人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

夜ごと太る女pt2・不倫大国篇

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夜は冷えるので冬場は昼のシャワーにしている。湯上がりにテレビ放映の「マッド・マックス」を見ていたら、CMでいきなり「不倫大国・日本!そんなあなたに…」と羽毛布団、「これでぐっすり眠れます」。なんだ、不倫じゃなくて不眠だったのか。こんな聞き違いをした自分が情けないが、まぎらわしいCMが悪い(ちなみにぼくの相手は、すぐ眠ってしまう女性だった。短い逢瀬のなかで、眠りの時間も彼女にはとても大事だった。それは倦怠と満足と罪悪感の混じった時間だったのだろう)。
なにしろ不倫が発覚(毎日車のメーターと携帯電話をチェックしていたそうだ)してから数か月は、彼女のご主人は毒殺を恐れてお弁当を捨てていたという。半年間は電話もメールのやりとりもしなかった。もう終ったつもりでいた。
病院のアルコール依存症科からの同窓会の通知に、ぼくは彼女に出席しない旨のメールを送った(彼女のアルコール依存症は治らなかった)。彼女とぼくの退院後の関係はなぜか彼女の主治医に知られており、ぼくのことは「あんな最低の男」と言っていたという。
彼女は主治医に知らせたのはぼくだと疑っていた。ぼくは彼女の主治医が誰かも知らない。それが誰かは解らないが、ぼくではない。折り返し送られてきたメールは熱烈なラヴ・レターだった。47歳の男に40歳の女性が送るラヴ・レターとはこういうものなのか。会えない分だけメールを重ねるごとに内容は露骨にセクシュアルなものになっていった。彼女はぼくを真似て俳句も作った。

『庭と愛犬と私』
・また私アル中になってしまいそう
・アル中もそんなに悪いものじゃなし
・うちの犬道行く人が皆「かわい~」
・うちの犬私の口にディープキス
・うちの犬私の耳に舌入れる
・うちの犬夫婦の愛に吠えまくり
・うちの犬あなたの化身かと思う
・庭いじりしないと夫不審がる
・花の苗一緒に秘密植え込んで
・あなたにもいじって欲しい私の庭

「あなたからのメールを読むと子宮が疼く」と言われ、画家の友人に訊いてみた。ぼくを「お兄様」と呼ぶイカれた女性である。
「疼きます。腰が抜けるのです」と返信がきた。ふたりとも妊娠中絶をきっかけに精神疾患になっている。まるで一時期流行ったケータイ小説のような人間関係に疲れて、昨年の今ごろぼくは入院したのだった。