●10月19日(木)
『僕は戦争花嫁』I Was a Male War Bride (フォックス'49)*105mins, B/W; 日本公開昭和25年(1950年)12月
製作会社 二十世紀フォックス映画
配給 セントラル
[ 解説 ] 「狐の王子」のソル・C・シーゲルが製作、「ヨーク軍曹」のハワード・ホークスが監督した1949年度作品で、アンリ・ロシャールの自伝的小説をチャールズ・レデラー、レナード・スピーゲルガス、ヘイガー・ワイルドの3人が脚色し「出獄」のノーバート・ブロディンが撮影、「センチメンタル・ジャーニー」のシリル・モックリッジが音楽を担当した。主演は「夜も昼も」のケーリー・グラント、「賭博の町」のアン・シェリダンの2人でマリオン・マーシャル、ランディ・スチュアート、ウィリアム・ネフ、ユージン・ゲリック、ルーベン・ウェンドーフその他が助演している。
[ あらすじ ] 西ドイツのアメリカ占領地区でフランスの物資購入委員をしているアンリ・ロシャール大尉(ケーリー・グラント)は、指名手配のドイツ人を逮捕するために、通訳に配属されたアメリカ軍の婦人士官キャサリン・ゲーツ中尉(アン・シェリダン)と仕事をすることになった。向こうっ気のつよい2人は、初対面早々から口論が絶えなかったが、喧嘩友達から、相思の仲となり、とうとう結婚というお定りのコースをたどった。ところが困ったことに、外国の婦人と結婚したアメリカ兵の場合は、戦争花嫁として本国に連れ帰られる規定はあったが婦人士官に対しては何等の規則がなかった。ロシャールは一策を案じ、戦争花嫁の資格でアメリカに入国の許可をもらって無事に結婚式をあげたが、婦人将校の宿舎は夫といえども男子禁制であり、キャサリンは外泊も許されなかったので、新婚早々の2人は味気ない生活を送らなければならなかった。やがてキャサリンに帰国命令が下り、ロシャールは婦人将校に変装し、アメリカの輸送船にのりこみ、てんやわんやの女装生活を続けて、ようやく、アメリカにたどりつくことができた。
●10月20日(金)
『果てしなき蒼空』The Big Sky (RKO'52)*122mins, B/W; 日本公開昭和28年(1953年)4月
製作会社 RKOラジオ映画
配給 RKOラジオ映画支社
[ 解説 ] 「遊星よりの物体X」と同じくウィンチェスター・プロ作品で、主宰者ハワード・ホウクス「赤い河」が製作・監督に当たった1952年作西部劇である。プリッツァ賞受賞作家A・B・ガスリー・ジュニアの原作を「狙われた駅馬車」のダドリー・ニコルズが脚色、「激戦地」のラッセル・ハーランが撮影した。音楽は「都会の牙」のディミトリ・ティオムキン。主演は「探偵物語」のカーク・ダグラス、「遊星よりの物体X」のデューウィ・マーティン、新人エリザベス・スレットで、「遠い太鼓」のアーサー・ハニカット、「凸凹猛獣狩」のバディ・ベア、スティーヴン・ジェレイ、ハンク・ウォーデン、ジム・デイヴィス、アンリ・レトンダルなどが助演する。
[ あらすじ ] 1830年代、ケンタッキーから西部にやってきたジム(カーク・ダグラス)とブーン(デューウィ・マーティン)は、ミズリー河を遡ってブラックフット・インディアンと毛皮の取引きをすることを目論み、毛皮商人ジュルドネー(スティーヴン・ジレー)の持船にのりこんだ。船出して間もなくブラックフット・インディアンの娘ティール・アイ(エリザベス・スレット)がこの船にのっていることがわかった。彼女は3年前、瀕死のところをブーンの叔父ゼブ(アーサー・ハニカット)に救われたのである。ジュルドネーは、娘に近寄ってはならぬと水夫たちに厳命した。ジムはティール・アイに護身用のナイフを贈ったが、彼女はそのナイフで、ブーンのもっているインディアンの頭皮を盗もうとし、誤って彼に重傷を負わせてしまった。彼女はブーンを献身的に看護した。