人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

バートン・グリーン・カルテット Burton Greene Quartet - クラスター・カルテット Cluster Quartet (ESP, 1966)

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バートン・グリーン・カルテット Burton Greene Quartet - クラスター・カルテット Cluster Quartet (Burton Greene) (ESP, 1966) : https://youtu.be/Za8_jUPmhBo - 12:08
Recorded in January 1966.
Released by ESP Disk as the album "Burton Greene Quartet", ESP 1024, 1966
[ Personnel ]
Burton Greene - piano, Marion Brown - alto saxophone, Henry Grimes - bass, Dave Grant - percussion

 バートン・グリーンは'37年生まれ、ご覧のジャケット・ポートレートの通りデカダン詩人のよう容貌が目を惹く白人ジャズマンとしてフリー・ジャズ界から活動を始めた珍しいピアニストで、白人ジャズ・ピアニストでフリー・ジャズに入った人には先輩格にポール・ブレイがいましたが、ブレイはハード・バップ時代からチャールズ・ミンガスマックス・ローチの共同レーベルのDebutからデビューしていて、ソニー・ロリンズのサイドマンも勤めており、いわば出自のしっかりしたジャズマンでした。グリーンはと言えば最初からフリー・ジャズのピアニストとしてデビューしたので、このアルバムや当時のライヴでもマリオン・ブラウンやヘンリー・グライムズ、ゲストに迎えたファロア・サンダースら黒人メンバーはいいのにグリーンのピアノは駄目、と不評で、グリーンはフリー・ジャズに見切りをつけて新発明のムーグ・シンセサイザーに活路を見出し、メジャーのコロンビアにシンセサイザー音楽のアーティストとして迎えられることになります。
 グリーンが不運だったのはフリー・ジャズ支持者はインテリの批評家が白人黒人批評家問わず多くフリー・ジャズは急進的かつ尖鋭的な黒人ジャズ運動とされたので、一部の白人ジャズマンを除いては認められるのが難しかった事情があります。フリー・ジャズというと滅茶苦茶や出鱈目という安易なイメージがありますが実際のフリー・ジャズのほとんど全部が調性もあれば和声も旋律(音階)もある音楽なので、西洋楽器を使っている以上当然そうなり、ジャズマンは演奏に肉声やノイズ的ニュアンスを与えることで新しい響きを出そうとしました。この曲などはABB=12小節形式のシンプルでオーソドックスなブルース曲で、楽曲自体に新しいアイディアはまったくありませんし、グリーンだけでなく駆け出し時代のマリオン・ブラウンも稚拙な演奏で凄腕ベーシストのグライムズでもっているような演奏です。しかしこれは稚拙だからこそチャーミングな演奏で、この曲だけの輝きがあります。グリーンはのちジャズ界に復帰しますが処女作ならではの若気のいたりの良さがある本作は今でもひっそりと愛聴されていて、このアルバム巻頭曲だけでも忘れがたいアルバムになっているのです。