人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ジュール・ラフォルグ『日曜日』

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 ジュール・ラフォルグ(仏・1860-1887)はボードレール影響下の象徴派後期の詩人で無韻自由詩の創始者のひとり。シェークスピアに傾倒、諧謔に富む作風と大胆なパロディ手法で20世紀の詩にも影響が大きい。近代詩上もっとも夭逝が惜しまれる詩人のひとりといえる。

『日曜日』

要するに私は「あなたを愛しています」と言おうとして
私自身が私によくわかっていないことに
気づいたのは悲しかった
(その「私」とはピュグマリオンを迷わせているガラテアで
私にはどうにもならないことだった)
(…)

そして、それから一年たった今夜、風の魔女たちが
戸口のすきまから、ひとりでいる者に災いあれ
と叫びに戻ってきた
だからといってどうということはない
私はもっと前にそれを聞いてたまらない思いだった
もう遅くて、私の小さな狂気は死んでしまった
ひとりでいる者に災いあれ、はどうしようもない
私は私の小さな狂気を取り戻せはしないのだ
(…)

私はあなたの宝石のような体や、よく響く心を
喜んで滅茶苦茶にしてあげるのに
そしてそれに何の意味があるか
またそれを、しかもふたりで
どうやって使えばいいかあなたに教えてあげるのに
もしあなたが、後で少しでも私がどんな人間か考えてくれるのならば
いや、いや、それは選んだ心の持ち主の体を吸い
不治の病にかかった器官を崇拝し、そのうちに
偏屈が進んで世捨人になり体の弱り出す前に
たがいに相手の姿を垣間見ることなのだ

そして彼女の体が私にとってすべてではなく
彼女にとって私が偉大な心の持ち主だというだけではない
ただふたりでどこかに行って
一緒に仲良く羽目を外したいというだけなのだ
魂と体、体と魂
それは、女に対して少しでも男として振舞うという
エデンの園の誇りに満ちた精神なのだ

ただしそれまであなたは軽はずみなことはしないで
糸をつむいではお祈りして、身持ちよくお暮らしなさい

ところで、きみもしょうがない詩人じゃないか
とじこもってばかりいると病気になる
こんなに好い天気で、家にいるものなど誰もいないのだから
薬屋まで熱冷ましでも買いに行きなさい
それだって、少しは運動になる
 (詩集「最後の詩」1887より・吉田健一訳)