ある夜、毛皮業者マクマスターズ(ポール・フリーズ)の一味が船を襲って放火し、ティール・アイを連れ去ったが、ジム達は直ちに追跡して彼女を奪いかえし、一味の者を人質にしてマクマスターズの妨害を抑えながら河を遡っていった。ようやく目的地に近づいたとき、突然クロウ族の襲撃をうけ、船は河の真中に出て岸辺を離れぬクロウ族と対峙した。インディアンの眼をぬすんで、食物を獲るために上陸したジムが行方不明になり、ブーンは危険を冒して救いに出かけたが、ティール・アイもついてきた。傷ついて虫の息のジムを発見した彼女は、自分の体温で彼を温めて彼の危機を救った。彼等が船にかえってみると、マクマスターズの部下が一行を脅迫しているところだった。ジムの体にうちこまれた弾丸と彼等の弾丸とが同じとを発見したジム達はマクマスターズの一味を殺してしまったが、その騒ぎの間にティール・アイがいなくなった。数々の困難ののち、ようやくブラックフット・インディアンの集落にたどりつくと意外にもティール・アイが彼等を待ち受けていた。彼女のおかげで交易は友好裡にすすみ、秋のふけるころ一行は帰路についた。しかしブーンはティール・アイと結婚して後に残ったのである。
●10月21日(土)
ヘンリー・コスター/ヘンリー・ハサウェイ/ジーン・ネグレスコ/ハワード・ホークス/ヘンリー・キング『人生模様』O. Henry's Full House (フォックス'52)*117mins, B/W; 日本公開昭和28年(1953年)6月
製作会社 20世紀フォックス映画
配給 20世紀フォックス [極東]
[ 解説 ] O・ヘンリーの短篇5つを、それぞれ異ったスタッフ、キャストにより映画化したオムニバス1953年作品で、5篇を通じて製作はアンドレ・ハキム、音楽は「栄光何するものぞ」のアルフレッド・ニューマン担当。なお小説家ジョン・スタインベック(「革命児サパタ」の脚本)が解説を入れている。 <第1話 警官と聖歌> 監督は「ハーヴェイ」のヘンリー・コスター、脚色は「征服への道」のラマー・トロッティ、撮影はロイド・エイハーンの担当。主演は「パラダイン夫人の恋」のチャールズ・ロートン、「ナイアガラ」のマリリン・モンロー、「アダム氏とマダム」のデイヴィッド・ウェインで、トーマス・ブラウン・ヘンリー、リチャード・カーランらが助演する。 <第2話 クラリオン・コール新聞> 「ナイアガラ」のヘンリー・ハサウェイが監督し、脚色も「ナイアガラ」のリチャード・ブリーン、撮影はルシエン・バラードの担当。主演は「嵐を呼ぶ太鼓」のデール・ロバートソンと「死の接吻(1947)」のリチャード・ウィドマークで、ジョイス・マッケンジー、リチャード・ロバー、ウィル・ライトらが助演する。 <第3話 残った葉> 監督は「嵐を呼ぶ太鼓」のジーン・ネグレスコ、脚色は「艦長ホレーショ」のアイヴァン・ゴッフとベン・ロバーツ、撮影は「ナイアガラ」のジョー・マクドナルドの担当。主演は「イヴの総て」のアン・バクスター、「ナイアガラ」のジーン・ピータース、「イヴの総て」のグレゴリー・ラトフの3人、リチャード・ギャリック、スティーヴン・ジェレイらが助演。 <第4話 酋長の身代金> 監督は「果てしなき蒼空」のハワード・ホークス、脚色は「クーパーの花婿物語」のナナリー・ジョンソン、撮影はミルトン・クラスナー(「イヴの総て」)の担当。主演はラジオ、テレビの芸人フレッド・アレンと「巴里のアメリカ人」のオスカー・レヴァント、リー・アーカー、アーヴィング・ベーコンらが助演する。 <第5話 賢者の贈物> 「キリマンジャロの雪」のヘンリー・キングが監督し、脚色は「ロッキーの春風」のウォルター・バロック、撮影は第3話のジョー・マクドナルドの担当。主演は「一ダースなら安くなる」のジーン・クレインと「見知らぬ乗客」のファーリー・グレンジャー、フレッド・ケルシー、シグ・ルーマンらが助演する。
