人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

裸のラリーズ『夜、暗殺者の夜』

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 裸のラリーズ(活動期間1967-1997?)は水谷孝を中心に京都で結成された。60年代は京都で、以後は水谷のみがメンバーを補充しながら(村八分とも共演)東京に活動拠点を移した。その長く特異で匿名的なバンドの歴史は以前にも記事にした。今回はラリーズを歌詞の面から改めてご紹介したい。

『黒い悲しみのロマンセ』

こんな夜更けに誰をさがして
お前はひとりで駆けてゆく
水平線の向うに見えている
めくるめくかがやきを
あるいは私自身を
何もかもが吹き荒れる風に
波にのまれてしまわぬうちに

夜風の波のすすり泣き
お前の海を見守っている
誰を追いかけてこんな夜更け
お前はひとりで駆けてゆく
水平線の向こうで待っている
めくるめくかがやき
あるいは自分自身の-
 (アルバム「Mizutani」1991より/作詞・作曲水谷孝/録音1973)

 実際に聴いていただければ(ラリーズのCDは海外プレスの逆輸入盤以外入手が難しいが、YouTubeに多数アップされている)ラリーズの音楽はジャックス直系なのがわかる。水谷孝は声質や唱法まで早川義夫に似ている。
 ところで、ラリーズは曲目表記すらしないこともあるほどで、当然歌詞カードなどない。そこにノイジーサウンドと素人録音なので、なんとか2曲の聞き取りができた。ラリーズの歌詞聞き取りを載せていたブログのかたの記事に助けられたところが大きい。

『夜、暗殺者の夜』

とても深い夜
まるで誰かを殺したみたい
何かがお前の飢えを満たす
誰かがお前を夢に見る
だけどお前は誰をも夢見ない
何かがお前の飢えを満たす

沈黙の鳥は飛び去った
夜の言葉は溶けおちた
誰もお前が留まることを
望んではいない

黒い恋人たちは
すべてが死んだ岸辺にたどり着く
すでに黒い烙印を刻みつけられた
お前の両手に血の川を渡り
虚無の一滴を飲み干したとき
お前に最初である名前が名づけられるだろう

お前はおれの傷口 おれは誰かを殺すだろう
やさしい暗殺者の とても深い夜
 (アルバム「'77 Live」1991より/作詞・作曲水谷孝/録音1977)

 この歌詞はボードレールだろう。この頃からラリーズはジャックスの影響からさらに曲はポップ、サウンドはノイジーという方向に向かう。