人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(21)なぜか稀少な女性歌手バンド

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なぜかイタリア70年代ロックには女性ヴォーカルのバンドが少ない。第13回で取り上げたヤクラとオパス・アヴァントラは女性ヴォーカルだが両者とも全然普通のロックじゃない。今回の3組もサーカス2000は通常のバンド編成だがサン・ジュストはアシッド・フォーク、ピエロ・リュネールに至ってはアヴァントラをしのぐ前衛現代音楽アンサンブルだ。
同時代の他国のロックを展望するとジャニス・ジョプリンの影響が非常に強く、アフィニティ、ストーン・ザ・クロウズ(英)、フランピー、ジョイ・アンリミテッド(独)、リベロ+アルプ、サンドローズ、アース&ファイア(蘭)、サヴェージ・ローズ(丁)など熱唱型女性ヴォーカルをフィーチャーしたバンドにこと欠かない。だがなぜかイタリアにはソロ歌手はいても女性ヴォーカルのロックバンドは極端に乏しい。ソロ歌手もロックとは言えない。80年代のマティア・バザールが成功例だが時代区分も音楽的にも範疇から外れる。

理由は不明だが、日本でもカルメン・マキ、金子マリなどのジャニス系女性ヴォーカリストはデビューが遅かったように「受け皿」がなかったのかもしれない。サーカス2000は最近映像を見たが、オーケストラとの共演やフェスなど結構活躍していたようで、デビュー作「サーカス2000」1971と第二作「エスケープ・フロム・ア・ボックス」1972(画像1)だけで解散とはちょっと解せない。74年頃まで活動していてもおかしくはなかっただろうと思わせる。ジャニスというよりはジェファーソン・エアプレイン系の女性歌手サイケデリック・ロックでシルヴァーナさんも細い声量で英語詞を歌っているが、全5曲聴くとキンキンした発音に英語ネイティブじゃないなあ、と感じる。美人さんだから映像込みの方が楽しめる。

サン・ジュストは73年に同名アルバムでデビュー(画像2)、翌年発表の「湖畔の家」を最後に女性歌手のジェーン・ソレンティはソロに転向。ジェーンさんは第7回・第18回でご紹介したカリスマ・カンタウトーレ、アラン・ソレンティの妹ぎみで、作風はずばり兄譲りの不気味耽美フォーク・ロックです。

ピエロ・リュネールは74年デビュー(画像4)の現代音楽ユニット。女性ヴォーカルが加入した「グドルン」1977(画像3)のメカニカルな衝撃度には唖然とする。いわゆる「歌もの」をはるかに越えている。