人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

借金について( 日記1月2 6日)

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平成24年1月26日(木)。昨夜は3時近くまで夜更かししたのに朝は6時に目が覚める。昨日クワバラくんと会ったからかもしれない。彼は今年40歳になるが、調子はだいぶ悪そうで、糖尿病ならではの生気のない表情と緩慢な動作だった。
クワバラくんとぼくは入院の頻度は同じくらいで、奇しくも去年の夏に盲腸で入院したのまでなにかと似たような生活を送っているが(ぼくは点滴で散らしたが、彼は切ったそうだ)、ぼくなど彼より8つ上なのに幸い成人病とは現時点では無縁に生きている。
離婚・入獄・前科者・発症・生保と、彼もぼくと同じような路をたどってきているが、内実はかなり違う。貸したカネを取り返す、という名分はあったがそれに乗じて強盗傷害(正確には致傷)したのは自業自得だった。よくわからないうちに獄中離婚になった。
それから8年、別れた奥さんとご子息に会ったのは一昨年の子息の小学校入学のお祝いで食事をしたきりだ。「新しいパパ?」と生後1ヵ月で別れた息子さんには訊かれたそうだ。
「よく人に訊かれない?別れた奥さんと復縁して一家で暮らしたいか、って」
「訊かれますね」
「どう答えてる?おれは、娘たち次第だって答えてる」
「再婚はしたいな…」
「本音は?」
「…復縁したいです、息子と一緒に。素人の女はあいつが初めてだったんですよ。知り合ったその日に…処女でした」
「可愛かっただろうね」
「可愛いかった!1ヵ月後に結婚して、公団の3LDkにも当って、結婚2ヵ月目には妊娠もわかりました」
「それで事件を起こして結婚1年、赤ちゃん1ヵ月で離婚?速い人生だね」
それから8年。あるいは一生つづく公算が大きい8年。ぼくはクワバラくんをどうこう言えない。ぼくは人から借りたお金は必ず返してきたが、貸したお金を少しずつでも返してきたのは彼が初めてかもしれない。実は昨年、また彼から借金追加の頼みがあり、残金2万5000円は返さなくていい、その代わり今後は一切貸さない、と突っぱねたのだった。それから彼の入院を挟んで半年が過ぎたが、彼はどうしても返したい、と返しに来た。
お金を貸したほうが肩身が狭いのはなぜだろう?それはクワバラくんもぼくも本当に貧しくて馬鹿正直だからだ。相手の好意を尊重して分割でも返済する立場のほうが、好意を楯にして取り立てる権利を持つ立場より立派だからなのだろう、と思う。