人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ドヤ顔の賛否両論

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全国に点在しますが、ドヤ(ドヤ街=ヤド)とは保証人を立てられない日雇い労働者の宿泊施設です。アパートより高いが旅館よりは安く、住民登録できる。すると生活保護申請できる。それが通ると事情の限り働かずに済む。朝から路上で酒を飲んでいる。それが「ドヤ顔」です。横浜では寿町というドヤ街があります。歌舞伎町ほどの面積もありません。生活保護人口の多さは、横浜の生活課が本庁以外に寿町にも分署がある事で見当がつきます。
ぼくはアルコール依存症の学習入院でドヤ街からの数人のアル中・鬱病患者と知り合いました。犯罪率は高く、刃傷沙汰に巻き込まれる危険も大きい。それに普通のアパートより宿泊料金は高い。でもドヤの人はあまり幸福な事情で流れてきた人はいない。
ドヤ暮らしの人は家出したり、服役を終えたばかりの人なんかも多い。保証人を頼める親族もいない。なんだ、ぼくと同じだ(笑)。そういう身寄りのない人は不動産屋指定の保証人協会に加入して賃貸契約する。真面目な人はお金を貯めて敷金・礼金・前家賃・保証人協会加入金がまかなえたらドヤ街を出て行きます。契約金と家賃が保証人協会分加算されるわけです。
去年「ドヤ顔」が流行り言葉になったのは、関西の芸人には飲酒出演して目の回りにクマをつくっているような人が多いんですね。それでそういう人に「またドヤ顔やんか」とツッコむことからのようです。
西日本では差別は露骨で、たとえば身体障害者を「身障」と呼びます。本人たちが自分たちを身障、統失と呼ぶことはあります。しかし第三者が比喩表現として健常者をハンディキャップを持つ人たちになぞらえる時は弱者差別に他ならないわけです。
スラム暮らしのアル中=ドヤ顔、というのも同じ発想です。これはドヤに住む人たちへの二重の差別になっています。(1)ドヤの住人はみんな無職のアル中だ、(2)飲酒して仕事に出てくるような人間はドヤの住人と同じだ。
それにしても拘置所やドヤの人は囲碁将棋が半端じゃなく強い(笑)。それとやはり鬱病入院の人は真面目でした。総じて自分の過去は一切語らず、こんなにご飯がおいしくて、安心して眠れて嬉しい、と噛みしめるように話していました。
神なき国では、ハンディキャップを持つ人でも尊厳を認められるとしたら「金」しかないでしょうね。しかしそれは現実ではほとんど不可能です。