人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ヤツメウナギのお嬢様

…アリバイの片棒担いでくれる里霧の友人、もちろん会ったことはないがこのお膳立てには既視観があった。そうだ、ヤツメウナギのお嬢様だ!里霧の友人で、町田屈指の名門だという。なるほど町田ともなると人獣(魚だが)に区別はないらしい。合点のいく話だ。
駅近くの出入口で水中呼吸できる薬を飲み、町田の下水道交通路の見事さに感嘆しながらヤツメウナギ執事の案内で水中を潜り地上に出ると、そのまま歴史の古そうな和風旅館だった。さすが町田だ。
ヤツメウナギお嬢様は中肉中背の人間の女性といったところで、ヤツメウナギとしてはさぞかし美人なのだろう。和風を着ているのは体がずんどうだからだろうが彼女の種族にはよく似合う。高価そうで趣味のいい和風だった。
通された部屋で里霧とぼくは半年ぶりに体を合わせた。ぼくたちはぼくの部屋以外でするのは初めてだったから、緊張と興奮の両方を感じていた。…ぼくたちがラウンジに出ると、里霧の友人がお茶を飲んで待っていた。お嬢様と里霧はこれから夕食に出かけるのだ。
三人で雑談していると、今日のお礼にぼくが今度お嬢様のお相手を務める話が決まっていた。里霧は嫉妬深い方だが自分の友人で魚類ならば構わないらしい。その代わり里霧もお嬢様のボーイフレンド(ヤギだそうだ)の相手を務める。哺乳類なのがちょっと納得いかない不公平を感じるが…そもそもぼくはいかに美人(?)とはいえヤツメウナギとセックスしたいのか?
…だがその日が来た。私に任せてね、と全裸で水中ですることになった。お嬢様は始めた。本当は怖かった、噛みきられそうで。とんだ失礼だった。お嬢様はまるで嵐のようだった。口の中に別の生き物を飼っているとしか思えなかった。呆気ないぼくの液体をお嬢様は水中に一度吐いて確かめ、また飲み込んだ。
お嬢様はニッコリすると、下半身をぼくの体に巻いた。瞬時にぼくはお嬢様に吸い込まれた。危うく意識を失いそうになった。一滴残らず絞り尽くされた。
「気持良かった?」
「はい、とても」
「また会いましょう。私も楽しかったわ」
「ありがとう。機会があれば、こちらこそ」
その後ぼくは誘いを遠慮しし通した。また誘いにのったら戻れない気がしたからだ。里霧もヤギの青年と約束を果たした。
「小さくて全然だめ。いい点は早くて短いだけね」