人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ロック史上最高のデビュー・アルバム

MOBY GRAPE
モビー・グレイプ
★★★★★Moby Grape / Col. CS-9498 ('67.May.29) : http://www.youtube.com/playlist?list=PLpvztXgGzYSE20HuDuqGH8kYM8DVWENHN

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★Wow (c/w "Grape Jam") / Col. CKS-3 ('68.Apr.3) : https://youtu.be/6khG54XE-Ws : https://youtu.be/UVYQSbOiATY

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★★★Great Grape / Col. CS-31098 ('72) : https://youtu.be/GVFM0ttRldE

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 モビー・グレイプはいいアルバムを1枚だけつくった。しかしそれはまた何というアルバムだろう。このグループのデビューLPが現在もなお"サマー・オブ・ラヴ"と呼ばれた1967年の夏にサンフランシスコから飛び出した時と同じように新鮮で心地良いということは、このバンドが夢に描いていた折衷的アメリカ音楽を象徴している。『Moby Grape』の中にうずまいているのは、ジャズ、カントリー、ブルース、そして昔ながらのロックンロールらの諸要素だ。しかしそれらすべてがうまく統合されて、このグループ(5人メンバー。全員が見事に歌い、書き、演奏する)の手でこねあげられているので、アルバム中全13曲を個別に記憶にとどめることは不可能だ。リード・ギターのジェリー・ミラーとベースのボブ・モズレイが楽器演奏面でバンドに拍車をかけているが、他の3人、つまりリズム・ギターのスキップ・スペンスとピーター・ルイス、そしてドラムスのドン・スティーヴンソンの貢献も大きい。
 グレイプの急速な落ち込みは'60年代後期の不思議な悲劇のひとつだ。『Wow』は完全な失敗作で、グループの長所であるタイトな歌構成とは何のかかわりもないジャム・セッションの「おまけ」LP『Grape Jam』をつけた2枚組。6、7枚あるこの他のアルバムはもはや入手不可能。純粋なカントリーからブルースに影響されたロック、完全な音楽的混乱までさまざまである。
 『Great Grape』はかなりうまく選曲されたアンソロジーだが、ほんとに重要なのは先に述べた最初のLPだけである。
(文=ビリー・アルトマン)
(『ローリングストーン・レコードガイド』1979年版より、翻訳=講談社・昭和57年3月刊)