人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン・改(34)

 ムーミン谷経済学講座番外編。
 イナゴ投資家、または単にイナゴと証券業界から呼ばれる一部の個人投資家たちはテレビやネット、SNSの情報から素早く有価証券を売買をし、その回転売価によってタワー状の株価チャートを引き起こします。その株価急騰・急落の動きは激しく、このように急に現れて利食いをした後すぐ別の銘柄に当たる投資行動を、秋になると一斉に繁殖し稲穂を食い尽くすイナゴにたとえて、業界関係者らはイナゴ投資家または単にイナゴと呼びます。
 イナゴ投資家の取引は特定銘柄の株価の暴騰直後に一転して急落することが多く、こうした一連の値動きをチャートにすると暴騰と急落の動きがタワーのような形状をなすことからイナゴタワーと呼ばれてます。イナゴタワーが形成されると結果的に暴騰前の価格を割り込む水準まで株価が落ち、しかも落ちた後の株価が暴騰前の水準まで戻るにもかなりの時間がかかる場合がたびたびあると言われます。
 イナゴ投資家は信用取引無限回転という信用取引規制緩和の影響で2013年1月から発生しました。イナゴ投資家とは短期で材料株の回転売買を繰り返す個人投資家であり、その規制緩和の影響で従来の大口の、個人投資家の中でもとりわけデイトレーダーと呼ばれる日中に売買の決済を行って利益を得ようとする投資家の売買動向が変化したことで登場した投資家の種類の一つであり、それ以前は1日に大手の取引制限が設けられていました。
 規制緩和が実施される以前は同じ資金では1日につき1回のみしか信用取引での新規買い(売り)ができなかったため、大きな値幅が取れる可能性のある仕手株や材料株などの銘柄を売買するのがデイトレーダーの主な投資行動でした。しかしこの規制緩和以来1日にごく僅かな利ザヤでも幾度も取引を重ねれば、大きな収益を期待できます。またその特性から保有時間を短くできるようになりリスクも大きく抑制できるため、短期で材料株の回転売買を繰り返すイナゴ投資家が増加しました。また2014年7月の東証主力株では最小0.1円単位まで値刻みが縮小されたのもイナゴ投資家に有利になり、ますます短期で回転売買を行う投資家が増加する一因となったのです。
 なお、このような規制緩和が実施される以前は、イナゴ投資家とは上述した意味とは異なり、年末の資金手当てを目的に、秋に株式の含み益を確定させる個人投資家らのことを指していたといいます。