人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アーマッド・ジャマル Ahmad Jamal - 枯葉 Autumn Leaves (Epic, 1955)

アーマッド・ジャマル・トリオ Ahmad Jamal Trio - 枯葉 Autumn Leaves (Joseph Kosma, Johnny Mercer) (Epic, 1955) : https://youtu.be/TqcXugen0To - 2:41

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Recorded at Columbia 30th Street Studio, New York City, October 1955
Released by CBS / Epic Records as the album "The Ahmad Jamal Trio", Epic LN 3212, 1956
[ Ahmad Jamal Trio ]
Ahmad Jamal - piano, Ray Crawford - guitar, Israel Crosby - bass.

 もうせっかくですから俗も俗、いくら何でも恥ずかしくなるジャズ・スタンダードの代表曲まで採り上げてしまいましょう。原曲「枯葉」はイヴ・モンタン初の映画主演作になったマルセル・カルネの戦後第1作『夜の門』'46主題曲で、原曲の作詞は同作の脚本も手がけたジャック・プレヴェールでフランス映画ですから当然フランス語歌詞でしたが、アメリカではスタンダード曲の名作詞家ジョニー・マーサーが英語詞をつけ、フランク・シナトラ'57年のアルバム『Where Are You?』で採り上げもすればロジャー・ウィリアムズのピアノ・ヴァージョンが'55年に全米No.1ヒットになっています。しかしフランス種の曲をジャズ・スタンダードの代表曲というのは目黒のサンマもいいところで、AA'BC形式を取った短調の小唄ですがフランス人好みのシャンソンではあってもコード進行、旋律ともにアメリカのブルース、循環コード進行のスタンダード曲とはまるで趣きが違う。そういう本来通俗的かつ悪趣味な曲ですがこれをジャズ・ピアノ曲にしたのがラテン・リズムを採り入れた、カクテル・ジャズ・ピアノ(イージーリスニング・ジャズ)の新鋭アーマッド・ジャマル(1930-)で、ジャマルはシリアスなジャズ批評家にはまったく相手にされないピアニストでしたが、ジャマルのヴァージョンを下敷きにマイルス・デイヴィス(1926-1991)が、大手コロンビアとの契約中(アルバム『マイルストーンズ』'58と『ポーギーとベス』'59の間に)、借りがあったインディー・レコード社のブルー・ノートで録音したアルバム『サムシング・エルス』'58で「枯葉」をクインテット編成で録音し、この曲はジャズ・スタンダードとして定着することになります。こういうベタで臭い短調のポピュラー曲をするっと演るのはマイルスの得意技でした。

 大手コロンビアの手前ブルー・ノート社はマイルス・デイヴィス名義では発売できなかったので、アルトサックスで参加し当時マイルスのバンドのレギュラー・メンバーでもあったキヤノンボール・アダレイ(1928-1975)名義で発売しました(アダレイはソロ契約をやはりインディーのリヴァーサイド社と結んでいましたが、リヴァーサイド社の社長はブルー・ノート社を尊敬していたので快諾しました)。しかしテーマ・メロディーを吹いているのはマイルスのトランペットですし、サウンドは完全にマイルス・デイヴィスの仕切ったもので、ブルー・ノート社の記録にもマスターテープ保管庫にも「Miles Davis "Something Else"」としっかり記載されているそうで、「枯葉」の強烈な印象とともにこのアルバムは実際はマイルス・デイヴィスのアルバムなのは早くから認知されています。メンバー名だけをデザインしたジャケットもブルー・ノートならではのセンスですがそういう裏事情があったので、アルバムではアダレイも好演していますがこのアルバムをアダレイの名盤とするのは気の毒でしょう。そして後続の「枯葉」のジャズ演奏は大概が俗気ふんぷんとしたものになるのです。


Cannonball Adderley - Autumn Leaves (Blue Note, 1958) : https://youtu.be/tguu4m38U78 - 10:55

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Recorded at The Van Gelder Studio
Hackensack, New Jersey, March 9, 1958
Released by Blue Note Records as the album "Something Else", BLP 1595, August 1958
[ Personnel ]
Cannonball Adderley - alto saxophone, Miles Davis - trumpet, Hank Jones - piano, Sam Jones - bass, Art Blakey - drums