人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

映画日記2018年12月13日~15日/初期短編(エッサネイ社)時代のチャップリン(5)

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 チャップリンは'15年末までにはエッサネイ社との年間契約を満了して新たにミューチュアル社とさらに良い待遇の契約を結んだので、'15年12月公開の新作は割と安易な発想のパロディ作品「チャップリンカルメン」になりました。'15年末にはセシル・B・デミル監督、ジェラルディン・ファーラー主演版『カルメン』('15年10月31日プレミア公開、11月1日全米公開)とラオール・ウォルシュ監督、セダ・バラ主演版『カルメン』('15年11月1日公開)の2本の長編『カルメン』映画が競作となりヒットしていたので、おそらくデミル版・ウォルシュ版競作が公開前に噂になってすぐにパロディ作品の企画を立てたのでしょう。またチャップリンはミューチュアル社と作品内容と公開時期の全権をチャップリン自身が掌握する契約を結びましたが、逆に言えばエッサネイ社では完成作品の内容決定権も公開時期の決定権も会社側にあったので、エッサネイ社は契約満了の第14作「チャップリンの悔悟」をチャップリンがミューチュアル社移籍第1作を発表する'16年5月まで先延ばしにし、その内容もエッサネイ社によって改竄されたヴァージョンでした。またミューチュアル社第1作の直前の'16年4月に「チャップリンカルメン(Carmen)」にベン・ターピン出演の追加撮影と再編集を行って2巻の短編を4巻の中編に引き伸ばした新版「チャップリンカルメン(Burlesque on Carmen)」を製作・再公開してオリジナルの2巻もの「チャップリンカルメン(Carmen)」は破棄、というか分解再構成されてしまいます。エッサネイ社時代にチャップリンは長足の成長を遂げましたが、法的にはそうした改竄再公開もエッサネイ社に権利があるような契約だったわけです。さらにエッサネイ社は第8作「チャップリンのお仕事」と「チャップリンの悔悟」の未使用テイク、またチャップリンが製作しかけて中断した未完成・未発表短編「Life」にレオ・ホワイトが監督して追加撮影を行い「新作短編」として「三つ巴事件」をエッサネイ社の次のミューチュアル社からさらにファースト・ナショナル社に移籍し、同社第1作「犬の生活」('18年4月14日公開)からまだ次作が発表されていなかった'18年8月に公開します。これもチャップリンには差し止めの権利はなかったのですが、さすがにエッサネイ社もこれ以上似たようなことをやると揉めると踏んだのでしょう。捏造された新作はそれきりになりますが、再上映のたびにエッサネイ社の短編は短縮されたり短縮を補うために再編集されたりしたのでヴァージョンの混乱があるのです。それでもチャップリン作品はサイレント時代のアメリカ映画ではよく保存された方で、一応全作品のほぼ完全なプリントが存在するのは'10年代の映画監督・俳優にとっては稀有なことで、サイレント時代の映画プリントの現存率は25パーセント以上30パーセント未満というのが現代の映画研究家の調査成果ですから(5パーセントの幅は今後の発掘成果の期待値で、チャップリンですらキーストン社でのデビュー年'14年の幻の第4作「泥棒を捕まえる人(A Thief Catcher)」の発見は2010年でした)、あまりやる気のない、または改竄された、または捏造されたエッサネイ社時代の第13作~第15作でもポスターや広告だけ残ってプリント散佚だったら内容も確かめようもないので、充実期に入ったと見えたエッサネイ社時代にも末期にはこういう適当な作品もあった、とオマケ程度に観ればこれらもあながち悪くないなと思えてきます。

●12月13日(木)
チャップリンカルメン」Carmen (Burlesque on Carmen) (Essaney'15.Dec.18/'16.Apr.22)*31min, B/W, Silent : https://youtu.be/YgrOJRjAvTk

