人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

The Velvet Underground(2)

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デビュー当時にケチがついたのがVUのその後の不運にずっとつきまとう「ニューヨークの変でスノッブなバンド」というイメージだったようだ。当時は戦後生まれのベビー・ブーマーによるフラワー・ムーヴメント大全盛、ヒッピーの連帯による平和革命が時代思潮となりドラッグによる意識拡張がコミュニケーション・ツールとして活用された時代だ。
VUはあらゆる面でその裏面を提示した。ヒッピーではなくジャンキー、SMやオカマ、狂気、孤独と死。これはニューヨーク圏の都市生活者のファンをつかむことはできたが、全国的にはVUをニューヨーク・ローカルのバンドにとどめることになった。
VU同様アンチ・ヒッピー的な姿勢を貫いたが全国的な人気を博したバンドにフランク・ザッパ&マザース・オブ・インヴェンションとドアーズがある。ヒッピー系バンドのほとんどはサンフランシスコを根城にしていたが、マザースとドアーズは生き馬の目を抜くロサンゼルス出身、ミュージシャン・シップにせよ独創性にせよアルバムの完成度にせよ格が違っていた。VUに欠けていたのはプロのミュージシャン・シップである。マザースやドアーズは時にはやり過ぎを指摘されるほどヴィジュアル性の高いステージに定評があったが、VUといえば全員がサングラスに普段着、演出めいたものはアンディ・ウォホールの関係者による照明だけだった。全員サングラスなんていう無愛想なバンドはVUを元祖とする。
バンド自身がデビュー当時はパトロンのウォホールの後援で生活していたようなもので、デビューさせたらウォホールは飽きてしまい、独り立ちしたバンドはとたんに経済的困窮に立たされることになった。
だいたいVUはドラマーがメンバーの友だちの妹だったり、売れないフォーク歌手に新進現代音楽家(ヴィオラ、ベース、オルガン)と知り合いのギタリスト兼ベーシストという素人集団で、外見的にもロック・ミュージシャンらしいメンバーは誰もいなかった。どっちみちプロモーションされていないから誰も写真を見たことない。暗闇の中で謎めいたものが蠢いている、そんなイメージだった。
VUがロック史上特筆すべき影響力を持つバンドになったのは、ルー・リードの作詞作曲歌にもよるが、ジョン・ケイルが現代音楽から持ち込んだ「史上最大汚くて単調なサウンド」が大きい。(次回完結)