コズミック・ジョーカーズ&ステルンマッシェン The Cosmic Jokers & Sternenmadchen - プラネッテン・シット・イン Planeten Sit-In (Kosmische, 1974) Full Album : https://youtu.be/TUh_kC28e0g
Recorded at The Studio Dierks, Stommein by Dieter Dierks, February-May 1973
Released by Metronome Records GmbH, Die Kosmischen Kuriere KM 58.013, 1974
Musik von Dierks, Dollase, Gottsching, Grosskopf, Schulze
Remixes von Dieter Dierks
(Seite 1)
A1. Raumschiff Galaxy Startet - 1:04
A2. The Planet Of Communication - 0:55
A3. Elektronenzirkus - 0:37
A4. Der Narr Im All - 1:16
A5. Raumschiff Galaxy Fliegt In Die Sonne - 2:12
A6. Intergalactic Nightclub - 4:08
A7. Loving Frequencies - 3:18
(Seite 2)
B1. Electronic News - 3:56
B2. Intergalactic Radio Guri Broadcasting - 4:24
B3. Raumschiff Galaxy Gleitet Im Sonnenwind - 0:40
B4. Interstellar Rock: Kosmische Musik - 3:11
B5. Raumschiff Galaxy Saust In Die Lichtbahnen - 0:44
B6. Der Planet Des Sternenmädchens - 8:21
[ Personnel ]
Manuel Gottsching - guitar
Dieter Dierks - recording, synthesizer
Jurgen Dollase - piano, organ
Harald Grosskopf - drums, percussion
Klaus Schulze - electronics, percussion
Gille Lettmann - lyrics, voices
Rosi Muller - lyrics, voices
Brian, David , Liz - voices
*
(Original Kosmische Musik "Planeten Sit-In" LP Liner Cover & Seite 1/2 Label)
コズミック・ジョーカーズ&ステルンマッシェン(星の娘たち)名義の本作は曲区分の多さからも推察できるようにさらに楽曲の断片化が進んだ過激なアルバムで、曲区分はされていても、もはや楽曲の体裁をなさないサウンド断片が現れては消えて行くアルバムで、これほど過激なリミックス・アルバムは'70年代末のダブや'80年代末のハウスにならないと現れなかったので、同時代にあってはサウンド・エフェクト的なトリップ・ミューザック的な際物にしか映らなかったはずです。コズミック・ジョーカーズの一連の作品は楽曲らしい楽曲性はなくともアンサンブルによってスペース・ロックとしての完成度を楽しめるものでした。本作ではアンサンブルは楽器トラック単位に解体され、シンセサイザーのピュンピュン飛ぶサウンド空間にヴォイスが聞きとれない歌詞をよぎるように現れては消え、B1でようやく推進力のあるサウンドが現れますがそれも始めだけで、アルバム最終曲B6は8分半近い長さもあり、ここでやっとバンド・サウンドらしいミックスが現れますがそれも始めだけで、当時は8トラック・レコーダーを2台同期させた16トラックから単独で16トラックのマルチトラック・レコーダーが最新技術だったはずですが(32トラック・レコーダーの開発は'70年代後半です)、ミキシング卓のほとんどのフェイダーを落としごくごく極小部分だけをイン/アウトして作り上げた作業は通常のロックのアルバムでは考えられないことだったでしょう。
コズミック・ジョーカーズ作品最終作になる本作と『ジルズ・ツァイツシフ(Gilles Zeitschiff)』'74の2作のリミックス・アルバムになると、原型になったコズミック・ジョーカーズ作品『コズミック・ジョーカーズ』『ギャラクティック・スーパーマーケット』はほとんど元の形をとどめていません。それどころか解体の度合いが行き過ぎていて、完成アルバム2作があってのリミックス・アルバムというのは一種のアリバイ工作で、まだしも音源の推定が可能だった『サイ・ファイ・パーティー』どころではない電子音のサウンド・コラージュ・アルバムが平行して意図されて企画されていたのではないかと思われてきます。おそらくこれはセッションからの未発表音源リミックス集と見せておいて、リハーサル段階での楽器単位のサウンドチェックが大量に紛れこませてあり、また未完奏テイクからのサウンド断片がフラッシュバックのように抜き出してあると考えられます。楽曲の体をなしていないのはもともとそういう断片ばかりを集めてきたからで、実験的なアート作品としての音楽ではなくポップス畑のロック・ミュージックの文脈で出てくる発想では普通こうしたものは出てこないでしょう。本作と『ジルズ・ツァイツシフ』はミュージシャンたちの音楽ではなくディーター・ダークスというサウンド・エンジニアの音楽で、ダークスはシンセサイザーの奏者でもありますがミュージシャンではなく、サウンド・オペレーターとしてシンセサイザーを扱っているだけで、電子音ノイズを抽出してきただけのサウンド構成をコズミック・ジョーカーズというロックのセッション・アルバム企画の中で試してみた、純粋にサウンド・エンジニアとしての探求心が生んだアルバムでしょう。クラウス・シュルツェはダークスとの共同作業で多くを学んだはずで、コズミック・ジョーカーズ作品のあとのシュルツェ作品『ブラックダンス』'74、『ピクチャー・ミュージック』'75には『イルリヒト』'72、『サイボーグ』'73からの大きな変貌が見られますが、シュルツェの音楽はシュルツェの人格性に根ざしたものでサウンドのみに着目したダークスのリミックス・アルバムとは対照的なのを認めずにはいられず、これらのリミックス・アルバム2作にシュルツェの姿は見当たらないのも感じずにはいられません。