上に掲げたアルバム・ジャケットを見ただけでいやーな予感がする人も多いかもしれない。順にアシュ・ラ・テンペル「アシュ・ラ・テンペル」(1971)、ファウスト「ファウスト」(1971)、アモン・デュール「サイケデリック・アンダーグラウンド」(1969)でそれぞれのバンドのファースト・アルバム。どのバンドもメンバー・チェンジや改名をしながら2011年の今も現役。ドイツのバンドはしぶといのだ、と再び念を押しておく。まあ理由は簡単で、メンバーがつぎつぎ停年を迎えて積年の怨みを晴らしに来たのだ。
ファウストなんかすごいことになっている。メンバー2人しか残ってないのに図々しくバンド名を掲げたままなのもおそれいるが、担当楽器・ゴムホース(だったっけ?)1名、チェーンソー(これは確か)1名、演出=発煙筒と、幻の伝説的バンドの来日をこわごわ観に行った人たちはみんな泣いてしまったそうだ。曲らしいものは1曲しか判別できなかったらしい。
前回のジャーマン・ロック「清楚な世界」編でジャーマン・ロックはみっつの流れがあり、ハード・ロック、アヴァンギャルド・ロック、クラシカル/フォーク・ロックと解説した。ユーロ・ロック愛好家にはジャーマン・ハード・ロックはあまり人気がない。ドイツのバンドならではの特徴に欠けるからだ。それでも東ドイツ(!)を始めとして旧共産圏では需要があって、それなりに国際的な知名度のあるハード・ロック・バンドも多かった。ユーロ・ロック愛好家に人気があるのは一見正反対なアヴァンギャルド~とクラシカル/フォーク~になる。
もうおわかりいただけたと思うが、ジャーマン・ロック「面妖な世界」編はアヴァンギャルド・ロック編になる。クラシカル/フォーク~との共通点と言えば、英米規準では「こんなのロックじゃない」といったところか。それだけに今回の3枚も愛好家には必携のアルバムと高い評価を受けているのだ。
前回の3枚にはアンサンブルの手法や清楚な女性ヴォーカルという以外、発想の面では共通点はなかった。今回はある。これまで何度か紹介しようとして失敗してきたロック史の裏番長、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの影響をコテコテに受けているのだ。3枚とも実質的にLP片面で1曲、40分で2曲。カン、グル・グルなどのバンドも同様で、ジャーマン・ロックの特異な点はそこにある。