人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド V.U. - Live at St. David's University, Lampeter, Wales (Captain Trip, 2001)

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ヴェルヴェット・アンダーグラウンド V.U. - Live at St. David's University, Lampeter, Wales (Captain Trip, 2001) Full Concert : https://youtu.be/8lwMj0hSzMw
Recorded Live at St. David's University, Lampeter, Wales, December 6,1972
Released by Captain Trip Records JP, CTCD353, August 2001 from 4CD Box Set "Final V.U. 1971-1973"

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All songs written by Lou Reed except as noted.
(Tracklist)
1. I'm Waiting For The Man - 5:41
2. White Light / White Heat - 2:11
3. Some Kinda Love - 5:51
4. Little Jack (Yule) - 3:33
5. Sweet Jane - 3:41
6. Mean Old Man (Yule) - 2:59
7. Run Run Run - 6:16
8. Caroline (Yule) - 2:32
9. Dopey Joe (Yule) - 3:10
10. What Goes On - 4:14
11. Sister Ray / Train Round The Bend (Reed, Cale, Morrison, Tucker/Reed) - 14:01
12. Rock And Roll - 4:39
13. I'm Waiting For The Man - 5:43
[ V.U. aka The Velvet Underground ]
Doug Yule - vocals, guitar
Rob Norris - guitar
George Kay (Krzyzewski) - bass guitar
Mark Nauseef - drums

(Original Captain Trip 4CD "Final V.U. 1971-1973" Disc 3 Liner Cover & CD Label)

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 バンドの主役ルー・リードが脱退後に後期メンバーのダグ・ユールがヴォーカルとギターを担当するリーダーになって引っ張ったヴェルヴェット・アンダーグラウンドの発掘ライヴ4CDボックス『Final V.U. 1971-1973』2001でも、ディスク1、2はオリジナル・メンバーの女性ドラマー、モーリン・タッカーがまだ在籍していましたし、ベースとキーボードに新メンバーを迎えてもリード在籍時の最後の4作目のアルバム『Loaded』'70.9に基づいた演奏をしていました。ですがバンドのマネジメントは'72年秋のヨーロッパ・ツアーの最終地ロンドンからユール以外の3人を帰国させ、ユール単独でほとんど楽器も多重録音し、一部ロンドンのセッション・ミュージシャン(ドラムスにディープ・パープルのイアン・ペイスが参加しているのだけは判明しています)を起用して、全曲ユールのオリジナル曲からなるアルバム『Squeeze』'73.2を制作させ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド名義でイギリスのポリドール・レコード原盤によってイギリスとヨーロッパ諸国でのみ発売させました。ルー・リードがソロ・デビューしたのは前年でまだヒット実績がなく、ヨーロッパのリスナーはヴェルヴェット・アンダーグラウンドのメンバーが誰かなど知りませんからこういう商売もできたのですが、マネジメントはさらに新作『Squeeze』先行プロモーション・ツアーをユールとロンドンのセッション・ミュージシャン(レコーディング・メンバーでもないライヴだけの起用)でヴェルヴェット・アンダーグラウンド名義で'72年11月~12月にイギリス国内で7か所ほど行わせます。今回ご紹介する『Final V.U. 1971-1973』のディスク3収録のコンサートはツアーの最終日に当たるものです。ディスク1、2の'71年11月の2回のコンサートはオリジナル・メンバーのタッカー、後期メンバーだったユールの2人のリード在籍時からのメンバーに、ベースとキーボードに迎えたメンバーもユールの昔のバンド仲間とそれなりに縁もゆかりもあるチームだったのですが、この'72年12月のツアーではユール以外は元来ヴェルヴェットとは何も関係のないメンバーばかりだったわけです。
 楽曲に(Yule)としてあるのが『Squeeze』収録のユールの自作曲なのですが、かつてのヴェルヴェット・アンダーグラウンドルー・リードによる代表曲の方が数多いように、馴染みのない新曲ばかりにならないようなセット・リストにしてあるのが苦汁の選択を感じさせます。4曲目の「Little Jack」は『Squeeze』の冒頭曲で、アルバム中数少ない佳曲であり、なにしろ観客録音の発掘ライヴなので音が歪んでいるのは仕方ないのですが(それでも4枚中では良い方です)、アルバムよりも迫力のあるアレンジになっています。メンバー中、のちに名を上げたのはドラムスのマーク・ナウシーフだけですが、ドラムスの違いが決定的というべきか、モーリン・タッカーのドラムスとまったく違う歯切れの良いダイナミックなドラムスのせいでヴェルヴェットらしさが見事に消し飛んでいるのがこのヴェルヴェットU.K.の特徴でしょう。ただし『Squeeze』が元々このメンバーで録音されていたら、あのアルバムももっとインパクトの強いものになっていたのではないか、と思わせるだけのヤケクソな疾走感がこのツアーのみのメンバーによる編成によるヴェルヴェットにはあり、『Final V.U. 1971-1973』はディスク3がこの通りのヴェルヴェットU.K.ならディスク4は帰国後のユールが新たなメンバーで始めたバンドがマネジメントの依頼でヴェルヴェット名義で行ったライヴ、とどんどん本来のヴェルヴェットから離れていくのですが、このU.K.ヴェルヴェットについて言えば『Final V.U. 1971-1973』の4CD中もっともソリッドで性急な演奏が聴ける点で楽しめるものです。ルー・リード在籍時のヴェルヴェットはノイズ、ガレージ、プロト・パンクと呼ばれますが、ここで聴けるサウンドも十分プロト・パンクと言えるもので、『Squeeze』とこのライヴの両方を聴けばユールの奮闘は涙ぐましいほどです。45年を経てまったく再評価の兆しもなく、今後もないだろうと思うとなおのことですが、2017年現在最新の録音作品が2062年にどれだけ残って聴かれているかを考えると『Squeeze』のヴェルヴェットだって大したものなのです。