人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

真・NAGISAの国のアリス(61)

 第7章。
 ハートのキングは白ウサギに、ジャックの告訴状を読み上げるよう命令しました。白ウサギは開廷合図のトランペットを3回吹くとポケットから巻物を取り出して広げ、朗々と歌い出しました。

 ♪夏にまるまる1日がかりで
 ハートのクイーンが作ったタルト
 それをまんまと盗み出したのは
 被告人席のハートのジャック!

 第1の証人を呼ぶダス、とハートのキングが言いました。白ウサギはトランペットを吹き、第1の証人!と呼びました。ティーカップとバターつきのパンを持って帽子屋が入廷してきました。続いて3月ウサギとネムリネズミも腕を組んで入ってきます。
 失礼いたします王さま、と帽子屋、変なものを持ってきてしまいまして。ですが私らはまだお茶会の途中だったのです。
 いつからダス?とキング。
 3月14日です、たぶん。
 それに帽子を脱ぐダス、お前さんの帽子のことダスよ!
 いや違います、と帽子屋、私は帽子屋ですから、これは売り物です。
 それを聞いたクイーンは眼鏡をかけ、帽子屋をじろじろにらみました。さすがに帽子屋も落ちつきません。
 早く証言するダス、とキング。いちいちビクビクするなら、お前さんも処刑するダスよ。ますます帽子屋は取り乱し、パンではなくてカップをかじってしまいました。
 こないだの音楽会の出場者名簿を持ってくるザンス、と追いうちをかけるクイーン。帽子屋は震え上がり、靴が足から落ちました。
 証言するダス、とキング、さもないと無条件で処刑ダス。
 帽子屋はわなわな震えながら、私は無関係です王さま。お茶会だってまだ1週間にもなりません。パンは干からび、お茶は……
 お茶が何ダス?とキング。
 お茶会ですから、と帽子屋。
 お茶会にお茶は当然ダス!とキング。
 そんな風にお茶会をしてまして、ですが3月ウサギが言うには……
 言ってない!と3月ウサギ。
 言った!と帽子屋。
 でたらめだ!と3月ウサギ。
 そうダスか、とキング、ではその部分の証言は無効ダス。
 帽子屋は慌てて、それでとにかくネムリネズミが言うことには……
 言ってません!とネムリネズミ。
 言った!と帽子屋。
 いや違います!とネムリネズミ。
 帽子屋はますます憔悴し、それで私はその後、少々バターを塗ったパンをもう少しいただきまして……
 待つダス、とキング、ネムリネズミは何と言ったのダス?
 ええと、わかりません、と帽子屋。思い出さなければ処刑ダス!とキング。