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 今回の3編はどん底ではないにせよ初期短編時代のチャップリン作品中でも参考作品程度の出来ばえなので、前書きに書いた以上のことはキャストを並べながらあらすじを追い、チャップリン本来の意図が生かされていると思われる部分とエッサネイ社側による改竄部分を指摘するくらいのことになります。前書きに追加すれば、改竄作品第1弾になった'16年4月再公開版の4巻版「チャップリンカルメン(Burlesque on Carmen)」をチャップリンは非公認作品と提訴しましたが敗訴、控訴しましたが第一審は覆らず、エッサネイ社は自信を持って最初から改竄公開した延期新作「チャップリンの悔悟」をミューチュアル社移籍作品にぶつけて公開し、さらに未使用テイクから編集した捏造作品「三つ巴事件」を製作公開、チャップリンも「チャップリンカルメン」提訴の敗訴が前例になってしまったので再び提訴は断念しましたが、映画はヤクザの世界ですからそこまでで脅しをかけたかもしれませんし、14本の契約満了数を越えた第15作「三つ巴事件」にはチャップリンへの手打ち金が動いたかもしれません。憶測しても仕方ありませんが、「チャップリンカルメン」はエッサネイ社側からのリクエスト仕事だったとも考えられ、'15年12月公開のオリジナルの2巻版(約2,000フィート)を製作するためにチャップリンが使用したフィルムは10万フィート(約1,000時間強=42時間、NG率98パーセント、1カット平均50テイク!)と伝わりますから、チャップリンはどうせ会社企画の製作費会社持ちならじゃんじゃん回しちゃえとばかりにリハーサルまでフィルムを回し、実際チャップリン出演の本来の2巻版部分と思われる部分はエッサネイ社で作ってきた名作・佳作に較べて緊密さこそ欠けますが、もとより外国時代劇のパロディ作品ですからこういう緩さもあっていい、まあ日本で言えばパロディ忠臣蔵のような気楽な短編ですから10万フィートもフィルムを使ってしまったチャップリンの方に「どうせあと2本で契約満了だし」とエッサネイ社に損をさせてもいい気もあった(それまでの12編で十分儲けさせたし)かもしれません。カルメンに恋する伍長はもちろんチャップリンカルメンはもちろんエドナ・パーヴィアンス、カルメンのヒモのジプシー男はジョン・ランド、ほかに少尉役でレオ・ホワイト、兵士役にブド・ジャミソン、浮浪者役にウェズリー・ラッグルスといつもの面子が並びますから、無駄に宴会まで開いてフィルムを回し宴会代は経費で落とした、とレギュラー俳優たちをねぎらった撮影をしていたかもしれません。4巻版ではエッサネイ社のスタッフが追加撮影した密輸業者のベン・ターピンとジプシーの親分役のジャック・ヘンダーソンの闇取引が取り締まられる事件が冒頭から随所に挟まれており、ターピンとヘンダーソン出演の追加撮影場面は当然チャップリンがエッサネイ社を去ってからのものですからチャップリンは衛兵伍長の任務として密輸業者の闇取引事件には関わっていますが、ターピンとヘンダーソンの出演場面には出てきません。ならば単純にターピンとヘンダーソンの出演場面をカットすればオリジナルの2巻版が復原できるかというと、構成そのものも改竄されている可能性の方が高いので結局4巻版をチャップリン非公認ながら完成作品と見るしかない。まあ『カルメン』のパロディ作品ですからフランス人伍長のチャップリンとジプシー娘カルメンの恋愛と無理心中に終わります。このオチにも工夫があり、これもフィルム濫費の弊害と思われますが、真剣なチャップリンなら考えられないようなずさんな構図と演出のせいでオチの工夫が台無しになっているのも間の抜けた笑いを誘うので、きっとキャストもスタッフも小道具用にじゃんじゃん出前で取り寄せたワインをがぶ飲みしながら一杯機嫌で撮り上げてしまったのでしょう。まあベン・ターピンの出演場面が追加されたからといってオリジナルの2巻版の本質まで変わったとも思えず、素麺が冷や麦に変わったようなもの、とこの現存4巻版については寛大に楽しめばいいのではないでしょうか。ちなみにデミル版の『カルメン』はオペラ界のスターのファーラーがカルメンを演じる名作、ウォルシュ監督版でしかも伝説的ヴァンプ女優セダ・バラ主演の『カルメン』は10年ほどの活動期間に44作の長編出演があるのに濫作が、災いしたか4作しかフィルムの現存しない女優で、セダ・バラ版『カルメン』もスチール写真しか残っていません。ラオール・ウォルシュの監督作というだけでも散佚は実に惜しまれ、チャップリンのパロディ版が残っているのにラオール・ウォルシュ監督作のセダ・バラ版が散佚というのは映画史の皮肉を感じます。

