人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ラヴィン・スプーンフル The Lovin' Spoonful - サウンドトラック・アルバム Two Soundtracks (Kama Sutra, 1966 & 1967)

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ラヴィン・スプーンフル The Lovin' Spoonful - どうしたんだい、タイガー・リリー(オリジナル・サウンドトラック) What's Up, Tiger Lily? Original Soundtrack Album (Kama Sutra, 1966) Full Album : https://youtu.be/lLU_-YMPX7I (Full Movie Directed by Woody Allen)
Recorded in 1966, NYC & L.A.
Released by Kama Sutra Records Kama Sutra KLP/KLPS-8053, September 1966 / US#126(Billboard)
Produced by Jack Lewis
(Side One)
*A1. Introduction to Flick (W.Allen, L.Maxwell) : https://youtu.be/MvGL5KRL6nE - 2:14
A2. Pow! (Theme From "What's Up, Tiger Lily?") (J.Sebastian, J.Butler, Z.Yanovsky, S.Boone) : https://youtu.be/Zab7V3_xDfw - 2:26
A3. Gray Prison Blues (J.Sebastian, J.Butler, Z.Yanovsky, S.Boone) : https://youtu.be/B-8H4Jd_9xY - 2:04
A4. Pow Revisited (J.Sebastian, J.Butler, Z.Yanovsky, S.Boone) : https://youtu.be/gKPmdwHZU-g - 2:26
A5. Unconscious Minuet (J.Sebastian, J.Butler, Z.Yanovsky, S.Boone) : https://youtu.be/ntndbcOHdY8 - 2:05
A6. Fishin' Blues (Traditional arranged by J.Sebastian) : https://youtu.be/o_h96aVE8b4 - 1:59
(Side Two)
B1. Respoken (J.Sebastian) : https://youtu.be/GQ7rrXsqaCs - 1:48
B2. A Cool Million (J.Sebastian, J.Butler, Z.Yanovsky, S.Boone) - 2:02 into
B3. Speakin' of Spoken (J.Sebastian) : https://youtu.be/FT6lqxWzPTg - 2:41 (B2 to B3)
B4. Lookin' to Spy (J.Sebastian, J.Butler, Z.Yanovsky, S.Boone) : https://youtu.be/lDE7eCohPQM - 2:29
B5. Phil's Love Theme (J.Sebastian, J.Butler, Z.Yanovsky, S.Boone) : https://youtu.be/2cs7C9QlKe8 - 2:23
B6. End Title (J.Sebastian, J.Butler, Z.Yanovsky, S.Boone) : https://youtu.be/rEsvEF2jGps - 4:06
[ The Lovin' Spoonful ]
John Sebastian - guitar, lead vocals, autoharp, harmonica, keyboards
Joe Butler - drums, vocals
Zal Yanovsky - guitar, vocals
Skip Boone - bass

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ラヴィン・スプーンフル The Lovin' Spoonful - 大人になれば…(オリジナル・サウンドトラック) You're a Big Boy Now Original Soundtrack Album (Kama Sutra, 1967) Full Album
Recorded in 1967, NYC & L.A.
Released by Kama Sutra Records Kama Sutra KLP/KLPS-8058, May 1967 / US#160(Billboard)
Feature Film Directed by Francis Ford Coppola
Produced by Erik Jacobsen
All songs by John Sebastian
Arranged by The Lovin' Spoonful
(Side One)
A1. You're A Big Boy Now : https://youtu.be/brL7h6O7mhw - 2:28
*A2. Lonely (Amy's Theme) (Instrumental) : https://youtu.be/35b6OKMPphA - 3:19
*A3. Wash Her Away (From The Discotheque) https://youtu.be/feKHMEEIYwU - 2:31
*A4. Kite Chase (Instrumental) : https://youtu.be/uT9PgvhpxNA - 1:21
*A5. Try And Be Happy (Instrumental) : https://youtu.be/E2wbGcuHOjE - 1:04
*A6. Peep Show Percussion (Instrumental) : https://youtu.be/pdorL51ovew - 1:19
A7. Girl, Beautiful Girl (Barbara's Theme) : https://youtu.be/dwBegLA9axc - 2:23
(Side Two)
B1. Darling Be Home Soon : https://youtu.be/fXjzOpz4Cyw - 3:34 / US#15(Billboard)
*B2. Dixieland Big Boy (Instrumental) - 1:13
*B3. Letter To Barbara (Instrumental) : https://youtu.be/ii_7Wbe5yDY - 0:59
*B4. Barbara's Theme (From The Discotheque) : https://youtu.be/r462NjSZVDE - 1:26
*B5. Miss Thing's Thang (Instrumental) : https://youtu.be/X2EJmG0_z7g - 1:02
*B6. March (Instrumental) : https://youtu.be/3deeKWYnRBA - 2:28
*B7. The Finale : https://youtu.be/XLO-DwVcmLg - 2:28
[ The Lovin' Spoonful ]
John Sebastian - guitar, lead vocals, autoharp, harmonica, keyboards
Joe Butler - drums, vocals
Zal Yanovsky - guitar, vocals
Skip Boone - bass
with
Artie Schroeck - Orchestra Arrangements

