人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Sun Ra - Janus (The Invisible Shield) (1201 Music, 1999/Saturn, 1974)

イメージ 1

Sun Ra - Janus (Saturn, 1974 / 1201 Music, 1999) Full Album : http://www.youtube.com/playlist?list=PL6DC8F6E34D87EDF5
A1 ; Variety Recording Studio, NYC, between 1968 and 1970.
A2a ; Recorded mono, probably at a live performance, 1970.
A2b ; Recorded at Sun Studios, NYC, 1967 or '68 (Sun Ra solo) / Recorded at Choreographers' Workshop, NYC, 1963 (group).
B1 ; Recorded in early 1968; it is different from a live recording from 1969 previously known to discographers.
B2 ; Recorded live in NYC, early 1968.
Released by 1201 Music 9012-2, October 12, 1999
Originally Released by Saturn Research 144000 / El Saturn Records LP-529, 1974/1977
All Composed & Arranged by Sun Ra
(Side A)
A1. Island In The Sun - 5:23
Bass (Prob.) - Ronnie Boykins
Clarinet (Alto) - Danny Davis
Flute - Marshall Allen
Percussion - John Gilmore
Percussion (Prob.) - Pat Patrick
Piano - Sun Ra
A2a. The Invisible Shield - 5:43
Alto Saxophone - Danny Davis, Marshall Allen
Neptunian Libflecto (modified Bassoon) - Danny Ray Thompson
Drums (Prob.) - Clifford Jarvis
Organ, Synthesizer [Mini-moog] - Sun Ra
A2b. Janus - 6:59
Alto Saxophone, Percussion - Danny Davis
Bass - Ronnie Boykins
Bass Clarinet (Prob.), Percussion [Prob.] - Robert Cummings
Bongos (Prob.), Percussion [Prob.] - Pat Patrick
Effects (Reverb), Percussion - Tommy Hunter
Gong, Clavinet, Directed By - Sun Ra
Piccolo Flute - Marshall Allen
Tenor Saxophone, Bells - John Gilmore
Vocals, Percussion - Art Jenkins
(Side B)
B1. Velvet - 7:22
Alto Saxophone - Danny Davis, Marshall Allen
Baritone Saxophone - Pat Patrick
Bass - Ronnie Boykins
Drums - Clifford Jarvis
Drums (Log Drum), Flute - James Jacson
French Horn - Robert Northern
Performer (Solos) - Pat Patrick, Robert Northern, Sun Ra
Piano - Sun Ra
Tenor Saxophone - John Gilmore
Trombone (Prob.) - Bernard Pettaway
B2. Joy - 9:15
Alto Saxophone, Percussion - Danny Davis, Marshall Allen
Baritone Saxophone, Percussion - Pat Patrick
Bass - Ronnie Boykins
Drums - Clifford Jarvis
Drums (Log Drum) - James Jacson
French Horn - Robert Northern
Piano, Keyboards (Clavioline) - Sun Ra
Tenor Saxophone, Percussion - John Gilmore
Trombone (Prob.) - Bernard Pettaway
[ Sun Ra and His Intergalactic Research Arkestra ]
Sun Ra, Marshall Allen, John Gilmore, Pat Patrick And Arkestrians

イメージ 2

Sun Ra and His Intergalactic Research Arkestra - The Invisible Shield (Saturn Sub Undergound Series, 1974) Full Album : http://www.youtube.com/playlist?list=PLm4w7C3_vBpiOZJTacm3DQfw55odeM_Kr
Credited as Side A Recorded in 1960's & Side B Recorded in 1970's
Released by Saturn Research 144000 / El Saturn Records LP-529, 1974/1977
(Side A)
A1. State Street (Sun Ra) - 3:49
A2. Sometimes I'm Happy (Caesar, V. Youmans) - 6:37
A3. Time After Time (Jule Styne And Sammy Cahn) - 3:36
A4. Time After Time (Jule Styne And Sammy Cahn) *no links
A5. Easy To Love (C. Porter) - 3:30
A6. Sunny Side Up (De Sylvia) - 3:39
Add. But Not For Me (G.Gershwin And I.Gershwin) - 6:49 (Previously Unreleased)
(Side B)
B1. Island In The Sun (Sun Ra) - 10:24 (complete version)
B2. The Invisible Shield (Sun Ra) - 5:36
B3. Janus (Sun Ra) - 7:03
[ Sun Ra and His Intergalactic Research Arkestra ]
Sun Ra, Marshall Allen, John Gilmore, Pat Patrick And Arkestrians