●12月14日(金)
チャップリンの悔悟」Police (Essaney'16.May.27)*25min, B/W, Silent : https://youtu.be/f06sLRRaQAQ

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 この「チャップリンの悔悟」も'15年中には撮影完了していた作品と思われ、エッサネイ社との契約は年間14編でしたから'15年2月に第1作を発表したチャップリンは'16年1月に第14作を公開する心算だったでしょう。完成作品として納品も済んでいたとおもわれます。しかし'16年度にミューチュアル社に移籍したチャップリンのミューチュアル社第1作は'16年5月公開からの月1作ペースになり、エッサネイ社はセールス上の効果からまず4月に4巻追加撮影再編集版「チャップリンカルメン」を再公開し、ミューチュアル社移籍第1作と同じ5月に公開延期していたエッサネイ社第14作の新作である本作を、エッサネイ社を去ったチャップリン非公認で最初から改竄再編集版で公開します。この「チャップリンの悔悟」はしんみりした小品佳作になり得た作品で、それだけに微温的な編集による改竄が惜しまれる短編として惜しまれる作品です。短編は「Once again in the cruel, cruel world...」と、雪の降る真冬の刑務所からチャップリンが釈放されて路上に出る場面から始まります。入獄して出所した経験のない方には実感が湧かないかもしれませんが、刑務所というのは釈放者に何のケアもせずに単に釈放するだけの所で、出所者のまず感じるのは世界から取り残された不安と何の生活の保障もない恐怖です。おずおずと歩き出すチャップリンに牧師服の男(ビリー・アームストロング)が「Let me help you go to straight!」(正しく生きるお手伝いをしましょう)と近寄ってきて抱き寄せます。チャップリンは遠慮して離れますが、牧師は次に太った酔っぱらい(ジェイムズ・ケリー)に同じ手で近づき時計を掏摸とります。チャップリン果物屋に立ち寄りその場で果物を食べながら代金を払おうとポケットをさぐりますが、獄中労働で得たはずのなけなしのお金はなくなっており、チャップリン果物屋のおやじ(レオ・ホワイト)にどやされながら通りの向こうの偽牧師を見てほぞを噛みます。スリの偽牧師を追う気力もないのが伝わってくる切ないショットで、今回のチャップリンはいいな、と途中までは期待できる作品なのは前半には公開時の改竄がされていないのでしょう。そこにまた今度はいかにも明朗誠実な本物の牧師(フレッド・グッドウィンズ)がチャップリンに「Let me help you go to straight!」と声をかけ、チャップリンはグッドウィンズを突き飛ばし、やおら気力を取り戻して偽牧師を追って走り出すと警官(ジョージ・クリーソープ)を突き飛ばしてしまい、警官に追われて逃げ出します。タイトル「That night...」チャップリン簡易宿泊所に並び、8人の宿無し(ブド・ジャミソン、バディ・マクガイヤら)が次々といかにも貧しい、野戦病院のように小屋の中に板張りのベッドが並んでいるだけの宿泊所に小銭を宿主(レオ・ホワイト二役)に払ってベッドにありつこうと列を作っています。こんな宿泊所でも壁に落書きがあるのがますます悲哀を誘います。チャップリンは8人目で、7人目は明らかに肺病持ちで宿主はタダで入れてやりチャップリンは期待しますが、文無しとわかるとチャップリンは放り出されます。