 今回でラヴィン・スプーンフルのアルバム紹介は終わりになります。オリジナル・アルバム4作、プロジェクト作1作、サウンドトラック・アルバム2作を聴き直して改めてユニークな個性を持ったバンドだったんだな、と感じ入りました。ただしスプーンフルはロックバンドがシングル単位、楽曲単位で作品を制作していた時代のバンドなので、現在なら26曲収録のベスト盤CDが発売されていますからオリジナル・アルバムよりもベスト盤CDで精髄を聴く方が集中して楽しめるでしょう。全7作のアルバムはそれから進む方が入りやすいと思います。そういっておきながら、すでにアルバム全作の試聴リンクをご紹介し終えたわけですが。最後に残ったのが2作のサウンドトラック・アルバムです。オリジナル・アルバム4作に対してサウンドトラック・アルバム2作、しかも2作ともザル・ヤノフスキー在籍中のオリジナル・メンバー時代の制作発表とあって、この2作のサウンドトラック・アルバムはよくぞ残しておいてくれたというべき作品です。発表順にサウンドトラック・アルバムとプロジェクト作を含むラヴィン・スプーンフルの全7作のアルバム年表を記しておきましょう。
『Do You Believe in Magic』Kama Sutra, 1965.11 (US#32)
『Daydream』Kama Sutra, 1966.5 (US#10)
『What's Up Tiger Lily? (soundtrack)』Kama Sutra, 1965.9 (US#126)
『Hums of the Lovin' Spoonful』Kama Sutra, 1966.11 (US#14)
『You're A Big Boy Now (soundtrack)』Kama Sutra, 1967.5 (US#160)
『Everything Playing』Kama Sutra, 1967.9 (US#118)
『Lovin'Spoonful Featuring Joe Butler / Revelation: Revolution '69』Kama Sutra, 1968.11 (US#-)
 このうち『Everything Playing』でザル・ヤノフスキーが脱退しジェリー・イェスターが加入、1968年6月にジョン・セバスチャンが脱退して残留メンバーのジョー・バトラー、スティーヴ・ブーン、イェスターによってプロジェクト作『Lovin'Spoonful Featuring Joe Butler / Revelation: Revolution '69』が制作されます。つまり『What's Up Tiger Lily? (soundtrack)』は絶頂期のオリジナル・アルバム『Daydream』と『Hums of~』の間に制作されたサウンドトラック・アルバムで、『You're A Big Boy Now (soundtrack)』はザル・ヤノフスキー在籍時の最後のアルバム(『Everything Playing』収録の先行シングル曲の時点ではまだザルが参加していますが)になります。スプーンフルにとっては変則的アルバムとはいえ、見逃せない理由はそこにあります。また『What's Up~』はウッディ・アレンの初監督作(三橋達也浜美枝若林映子主演の東宝映画『国際秘密警察・鍵の鍵』を再編集し撮り下ろしシーンを加えて全く違う台詞をダビングした怪作)、『You're~』はフランシス・フォード・コッポラの無名時代の監督作であることも注目されます。残念ながら今回も曲目に*を印したリンクはハードウェアや地域制限があるのをお断りしておきます。

(Original Kama Sutra "What's Up, Tiger Lily?" & "You're A Big Boy Now" LP Liner Cover)

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 アルバムとしての性質は、『What's Up, Tiger Lily?』の方はおおむねスタジオ・ライヴの一発録りでスプーンフルのライヴの雰囲気を味わえる貴重なものです。『Everything Playing』からバンドを離れる前はデビュー以来ラヴィン・スプーンフルのプロデュースはエリック・ジェイコブソンが専属だったのですが、おそらく映画サントラということから映画会社側のプロデューサーがプロデュースにクレジットされていますが、内容的に見て『What's Up~』のプロデューサーは単に映画用にスプーンフルのスタジオ・ライヴ音源を依頼しただけでしょう。映画にはスプーンフルの演奏シーンも2か所ありますが東宝との版権問題で日本では劇場公開も映像ソフト化も不可能になっています。ほとんどがインストルメンタルのジャム・セッションで主題歌「Pow !」を含めヴォーカル曲は数曲しかありませんが、インストルメンタル曲中「Lookin' to Spy」はオリジナル・アルバム第3作『Hums of~』の隠れた名曲「Coconut Groove」の原曲となったもので、『What's Up~』全体が名盤『Hums of~』のリハーサル・セッションというべき位置づけもできる面白いアルバムになっています。
 一方エリック・ジェイコブソンのプロデュースによる『You're A Big Boy Now』はより本格的なサントラというべきで、全曲がジョン・セバスチャンの作曲ですが大半がオーケストラ・アレンジによるインストルメンタル演奏で占められており、ヴォーカル曲はA1、A7、B1の3曲しかありません。いずれもスプーンフル単体の演奏ではなくスタジオ・ミュージシャンやオーケストラを加えたものです。この3曲はいずれも逸品で、軽快なA1は従来のスプーンフルらしい曲調のた楽しい曲ですが、ノスタルジックでメランコリックなオーケストラ・アレンジが素晴らしい大名曲B1「Darling Be Home Soon」は『Everything Playing』の劈頭を飾る大名曲「She Is Still A Mystery」につながっていくもので、曲想の先駆としては『Daydream』の「Didn't Want to Have to Do It」、『Hums of~』の「Coconut Groove」がありますがこれまでは簡素なバンド・アレンジだったものです。『Everything Playing』がザル脱退を受けたイェスター加入を受けてセバスチャンがイェスターに引っ張られたばかりの作風転換ではなかったことがうかがえます。ただしこの作風はジェイコブソンやザルの指向していたスプーンフルのサウンドからは外れてセバスチャンのソロ作品と言ってよく、『Everything Playing』を最後にリーダーのセバスチャン自らバンドを脱退してしまったのもすでにバンド内でセバスチャン自身が浮いてしまっていたからかもしれません。その始まりが「Darling Be Home Soon」という、セバスチャンの新境地を開いた大名曲だったのではないでしょうか。