人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

真似句亭日乗(10)出版業界回想9

「風俗っていろいろあるんですね!でもなぜこうした仕事に就かなければならないほどお金に困ってしまうんですか?」
「第三者に負わされた膨大な借金です。その道のプロがいるんですよ、組織所属の。そこらへんで遊んでいる女の子をひっかけ高級マンションに住ませ贅沢三昧させる。いわゆる「シャブ漬けにする」(オーガズムが30分以上続くそうです)。すべて彼女名義で借金したりツケにして、十分に問答無用の借金が貯ったところでお店に売る。業界用語で言うと「風呂に沈める」。とりあえずこれがソープへの典型的な就業ルートです。他の業種についてはこれほど人身売買的な強制雇用が行われません。
日本のピルは強いのかどうか、1日5人と2回(これがソープの基本)ずつするわけですから他にもいろいろ不妊に関する処方を受けているかもしれない。低い声や顔の輪郭などホルモン異常は明白です。年に3か月のピル抜き休暇も納得できる。仰向けになっても形の崩れない乳房は塩水パックの整形で、血は通っていないから触るとひんやりしてる。装身具は一流品を揃え、全身に美容整形し、ストレスは浪費で紛らわし、さらに借金を重ねる。お店でトップか、さらに高級な系列店に移るには自分に投資しなくては、という強迫観念が働く。心理学ではこれを「負のスパイラル」と呼びます。
異様だと思いますか?それとも普遍的だと思いますか?」

「小さな映画館、子供の頃父が会社からもらってきたチケットで一家で見に行ったのを思い出しました」
「そうですか。いいなあ。いわゆる株主優待券というやつですね。
今の映画会社ではよほどの超大作でもない限り、株主優待券など出ないでしょう。昔の名前で大手映画会社が残っていても、作っているのは映画会社じゃなくて臨時編成の下請け制作委員会。40歳前後が「町の小さな映画館」で映画を見た経験のある最後の年代かな。今の都市部では配給形態が変って、複合型映画館=シネコンと呼ばれるものになっている。それに較べると出版業界はどうか?電子メディアに持って行かれてしまって、もう取り戻せない部分も多い。
ライター稼業と発症の関連性は、ぼくの場合はっきり「ある」と思います。もともと父方が躁鬱の血統の上に、あまりに不規則で苛酷な職務に就いてしまった。とにかく主治医の指示通り、自分に「休め」と言い聞かせています」