人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

「高崎晃のスーパー・ギタリスト採点表」


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 これはX(旧Twitter)で見かけた音楽誌記事の切り抜きで、時期的に高崎晃さん(1961~)がレイジーを脱退、新バンドLOUDNESSのファースト・アルバム『THE BIRTHDAY EVE 〜誕生前夜〜』(日本コロンビア, 1981.11.25)を発表して熱狂的な反響を呼んだ1982年初頭か、ブラッド・ギルスとジェフ・ワトソンが入っていることからナイト・レンジャー(1982年11月デビュー)が話題の新人バンドだった1983年初頭のアンケートと思われます。高崎さんを含めて現役のハード・ロック~ヘヴィー・メタル・ギタリスト20人、うち大胆にも高崎さん自身を「テクニック」「サウンド」「センス」「音楽性」「共通性」において各10点とした、主眼としては高崎さん自身との「共通性」を重視した採点表ですが、リッチー・ブラックモア(56点)、エディ・ヴァン・ヘイレン(55点)、ゲイリー・ムーア(53点)、ジェフ・ベック(51点)、スティーヴ・ルカサー(50点)と、高崎さんが自身と同等以上としているギタリストが19人中5人だけというあたりに当時20歳の高崎さんの自信がうかがえます。リッチー、エディ、ゲイリー・ムーアは崇拝の対象、「共通性・1」のジェフ・ベックが総合得点では51点というあたりが面白いものです。

 表はトップに高崎さん自身を基準に置いて、あとは総合得点順ですが、最低点がアイアン・メイデンの二人(総合20点、うちテクニック・サウンド・センス・音楽性各5点、共通性0点!)というのは並々ならぬライバル心を感じます。19人の「スーパー・ギタリスト」の人選は音楽誌編集部によるものと思われますが、早い話高崎さんは「アイアン・メイデンは嫌いだ!あいつらとの共通性なんて何もない!」と言っているのです。総合得点30点を下回る19人中下位6人、アンガス・ヤング(30点)、ジェフ・ワトソン(29点+α)、フィル・コリン(29点)、ブラッド・ギルス(25点+α)、アイアン・メイデンの二人(20点)も高崎さんの好みが強く出た採点で、要するにAC/DCデフ・レパードもナイト・レンジャーもアイアン・メイデンも好みでない(ジョン・サイクスも33点+α)、と言うことでしょう。レイジーの結成は1973年、メジャー・デビューは1977年ですから、同期かそれ以下のギタリストは「俺より下」と見ているのかもしれません。

 エリック・クラプトンジェフ・ベックジミー・ペイジ、トニー・アイオミあたりのレジェンド級ギタリストは音楽誌の選択として、ジミー・ペイジ(44点)がマイケル・シェンカー(49点)、ランディ・ローズ(48点)、ニール・ショーン(45点)より下、エリック・クラプトン(39点)とトニー・アイオミ(38点)がイングヴェイ・マルムスティーン(41点)より下、というのはこれまた高崎さんの好みが出た採点です。ジェフ・ベックが「共通性・1」にもかかわらず総合点51点なら、いくらなんでもクラプトン、ペイジ、アイオミがランディ・ローズニール・ショーンより下ということはないでしょう。この場合、マイケル・シェンカーやランディ・ローズニール・ショーンイングヴェイはエディ・ヴァン・ヘイレン(55点)、ゲイリー・ムーア(53点)、スティーヴ・ルカサー(50点)と同様モダンなスタイルのハード・ロック・ギタリストとして参考になる、と高崎さんはプレイヤー的視点で採点しているので、クラプトンやペイジ、アイオミはAC/DCデフ・レパード、ナイト・レンジャー、アイアン・メイデンよりは優れるも、オールド・スタイルのギタリストと考えていらしたのがわかります。

 ジミー・ペイジの「テクニック・6」は「共通性・6」とともに苦笑させられますが、「センス・13」はセンス最高採点(15点)のトニー・アイオミ(「テクニック・7」「サウンド・2」「音楽性・2」!)と並ぶ高得点で、リーダーシップやオリジナリティ、リフ作りの上手さにおいてはレッド・ツェッペリンブラック・サバスを大いに認めるという公正さを強調しているようです。クラプトンは「テクニック・10」「センス・10」「音楽性・10」ですが「サウンド・8」「共通性・1」のせいで19人中下位9人になっており、イングヴェイが「テクニック・12」「サウンド・8」「センス・8」「音楽性・8」「共通性・5」と高崎さんと同じリッチー・ブラックモア信者ゆえに底上げされているのと対照をなしています。ジョン・サイクスとナイト・レンジャーの二人が「音楽性・しらん」とされているのは、要するに人気があるのは知っているが(総合得点+α)、あまり音楽的に興味のないバンドのギタリストということでしょう。

 高崎さん自身もこの40年あまり前の「スーパー・ギタリスト採点表」をご覧になったら若気の至りと苦笑されるかもしれませんが、案外今でも高崎さん自身の音楽的嗜好は変わっていないかもしれません。ひとつひょっとしたらと思うのは、人選にあのお方が含まれていないことで、かつての高崎さんならともかく現在採点してもこの方については文句なしにこうなると思います。
ジミ・ヘンドリックス
テクニック・25
サウンド・25
センス・25
音楽性・25
共通性・1
総合得点・101