映画紹介を読むととにかくすごい映画らしいのだがタイトルの読み方が解らなかった。判ったのはラジオの音楽番組からで、戸川純在籍「ゲルニカ」の音楽監修は元「8 1/2」の上野耕路氏で、「8 1/2」自体は短命バンドだったがメンバーはヒカシュー、ハルメンズ、戸川純&ヤプーズで先鋭的な活動を続けている、ということだった。もちろんバンド名はフェリーニの映画からだ。「はっか・にぶんのいち」。そう読む。
○8 1/2(1963年イタリア、B&W・132分、監督・脚本フェデリコ・フェリーニ、音楽ニーノ・ロータ=画像1) 「人生はお祭りだ。一緒にすごそう」43歳の著名な映画監督グイド(マルチェロ・マストロヤンニ)は新作の構想と療養のため湯治客でにぎわう温泉地にやってくる。冷えきった妻との関係をはじめ一向に定まらない映画製作と出資者に接する苦痛が積もり、しばしば悪夢に襲われる(画像2)。公私ともに悩みの尽きない彼の脳裏にしばしば幼少時の記憶や美少女の幻影がよぎり、いつしかグイドは自分の理想の世界へと現実逃避する。やがてストレスが頂点に達したグイドは、巨大な宇宙船発射台の屋外セットの前で…(画像3)。イタリアの誇る世界的巨匠フェデリコ・フェリーニ(1920-1993)最大の野心作にして最高傑作。アカデミー賞外国語映画賞・アカデミー衣裳デザイン賞・ニューヨーク批評家協会外国語映画賞受賞作。日本公開昭和38年2月・キネマ旬報ベストテン1位。
(各種データベースより)
受賞が控えめなのはフェリーニはすでにヴェニス映画祭・サン・マルコ映画祭(「青春群像」1953、「道」1954)、アカデミー賞外国語映画賞(「道」「カビリアの夜」1957)、カンヌ映画祭主演女優賞(「カビリアの夜」)、カンヌ映画祭グランプリ(「甘い生活」1959)と、40歳で映画界の頂点にいたからだ。キネマ旬報ベストテンでも「道」1位、「カビリアの夜」7位、「甘い生活」1位を受賞している。
ちなみにタイトルはこれがフェリーニにとって8本半目(処女作が合作だから1/2)の長篇映画だから。主人公の年齢も含めて、架空の自伝的設定がこの映画のトリックになっている。
ではどんなトリックか。それを明かしてもネタバレのそしりは受けないだろう。決定的に作品の視点が反転するショットが1か所ある。そのくらい実は理詰めで出来ている映画なのだ。
(次回完結)