演出している。4と5が逆だったら、前半部分4曲のロック・サイド、後半4曲のバラード・サイドにはっきり二分されすぎていただろう。後半のオープナーとなる5もアルバム全体のオープナーの1と並ぶ鮮烈な楽曲なので、リンクを引けなかったのは残念だが仕方ない。

 このバンドの本領はテンションの高い1~3、5だと思うが、バラードを後半に置いたアルバム全体の配曲は通して聴くと成功している。school food punishmentシンガー・ソングライターとして弾き語りのソロ活動をしていた内村友美が、キーボード/シンセサイザー・プレイヤーの蓮尾理之と組んだのが始まりで、以降解散までベーシストとドラマーのメンバー・チェンジはあったが内村・蓮尾は不動のメンバーだった。内村友美はいわゆるリード・ギタリストのタイプではないから(ギター・パートのない曲もある)、グランジから入ってプログレッシヴ・ロックまで視野に入れていた蓮尾理之とベース、ドラムスのキーボード・トリオがこのバンドのサウンドの特徴だった。
 楽曲はヴォーカル中心のものだが、サウンドの実験性はエレクトロ系の多彩なキーボード・プレイに負うところが多かった。また、内村・蓮尾とも1983年生れで、内村は影響源とするアーティストに椎名林檎を上げており、椎名林檎のデビュー年1998年(シングル)~1999年(アルバム)には宇多田ヒカルも同時にブレイクしている。当時15~16歳だった内村・蓮尾らがミュージシャンを志した年代は若手女性シンガー・ソングライター、女性シンガーによるロック/ポップスそのものが大きく変わっていった時期に当たる。school food punishmentもその流れの中から出てきた存在であることは、内村の手がける歌詞、日本語をメロディに乗せる手法の現代性からも感じられる。

 だが音楽的に大きく異なり、school food punishmentをロック・バンドたらしめているのは、音楽の全体を音色とリズムによって決定していることで、椎名・宇多田らにあっても楽曲づくりは基本的にメロディと和声から発想するオーソドックスなものだった。音楽活動がギター弾き語りだったという内村友美も弾き語りの段階では音楽的発想はメロディと和声によるものだったと思われる。もちろんそれでもポピュラー音楽には魅力的な音楽を作ることができる間口の広さがあるが、バンド形態のパフォーマンスではさらに演奏全般に渡って音楽の質感を追求することができ、そこで結果的にシンガー・ソングライター的な発想の音楽とは違う、サウンド自体の効果を目的とした演奏表現が生まれてくる可能性もある。
 蓮尾はマルチ・キーボード奏者だが、ピアノとシンセサイザーの併用が多く、ピアノもシンセサイザーのプリセット音色だとしても一般的なオルガン系の音色はほとんど使わない。オルガン系の音色の特徴は安定した持続性だが、極端に各種キーボード音を対照させる蓮尾の技法は緊張感に主眼を置いたものと言える。それはシンセサイザー主体のアンビエント系の楽曲でもヴォーカルとの対比によって情緒には流れない指向性を持っており、デビュー作『school food is good food』からこの第2作ではバンド・サウンドの進展が著しい。デビュー作、第2作はアナログLPなら十分にフルアルバムのヴォリュームを備えていたが、インディーズからの最後のリリースになった次作『Riff-rain』は充実した出来ながら収録時間24分ほどのミニアルバムで、メジャー移籍後に余力を温存した気味がある。インディーズからの3作ではこの『air feel, cool swim』が頭ひとつ抜けた快作になったのも、バンドのコンディションとタイミングがうまく一致したからこそと思われる。