人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ルイーズ・ブルックスという女優

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今回はデータの引用に徹する。紹介作品は古典映画として国内版DVDも出ているし、YouTubeで全編視聴できる。80年前の著作権消滅作品だからだ。まるで戦前ブルースのレコードのようだが、まさしくこれらはベッシー・スミスの時代に人気を博した映画でもある。しかし今回は作品ではなく女優にスポットをあててみたい。記事の冒頭に映画ポスターとスチール写真が載っているでしょう?この人が、シュトロハイム(サイレント時代の大監督)すら載っていないウィキペディアにすら載っている、女優ルイーズ・ブルックスさん(本名Mary Louise Brooks/1906-1985・カンザス生れ)なのです。

彼女の名前を知らなくても、特に女性は写真を見ておおっとなるのではないか。サイレント時代の女性ファッションはフラッパーと総称されたが、今は様々にアレンジされているこの髪形は彼女(と専属ヘア・デザイナー)がオリジナルなのだった。戦後映画でも彼女をイメージさせる役柄の女優はこの髪形をすることになっていて、一番の成功例はゴダール女と男のいる舗道」1962で薄幸の娼婦を演じたアンナ・カリーナだろう。

ルイーズ・ブルックスはレビュー等を経て25年に映画界入り、28年のH・ホークス監督「港々に女あり」(コメディ)、W・ウェルマン監督「人生の乞食」(メロドラマ)の2作でブレイクする。そしてドイツへ渡る。マレーネ・ディートリッヒと逆だ。
そこで彼女は決定的な3作の映画に主演する。G.W.パプスト監督「パンドラの箱」「淪落の女の日記」「ミス・ヨーロッパ」1929-30だ。これらは背徳的な内容で大反響を呼び映画史に残るヒット作となったが、逆にファシズムに向かうドイツではパプストらに逆境をもたらした。

筈見恒夫「映画作品辞典」1954から引こう。
パンドラの箱'Die Buchse der Pandora'(独,ネロ,1929)ヴェデキントの同名戯曲をG.W.パプストが監督したもので、世の中にあらゆる悪の芽を蒔き、男という男を堕落させた、パンドラの箱のごとき妖女ルルを、アメリカ女優ルイズ・ブルックスに演じさせた。ルルはロンドンの魔窟で殺人鬼によって悲惨な最後をとげる。パプスト独自のエロチシズムと鋭い描写にみちた作品である。

決して大女優ではないのに誰もが忘れない。そういう人なのだった。