人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

詩人・山本陽子

 今では見る影もないが、かつての「現代詩手帖」はキャンプな雑誌だった。これと「映画評論」「新劇」のバックナンバーは探す価値があった。
 雑誌といえど作品と批評のアンソロジーと見れば書籍に劣らない重みがある。もちろん目玉になる作品あればこそだが。
 1964年生まれの筆者だが子供の頃感じていた大人の世界のもやもやした感じを晴らしたい気持がある。これはノスタルジアとはまったく別の感情だ。

 「現代詩手帖」70年10月号、これはすごい。巻頭にパウル・ツェランの遺稿詩集「迫る光」の抄録があり、当時のアイドル詩人・金井美恵子と中堅・岩成達也、新鋭・支路遺耕治の新作と別役実の短篇小説(!)があり、さらに同人誌から山本陽子の長篇詩が転載されている。故人にとって生前に唯一商業誌に掲載された代表作でもある。山本陽子については次の2つのサイト記事を参照されたい。

・2001年5月3日ほっとポエム展「山本陽子http://www.shimirin.net/yamamoto/yama_i.html

・「山本陽子の地平」http://www.asahi-net.or.jp/~md5s-kzo/youko.html

 山本陽子の作品引用の前に先駆的詩人として那珂太郎・馬淵美意子を挙げ、戦前のアヴァンギャルドに左川ちかを紹介し、同時代詩人では支路遺耕治を比較対照に引用する、ということも考えた。全編引用の紙幅はないし、抄出しようにもまとまった意味を形成するスタンザがない。冒頭から転載して文字数制限で強制終了であきらめるしかない。
 先に紹介した両サイトは共に山本陽子のプロフィールと作風を伝えて余すところがないが、一応ここでも最小限のプロフィールには触れておこう。1943年生、美術大学中退の後66年に詩と思想の同人誌「あぽりあ」に参加。70年「あぽりあ」8号掲載の「遥るかする、するするながら?」が「現代詩手帖」10月号に転載。ビル清掃に従事しながら「あぽりあ」のみに作品を発表。77年生前唯一の詩集「青春~くらがり」を吟遊社から刊行。82年蔵書を処分、作品発表も途絶。84年(推定)8月29日肝硬変で死去。享年41歳。85年同人仲間らによって「山本陽子遺稿詩集」刊行。89年~95年「20世紀最大の詩人」という肩書きで漉林書房より「山本陽子全集」全4巻刊。
引用は次回に送りたい。