人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド Velvet Underground - Loaded Fully Loaded Edition (Atlantic/Rhino, 1997)

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ヴェルヴェット・アンダーグラウンド Velvet Underground - Demos & Outtakes from "Loaded Fully Loaded Edition" (Atlantic/Rhino, 1997) : http://www.youtube.com/playlist?list=PLQrIf6Qs9soISuPqMhp1nj3WkbuqtWrI6
Recorded at Atlantic Recording Studios, NYC, April 15-16, except 12 recorded in late 1969 and 11 recorded at Electric Lady Studios, NYC, January 6, 1975
Released by Atlantic / Rhino Records R2 72563, February 1997 from "Loaded Fully Loaded Edition"
All Songs written by Lou Reed
(Tracklist)
1. Ride Into The Sun (Demo, with vocals) - 3:24
2. Ocean (Outtake) - 5:46
3. Sweet Jane (Early Version) - 5:30
4. Who Loves The Sun (Alternate Mix) - 3:09
5. Love Makes You Feel Ten Feet Tall (Demo) - 4:14
6. Sad Song (Demo) - 3:42
7. Head Held High (Alternate Mix) - 2:17
8. Ocean (Demo) - 6:11
9. Satellite of Love (alternate demo) - 3:12
10. I'm Sticking With You (Rare outtake) - 3:10
11. Lou Reed ; Coney Island Baby (alternate version) - 5:42 *Lou Reed "Coney Island Baby" (RCA, 1975) Outtake
12. I Found A Reason (Demo) - 3:16
[ The Velvet Underground ]
Lou Reed - lead vocal, guitar
Sterling Morridson - guitar, vocal
Doug Yule - bass, organ, lead vocal on Track4
Moe Tucker - drums, lead vocal on Track10

(Original Atlantic/Rhino "Loaded Fully Loaded Edition" CD Liner Cover)

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 第4作『Loaded』はMGM/Verveから本来第3作『The Velvet Underground』'69.3に続くアルバムのリハーサル・デモ録音中にレーベルから契約を打ち切られたため、Atlanticレーベル傘下のCotillionに移籍して仕切り直されて製作されました。興味深いのはMGM/Verveからの幻の4作目のためにデモ録音が進められていたレパートリーをほぼ全曲捨て去って『Loaded』のための新曲をデモ録音していることで、このソングリストのまとめはなぜかルー・リードがソロ・アーティストになってからの『Coney Island Baby』からのアウトテイクが混入していますが、他は1997年にリリースされたデモ録音・アウトテイク・別ミックスを含む増補版『Loaded Fully Loaded Edition』に収録されたヴァージョンです。このうちMGM/Verveの幻の4作目セッションでも演奏されていた曲は「Ocean」しかなく、MGM/Verveの未発表セッションは1985年・1986年になって『VU』『Another View』の2枚にまとめられましたが、そこで判明したのはMGM/Verveの未発表セッション曲はルー・リードのソロ・デビュー・アルバムで正式なスタジオ録音が始めて発表されており、また発掘ライヴではスタジオ録音未発表曲の多くが演奏されていたのも音源発掘の進んだ'90年代以降明らかになりました。リードはソロ・デビューを睨んで曲を温存していたとも言えますが、『Loaded』のための書き下ろし曲はMGM/Verveの未発表セッション曲よりもむしろ優れた出来映えの曲が並んでいます。これはおそらくMGM/Verve未発表セッション曲はアルバムの全体像を考えずに雑然と新曲を録音していったのに対し、『Loaded』のためのデモ録音とリハーサルではアルバムのコンセプトが定まっていたのが楽曲の平均的クオリティや統一感に実を結んだのだろうと思われます。また『Loaded』のコンセプトに合わない曲は優れた曲でもアルバムからは外され、やはりルー・リードのソロ・デビュー以降のアルバムに収められてリードのソロ・キャリアでも代表的な名曲になりました。「Sad Song」や「Satellite of Love」などがそれです。
 ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはリーダーのルー・リード脱退のほんの数か月前まで迫り、これら1970年4月のデモ録音・リハーサルテイクではオリジナル・メンバーの女性ドラマー、モーリン・タッカーがドラムスを叩いています。モーリン・タッカーはドラマーとしてはリンゴ・スターを思わせる記名性の高いドラマーで、ビートルズジョン・レノンのヴォーカルとリンゴのドラムスだけでビートルズの音楽になってしまうように(ポールやジョージの才能はバンド内ソロ・アーティストといった趣きが強いのです)、ヴェルヴェットはルー・リードのガチャガチャしたリズム・ギターとモーリンの「布団叩き」とか「木魚」とか何かと揶揄される黙々としたドラムスが決め手でした。リードのヴォーカル曲以外に限らずオリジナル・メンバーのジョン・ケイルのヴォーカル曲、後期はダグ・ユールのヴォーカル曲でもリードのリズム・ギターとモーリンのドラムスがガシャガシャズンドコと鳴っているだけでああ、ヴェルヴェットだなあと思わせられるのです。しかしアルバム『Loaded』1970.9の本番テイクの録音が行われた1970年初夏にはモーリンは第1子の産休でバンドを一時離れ、『Loaded』収録テイクはダグ・ユールの弟の高校生ドラマー、ビル・ユールが勤め、モーリンの復帰はリード脱退の後になってしまったのです。それでもモーリン不参加の『Loaded』、ルー・リード在籍最後のクラブ出演の発掘ライヴ『Live at Max's Kansas City』がヴェルヴェットらしさを残しているのはオリジナル・メンバーのギタリスト、スターリング・モリソンの健闘と、バンドからの脱退を見据えていながら名曲佳曲揃いの絶好調のオリジナル曲をごく短期間に書き下ろしてしまったリードの奇跡的な創作力でした。あくまでデモ録音、リハーサル音源は完成された作品ではありませんが、そうした背景を念頭に置いてお聴きください。