チャップリンは入口でまた別の警官(ジョン・ランド)とひと揉めして逃げ出し、立ち止まった家の戸口で背中に強盗にピストルを突きつけられますが、振り向くと刑務所で一緒だった囚人仲間(ウェズリー・ラッグルス)だったとわかります。ラッグルスに焚きつけられて、チャップリンはラッグルスとこの二階家に強盗に入ることにします。家に押し入り二人で金目のものを片っ端からズタ袋に詰めこんでいるうちに、チャップリンが落として割ってしまった陶器の音に気づいて二階からエドナ・パーヴィアンスが降りてきます。パーヴィアンスは二人にお茶を振る舞い、二階で病気の母が寝ているから静かにして気づかせないで、その代わり好きなだけ必要なものを持っていって、と言います。再び仕事にかかるラッグルス。パーヴィアンスはチャップリンとさしになると「Let me help you go to straight!」と言います。これまで快調だった本作が字幕や構成の改竄でありふれた泥棒の改心物語にされてしまった様子なのがここからで、パーヴィアンスは二階の金品も探したい、というラッグルスに二階には母が寝ているから、と断固として譲らず、チャップリンも盗品をまとめるのに四苦八苦しているうちに警察に電話をかけます。ラッグルスとともにチャップリンが盗品の袋を担いで家を出ようとした時、警官隊(スナッブ・ポラードら)が到着し、ラッグルスは荷物を置いて逃げ出します。チャップリンは警官に囲まれて慌てふためきますが、パーヴィアンスは「夫です」と警官隊を引き上げさせます。パーヴィアンスはチャップリンに金貨を一枚渡し、チャップリンは手に持っていた袋を返してパーヴィアンスに礼をして家を出て、上りの山道をのんびり歩いていきます。するとチャップリンを追ってくる警官隊が見え、チャップリンは再び走り出します。アイリス・アウトでエンドマーク。短縮版では警官とのケンカを切ったり、下げは山道を歩き去るチャップリンまででエンドマークにしているヴァージョンもあります。本作は前半2/3まではエッサネイ社での名作「チャップリンのお仕事」「チャップリンの女装」「チャップリンの掃除番」などに並ぶ出来ばえなのですが、どうもパーヴィアンスの行動が怪しい。おそらく二階に母親が寝ているから静かに、代わりに泥棒は黙認するからというのは身の安全と警官を呼ぶための時間稼ぎ、さらに二階にはもっと財産が隠してあるからだと思われ、そうしたパーヴィアンスの策略を泥棒のチャップリンの改心物語にするために字幕と構成の改竄で現行ヴァージョンのようにして公開したと思われる節があります。もし最初から現行ヴァージョンのような内容ならば結末でパーヴィアンスの母親が何も知らずに二階から降りてきて、お客様よと紹介されパーヴィアンスとともにチャップリンを見送る、というシークエンスも必要だったでしょう。母親の実在を見せずに泥棒黙認と警察通報の両方をやるパーヴィアンスが描かれているために現行ヴァージョンの巻末1/3は説得力を欠くものになっており、パーヴィアンスに許される結末はオリジナル通りとしてもチャップリン本来の意図は結局警察に通報され追放されて放浪は続く、というものでなければ前半2/3との一貫性がありません。本来'16年1月には公開される予定でチャップリンがエッサネイ社に納品していたオリジナルは残されておらず、5月公開の改竄版が公開された最初で唯一のヴァージョンであり、さらに本作の改竄に当たっては次のエッサネイ社による捏造作品「三つ巴事件」のために意図的にオミットしたのではないか、と推測される部分もあります。前半2/3の出来とオリジナルの意図を買って本作をチャップリンのエッサネイ社時代の名作・佳作のひとつとするか、やはり改竄部分の不調和でいまいちの作品と見るか、評価の難しいところです。

●12月15日(土)
「三つ巴事件」Triple Trouble (Essaney'18.Aug.11、追加監督レオ・ホワイト)*24min, B/W, Silent : https://youtu.be/bauf3rz2LSM