 今回のアルバムはディスコグラフィ上扱いが厄介なもので、すでに一度7月15日に『The Invisible Shield』A面と同時期のスタンダード曲セッションを含むアルバム『What's New』(Saturn Sub Undergound Series, 1975)を取り上げています。ところが『What's New』は1975年に同時発売された2種類のヴァージョンがあって、一方はA面が1962年のスタンダード曲セッションでB面が片面1曲で11分ほどのセッション断片であり、このB面曲は1972年録音のアルバム『Space Is The Place』タイトル曲のリハーサル・テイクと推定されるものでした。もう一種の『What's New』はA面・B面ともにスタンダード曲セッションでA面は同一、B面はすでに1974年のアルバム『The Invisible Shield』のA面曲として発表されていたものです。この『The Invisible Shield』が今回ご紹介するもので、A面は前述の通り1962年のスタンダード曲セッションで『What's New』別版B面と同一、B面は1970年前後の未発表スタジオ録音(一部は60年代録音にダビングしたもの)でした。ややこしいったらありません。
 さらにややこしくなるのが『The Invisible Shield』には『Janus』という別タイトルのプレスも存在していたらしく、サターン・レーベルから起こした海賊盤で出回ってしまったばかりか『Janus』と同一曲目に差し替えたサターン盤も発売されたことです。『Janus』はA面は『The Invisible Shield』と同一、B面はこれが初出になる1970年前後のライヴ録音であり、現在正規発売されているCDでは同一の『The Invisible Shield』のタイトルで『What's New』スタンダード曲セッション統一版と『Janus』版の2種類が流通して混乱に拍車をかけています。スタンダード曲セッション版を『What's New』とし、『What's New』とは重複しない1970年前後の未発表スタジオ/ライヴ録音の拾遺アルバムを『The Invisible Shield』または『Janus』のどちらかに統一すればいいものを、両者を折衷した中途半端な編集盤『The Invisible Shield』が『Janus』と平行して発売されてしまい、その上『Janus』と同内容の『The Invisible Shield』まで発売されていたために起こった混乱で、アナログLP時代にはジャケットとLP本体、レーベルと収録内容が異なることも珍しくなかった(しかも返品不可)というサターン盤の面目躍如たる一例と言えます。
(Original El Saturn ' The Invisible Shield ' LP Side A & Side B Label)

イメージ 3

イメージ 4

 そんな事情で本作を『The Invisible Shield』と『Janus』のどちらを正式タイトルと呼ぶべきか迷いますが、A面にスタジオ録音3曲(A2a「The Invisible Shield」とA2b「Janus」は別セッションから2曲をメドレーに編集したもの)、B面にライヴ録音2曲を収録した1970年前後の未発表スタジオ/ライヴ録音の拾遺アルバム、という意味で、本来このアルバムは『Janus』として発売された形の方がふさわしかったと思われます。当初1962年録音とカップリングされて発売された『The Invisible Shield』はレーベル部分くり抜きのサンプル盤用ジャケットしか確認されておらず、正式アルバムというよりはライヴ会場の即売用サンプラーで、一種のコレクター・アイテムとして編集されたコンピレーション・アルバムだったのでしょう。A面に翌年発売される『What's New』のB面をそのまま収録していたのは、今回初出となる未発表スタジオ録音のB面との録音時期を隔てた対照を意図していたか、または単なる穴埋めだったかもしれません。未発表スタジオ録音曲をA面に繰り上げ、未発表ライヴ2曲をB面に配して1970年前後の録音で統一して『Janus』と改題し、『The Invisible Shield』自体を『Janus』と同内容で発売するに至った経緯は不明で、サターン・レーベルのことだからひょっとしたら前後関係もこの通りではないかもしれない覚束なさもありますが、コンピレーション・アルバムという性格上そのいずれでもあった可能性も考えられるでしょう。
 そんなわけで1970年前後の未発表録音を集めた『Janus』として本作を見ますと、アルバムA面のスタジオ録音曲はどうやら1963年録音の『Cosmic Tones For Mental Therapy』と同時期の未発表セッションにオーヴァーダビングやエフェクト処理を施し、一応の完成ヴァージョンに仕上げたものと思われます。楽曲自体が典型的に当時のサン・ラの作風を示しており、管楽器(アーケストラの場合は木管セクション)のアレンジも60年代中期以降や70年代初頭のアーケストラではない、60年代前半の作風が見られます。マーシャル・アレンのフルートとパーカッション・アンサンブルなどがその典型で、本格的なフリー・ジャズ化以前でもあり、またエレクトリック・ベースの導入以降には大きく変化するので、ソロ楽器のダビングやエフェクト処理では70年代初頭の特徴を備えながらバック・トラックは60年代前半のサウンドという珍しいヴァージョンです。ギミック抜きで楽しいのが50年代の代表曲「Velvet」「(Eli Is The Sound Of) Joy」のノリノリのライヴ・テイクを収めたB面で、どちらもスタジオ録音では3分程度のコンパクトなアレンジを、ここでは目の覚めるようなパワフルなヴァージョンに改作しており、特にスタジオ録音ではバランスの崩れそうな強引なサックス・アンサンブルのリハーモナイズがライヴならではの疾走感で痛快な演奏を聴かせてくれます。単独アルバムとしては50年代~60年代~70年代初頭までのサン・ラの主要アルバムを一通り聴いていないと面白さを拾いづらいアルバムかもしれませんが、未発表コンピレーション・アルバムという性格上敷居が高いのも仕方がないとすべきでしょうか。