人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ルー・リード Lou Reed - メタル・マシン・ミュージック Metal Machine Music (RCA, 1975)

ルー・リード Lou Reed - メタル・マシン・ミュージック「無限大の幻覚」 Metal Machine Music (The Amine β Ring) (RCA, 1975) Full Album : https://youtu.be/PB1cEyy0fKs

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Recorded at Lou Reed's home studio, 1975
Originally Released by RCA Records CPDL-1101, July, 1975
Composed, Performed, and Produced by Lou Reed
(Side A)
A1. Metal Machine Music A-1. - 16:01
(Side B)
B1. Metal Machine Music A-2. - 16:01
(Side C)
C1. Metal Machine Music A-3. - 16:01
(Side D)
D1. Metal Machine Music A-4. - 16:01 or ∞
[ Personnel ]
Lou Reed - elctric guitar, keyboards, vocal

(Original RCA "Metal Machine Music" LP Front/Liner Cover & Side A Label)

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 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド脱退後のルー・リード(1942-2013)は晩年まで30作あまりのアルバムを残しましたが、スタジオ録音アルバムの遺作となったメタリカとの共作名義の『Lulu』2011はメタリカのファンの不評を買い、メタリカのアルバムとしては評価・セールスともに最低を記録しました。しかし同作はテーマの上ではルー・リードのソロ3作目の名盤『Berlin』1973の続編であり、サウンド面ではソロ7作目となった本作『メタル・マシン・ミュージック』を継ぐものでした。本作までのルー・リードは順調にソロ・キャリアを築いており、ソロ・アルバム第1作『Lou Reed』1972.6(全米189位)、第2作『Transformer』1972.11(全米29位・全英13位・フランス1位)、第3作『Berlin』1973.7(全米98位・全英7位・フランス13位)、第4作『Rock 'n' Roll Animal』1974.2(全米45位・全英26位)、第5作『Sally Can't Dance』1974.8(全米10位・全英44位・フランス50位)、第6作『Lou Reed Live』1975.3(全米62位・フランス17位)と中堅アーティストの座を築いており、特にデイヴィッド・ボウイがプロデュースした『Transformer』からのシングル曲「Walk on the Wild Side」はヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代と変わらずゲイとジャンキーの世界を歌った歌詞にもかかわらず全米16位・全英10位の異色のヒット曲になり、アルバムもイタリア、フランスでゴールド・ディスク、イギリスでプラチナ・ディスクを獲得しています。時流に乗ったルー・リードが初の2枚組LPとして発表したのが完全なソロ・ギター・アルバムの本作であり、ライヴ盤と見まがうジャケットに2枚組LP64分フィードバック・ギターの轟音が続く本作はまったく世評から無視されました。次作『Coney Island Baby』1975.12は全米41位・全英52位・フランス12位と安定した支持を集めましたが、A面からD面まで16分1秒、D面はエンドレス・カッティング、しかもアルバムのスリーヴには録音データとして、
「SPECIFICATIONS
Sony 1/2 track
Uher 1/4 track
Pioneer 1/4 track
5 piggyback Marshall Tube Amps in series
Arbiter distortion (Jimi's)
Marantz Preamps
Marantz Amps
Altec Voice of America Monitor Speakers
Sennheiser Headphones
Drone cognizance and harmonic possibilities vis a vis Lamont Young's Dream Music
Rock orientation, melodically disguised, i.e. drag
Avoidance of any type of atonality.
Electro-Voice high filter microphones
Fender Tremolo Unit
Sunn Tremolo Unit
Ring Modulator/Octave Relay Jump
Fender Dual Showman Bass Amp with Reverb Unit (Pre-Columbia) white
No Synthesizers
No Arp
No Instruments?

  • 10 db + 57db
  • 20 hz--+30,000 hz
  • 12 kz--+28,000 kz

Distortion 0.02 bass and treble ceilings
Combinations and Permutations built upon constant harmonic Density Increase and Melodic Distractions.
STRICT STEREO SEPARATION
No panning
No phasing
No」
 とだけ記された本作は発表当時、ルー・リードからの悪い冗談とかたづけられていたのです。

 本作はルー・リードの意図通り一見すると完全な反ロックのノイズ・ミュージック作品でしょう。それでも全米では初回プレス10万枚が最大手メジャーのRCAレコーズから発売されたのは驚愕すべきことで、現代音楽のレコードではなくポピュラー音楽として発売されたのです。ルー・リードはのちの3CDボックスセット『Between Thought and Expression: The Lou Reed Anthology』1993に本作を1分32秒だけ抜粋収録したりしましたが、2002年からはトリオ編成でライヴ演奏するようになり、ライヴでは1時間半~4時間以上におよぶ「Metal Machine Music」を披露しました。メタリカとの『Lulu』はその延長線上にあったわけです。
 発表当時ほどの無視や不評ではないにしても、本作は今なお極端に毀誉褒貶が分かれるアルバムで、実験的エレクトリック・ギター・アルバムの極致という絶賛も賛否両論を前提にした上での再評価であり、今さら本作をロックやポピュラー音楽の基準で測る必要はないでしょう。演った者勝ち、やり逃げという感は否めませんが、本作はすっとぼけたジャケット、録音データも合わせてアンディ・ウォホール門下生ルー・リードの究極のポップ・アート作品です。またジャンルを問わずミュージシャンなら一度はこういうアルバムを作ってみたくなるものではないでしょうか。それにはルー・リードほどの音楽的実績がないと不可能でもあり、またこれしかできないミュージシャンには世間は見向きもしないのです。

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by ホンダアクセス