人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

真・NAGISAの国のアリス(68)

 馬鹿みたい!とアリス。いくら芸人だからって相当売れていた時代もあるんだから、それなりに資産はあったんでしょう。
 それなりどころじゃないと思いますが、と白ウサギ。外国の高級住宅地に邸宅を構えていたくらいですからね、人気の盛りは過ぎたとは言え立派なセレブ、エリートです。
 だったらなおさら仕事を休んで、鬱病アルコール依存症をきちんと治してから出直せば済んだじゃない。
 進行性の神経性麻痺で演奏家としての将来を悲観していたんです、と白ウサギ、鍵盤楽器演奏家のヴァーチュオーソにとっては、これはほとんど絶望的な事態です。
 演奏できなくなっても作曲・編曲はできるでしょう。今ではDTMで生演奏と匹敵するものが作れる時代だし、バンドリーダー、クリエイターとしての将来をすべて悲観するのは短絡的というか、あまりに衝動的で同情の余地がないわ。海外公演のスケジュールも翌月に組まれていたくらいだから、どれだけの人が迷惑をこうむったことか。少なくとも翌月の海外ツアーはこなせる、と思っていたんでしょう?スケジュール自体は遅くとも3か月前には決まっていたはずで、正式にキャンセルする時間的余地もあったでしょう。結局アドヴァンスだけが目当て何らかの理由でツアーは流すつもりだったんじゃないか、勘ぐりたくもなるわ。
 いや、この世代の人は人口動態ではピークなんですよ、と白ウサギ。それこそ人気が旬のうちに極端な過密スケジュールを組んでおいて、人気が凋落してもいわば惰性のついた労災レベルの過労、ワーカホリックから逃れられない。健康的な休養なんて言っていられないのです。コマは止まると倒れる。アルバム制作とツアーの機会がコンスタントにあるうちはいいが、まずアルバムの発売契約がメジャーからインディーズに落ちて、スポンサーつきの大規模ツアーからいきなりプロモートもされない地味な地方都市の小会場のドサまわりに活動が激変する。数年おきおきにメジャーとインディーズを行ったり来たりしていたような不安定な活動が鬱病アルコール依存症につながったのは十分推察できますし、おそらく薬物依存が進行性の神経性麻痺に拍車をかけていたでしょう。
 それに、と白ウサギ、最後のパートナーだった内縁のアジア系婦人とも別居婚だったことにも一種の不吉を感じさせます。パートナーとしては必要としあっていた、だが同居婚は耐えられない理由がおそらくあったのです。