[ あらすじ ] <第1話 警官と聖歌> 紳士気取りで人の善いルンペン男ソーピイ(チャールズ・ロートン)は、夏は涼しいセントラル・パークで、冬は暖かい留置所で暮らすことにしていた。ある年の冬、彼は仲間のホレス(デイヴィッド・ウェイン)に、留置所に入る秘術を伝授しようとしたが、どうもうまく警官に捕まらなかった。ソーピイは美しい街の女(マリリン・モンロー)に声をかけたが、かえって彼女に好意をよせられ面喰らって逃げ出す始末。ある教会に入り、オルガンの響に心打たれてルンペン渡世から足を洗おうと決心した。そして教会を出たとたん、浮浪罪として警官に捕まり、3ヶ月の禁固をくらった。 <第2話 クラリオン・コール新聞> 刑事のバーニイ(デール・ロバートソン)は、迷宮入りになった殺人事件の犯人をやくざもののジョニイ(リチャード・ウィドマーク)だとにらんだ。バーニイとジョニイは幼な友達で、2人は十数年ぶりで再会したのだ。バーニイはジョニイに証拠をつきつけて迫ったが、そのときジョニイはバーニイに、その昔千ドル貸したことをもち出した。バーニイはそのためジョニイを一応見逃し、千ドルの工面を考えた。折よく「クラリオン・コール」という町の一流新聞が、犯人の名前を通告したものに千ドル与えるという懸賞を出した。バーニイは賞金を手に入れてジョニイに借金を返し、心おきなく彼を逮捕することができた。 <第3話 残った葉> 恋人にすてられた若い女画学生ジョアンナ(アン・バクスター)は、失望にうちひしがれ、寒いニューヨークの街をさまよった末、姉スーザン(ジーン・ピータース)と一緒に住むアパートにたどりつくと、そのまま病の床に伏した。医師は肺炎と診断し、ジョアンナが生きる希望を取り戻さなければ助からないと言った。彼女は自分の部屋の窓ぎわに生えている蔦にある21枚の葉が、その1枚ごとに彼女の1年間の生命を意味し、最後に残った葉が風に吹き落とされたら、自分は死ぬと思いこんでしまった。彼女の容態は悪化し、ある朝、蔦も葉も最後の1枚になった。途方にくれたスーザンは、バーマン(グレゴリー・ラトフ)という自分の才能に自信を失った画家に悩みを訴えた。強風の吹きすさんだ1夜が明け、ジョアンナが目を覚ました時、最後の1葉がそのまま残っているのを見て元気を取り戻した。実は最後の葉は風に吹き飛んだのだが、バーマンが描いた葉を枝につけておいたのだ。夜中寒風にさらされたバーマンは、そのため急死してしまった。 <第4話 酋長の身代金> サム(フレッド・アレン)と相棒のビル(オスカー・レヴァント)は、金持ちの子供を誘拐して身代金を稼ごうとアラバマの村へやって来た。2人はうまく少年を誘拐することに成功、さっそく身代金請求の手紙を少年の両親宛てに出した。ところが、この少年、インディアンの酋長気どりの腕白小僧で2人はほとほと手を焼いた。そのうち、両親から手紙が来たが、それには身代金を払わないと言うばかりか、どうしても少年を返したいなら250ドルよこせと書いてあった。腕白小僧にさんざん手こずった2人は、少年を送り返し250ドルまきあげられた。 <第5話 賢者の贈物> 相思相愛の若夫婦デラ(ジーン・クレイン)とジム(ファーリー・グレンジャー)は、貧乏なのでクリマス・イヴが来るのにお互いの贈物を買うことができなかった。デラは出勤するジムを送りながら一緒に街に出、途中で2人はある宝石商のウィンドウの前に立ち止まった。ジムは素敵な櫛に目をつけ、これがデラのふさふさした金髪を飾ったらさぞ美くしかろうと考えた。一方デラはプラチナの時計入れを見て、これはジムの骨董的な金の懐中時計を入れるのにふさわしいと思った。2人はそこで別れたが、お互にいま目をつけたプレゼントを買う金の工面に心をくだいた。デラは思い切って自分の髪を売り、ジムは時計を売った。夕刻、2人は贈物を交換したがどちらも当分の間役に立つものでなかった。しかし2人はお互いの愛を身に沁みて感じた。