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 ミューチュアル社への移籍後の作品が'16年5月から「チャップリンの替玉(The Floorwalker)」、6月に「チャップリンの消防夫(The Fireman)」、7月「チャップリンの放浪者(The Vagabond)」、8月7日には「午前一時(One A.M.)」と快調に公開され、'17年10月の「チャップリンの冒険(The Adventurer)」でミューチュアル社との12編の契約を満了したチャップリンはファースト・ナショナル社に移籍し、以降はチャップリン自身がプロデュースも兼ねて自作専用スタジオも建設する黄金時代に入ります。そのファースト・ナショナル社に移籍第1作「犬の生活」'18.Apr.14からまだ次作が発表されていなかった'18年8月11日にエッサネイ社が忽然と公開した夏休み映画「三つ巴事件」は、第8作「チャップリンのお仕事」'15と「チャップリンの悔悟」'16の未使用テイク、またチャップリンが製作しかけて中断した未完成・未発表短編「Life」にレオ・ホワイトが監督して追加撮影を行い「新作短編」として捏造した作品で、すでに「チャップリンカルメン」の改竄再編集版再公開で敗訴していたチャップリンはやむなくこの「三つ巴事件」も非公認ながら黙認しました。もっとも本来のエッサネイ社との契約本数14編は「チャップリンの悔悟」で満了していますからエッサネイ社はチャップリンに追加報酬を支払って手打ちをした可能性もあります。チャップリンはミューチュアル社との契約期間中ですし、ましてやエッサネイ社が一方的に捏造した本作を公認はできなかったでしょうが、1964年に刊行した『チャップリン自伝』では4巻版「チャップリンカルメン」ともども本作をフィルモグラフィーに含めています。さすがに50年あまりを経過すると公開された作品を公認しないではかえって混乱を招きますし、また本作はでたらめで荒唐無稽な作品ながら第1次世界大戦を背景にしたスパイ・コメディになっていて、こんな発想は本来のこのエッサネイ社時代のチャップリン短編には不釣り合いなのですが、レオ・ホワイト監督の追加撮影とエッサネイ社スタッフの編集によって一応短編らしい短編になっている怪作です。またチャップリン自身が宣伝映画「国債(Bond)」'18.Oct.4に続いて本格的な第1次世界大戦の戦争コメディ中編の傑作「担え銃」'18.Oct.20の製作中でしたから、この怪作スパイ・コメディ短編もそれなりにチャップリンの作品歴の中に収まる、という主客転倒の事態にもなります。短編はドイツの科学者で変人の大佐(役者不明)が執事(役者不明)と娘(役者不明)と住んでいる家の掃除夫チャップリン(「チャップリンのお仕事」より)がメイド(エドナ・パーヴィアンス)の協力でスパイの外交官伯爵(レオ・ホワイト)の指示によって無線爆発装置の設計図を盗み出しますが、偽牧師のビリー・アームストロングにスリにあい簡易宿泊所に泊まって宿泊者の中にアームストロングを見つけて地図を取り戻し(「チャップリンの悔悟」より。簡易宿泊所に泊まる案のシークエンスも撮影されていた証拠になりますし、宿無しの列の中にアームストロングの二役が入っていたのがこう活かされていたということです)、再び変人大佐の家に戻って本国からの外交官伯爵に設計図を売ろうとしますが、何だかんだでドタバタがあってピストルがぶっ放され家が爆発、全員瓦礫の下に埋まってチャップリンが顔を出し(「チャップリンのお仕事」)、エンドマーク。チャップリンとパーヴィアンスの出演場面は「チャップリンのお仕事」「チャップリンの悔悟」の未発表テイクと未完成短編「Life」からのもので、レオ・ホワイトは自分の出演場面を利用してさらにドイツの変人大佐一家の家の場面を追加撮影して再構成し、掃除夫のチャップリンやアームストロングにスリにあうシーン、簡易宿泊所の別テイクなどをスパイ・コメディのプロットに組み替えています。こういうのもあるんだな、と楽しめばいい短編、ただしチャップリン出演作品ではあっても監督作とは言えない、短編映画でリミックス作業を行ったような異色作としての興味にとどまるものではあるでしょう。