人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

米アンダーグラウンドの男色映画

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

前後篇に分けてご紹介したい。この前篇は後篇のための前振りで、後篇の主役ケネス・アンガー(下)こそがアメリカのエクスペリメンタル(実験的)アンダーグラウンド・ゲイ(Queerと呼ばれる方が多い)・シネマ空前の大物だった。そのキャリアは1947年(17歳!)~現在に及ぶ。
なのでアンガー以前のアメリカのアンダーグラウンド・ゲイ映画にはどんなものがあったか、というのが今回の主旨になる。

アンダーグラウンドを区別する前にはまずメジャーを知らねばならない(これは基本)。トーキー初期の映画界は「フランケンシュタイン」のジェームズ・ホイール、「フリークス」のトッド・ブラウニングなどショッカー(恐怖映画)の大幹部が次々と悪夢を世間に送り出していた(「キング・コング」1933もその流れ)。エログロ怪奇映画は今日まで立派な映画史の表通りなのだ。
ではさぞかしエグいのが、と障害者差別映画「フリークス」のゲイ版はあるか探してみたが、倫理コードは残酷描写より政治と性に厳しいのだった。これは現代でも程度の差や描きかた次第とはいえ変わらない。端的に言って民主主義と資本主義以外は否定せねばならず、近親相姦と幼児性愛と同性愛は暗示すらタブーだった。よってメジャー全滅。

しかしようやく見つけました。ジェームズ・シブリー・ワトソン(James Sibley Watson)とメルヴィル・ウェバー(Melville Webber)の実験映画作家コンビで、もちろん自主制作だ。2作見ることができた。

・'The Fall Of The House Of Usher'1928「アッシャー家の崩壊」(上・13分)
これは独仏から数年遅れの実験映像作品で、一応ポオの短篇が原作だが13分は短かすぎた。サイレント。ゲイ映画は次の作品。

・'Lot In Sodom'1933「ソドムのロト」(中・27分)
旧約聖書が原作。トーキー。男色の都ソドムが神の怒りに触れて滅ぼされる(ロトはそれを警告した預言者の名前)。全編腰布一枚の男たちが抱き合ったり寝そべったりする男色描写がクライマックスの都市炎上まで延々続く。女はロトの妻(ワトソン監督夫人)と娘(ロト役俳優の実娘)しか出てこない。明らかに男性ヌードが目的の作品だ。まあ映画史の珍品というところか。