前回に続く。
「な、繩ですか(笑)…」
「な、繩です(笑)。そういう会員制秘密クラブを作りアトリエでショーを開いている商売の方々がいるんですよ。東京圏だけで数名。インタヴューした縁で忘年会にも呼ばれ奴隷女性のかたにお酌をしていただきました。
ジャンル問わず一応どなたもフランクではあるんですよ。ただ、どうせならこちらを手玉にとってくれるくらいであってほしい。
高校生の時ミック・ジャガーのインタヴューを読んで、自分にも他人にも容赦ない発言ばかりで一驚しました。「今度のアルバムは悪くないね。その前のがひどかったから。だけどSome Girlsほどは良くない。まあGoat Head Soupなんか糞だったからな」ぼくは「その前のアルバム」EmotionalRescueも愛聴していましたから、自作批判するアーティストの存在にびっくりしました。
9.11直後のインタヴューなども見事でしたね。テロの話題から入ろうとするインタヴュアーに「新作についてのインタヴューだろ?事件について語るとしても、別にすべきだろう」と正当に受け流し、一応サーヴィス心からかインタヴュー末尾でワールド・ミュージックに触れて「異文化への理解こそ大切だね」と、そつないこと。
ぼく自身が相手の器量を引き出せなかったという反省はもちろんあります。でもミックほど百戦錬磨の人に当ったら廃業してたな(笑)」
「私は彫り物も繩も、痛いのは苦手です(笑)」
「ぼくも痛いのは苦手です(笑)」
「作品を手もとに残さないのはなぜ?」
「スペースがない、執着がない、作品よりも執筆自体が大事、はひとまずぜんぶ。新規の取引先へのサンプルならどれか最新号を持参すれば足りるし、実際にはぼくの仕事を見て依頼してくるのだからサンプルの必要もありません。
なぜファイルすら残さないか。ぼく自身が読み返さないからです。技術的な理由(自分の意図した効果が出ているかの確認)で見本誌を2回くらいは読み返し、雑誌全体のカラーを確かめ、他の執筆者の記事も読みます。
読者が買うのはぼくの取材記事ではなく、なによりまず雑誌本体の全体です。ブログのアーカイヴの方がまだ電子書籍に近い感じがします。
本来文筆にプロもアマもないのは当然です。歴史的にも本質的にも。…それを語ると話が拡がりすぎるので、この話題はここまでで」