人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ジミ・ヘンドリとは何者?

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 これはイギリスで1966年12月、ジミ・ヘンドリックスがシングル「ヘイ・ジョー c/w ストーン・フリー」でデビューした直後、まだ日本でのレコード発売前に初めて日本の音楽誌「ミュージック・ライフ」に紹介記事が掲載された、その歴史的な誌面です。ご覧の通り日本語表記は「ジミ・ヘンドリ」(その上「HENDRIX」から「N」を落とした誤植で「HEDRIX」になっています)。おそらくHendrixの綴末の「x」はフランス語風に無声子音と思われていたのでしょう。ジミ・ヘンドリックスのメジャー・デビュー・ライヴはフランスのロック歌手ジョニー・アリディのフランス国内公演の前座で、それもイギリス本国からの資料にはあったのでしょう。またアメリカ黒人の比率の多くは南部出身で、フランスまたはスペイン領だった時代のアフロ・アメリカンですが、「x」を無声子音とするなら「H」も無声で「エンドリ」(アリディも「Hallyday」です)と読まないと統一がとれません。しかもジミはシアトル生まれで、ネイティヴ・アメリカン(インディアン)との混血黒人ですから南部出身家系ではありません。

 さすがに日本でのレコード発売時にはジミ・ヘンドリックスに定着したようですが、実際にはこれも日本語ならではのカタカナ表記で、実際の発音では「H」音は軽く、促音は呑みこむので「エンドリク(ス)」が近い、ということになります。しかし「Robertson」を原音通り「ロブツン」と表記したら原綴(スペル)がわからなくなるので便宜上「ロバートソン」とするように、厳密な原音主義より折衷的に原綴を反映した表記の方がいい。KISSのAce Frehleyは「エース・フレーリー」と「エース・フューレー」を行ったり来たりしていましたが、結局原綴がわかるフレーリーでいい、ということになっています。しかしジミ・ヘンドリとはあまりにもあんまりで、面白いのでしばらくはジミ・ヘンドリ表記で日本盤がレコード発売されていたらコレクターズ・アイテムになっていたのではないでしょうか。「日本盤初期プレス・ヘンドリ盤・激レア!(爆)」という具合に。