人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

テレヴィジョン/ T・ヴァーライン

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パンク/ニュー・ウェイヴのバンドの中でもテレヴィジョン~トム・ヴァーラインにはひときわ強い愛着があります。デヴュー作の日本盤帯には「ドアーズに比較される強烈な個性!」とありましたが、むしろ裸のラリーズに近いサウンドといえます。共にルーツはヴェルヴェッツでしょう。ガレージ・パンク系のバンドでギター・ソロが5分以上続くなんてテレヴィジョンとラリーズくらいなものです。

テレヴィジョンは77年のデヴュー作「マーキー・ムーン」(画像1)で全英8位、78年の第2作「アドヴェンチャー」(画像2)全英7位とイギリスで高いセールスをおさめて解散しました。ギャング・オブ・フォー、U2、エコー&ザ・バニーメンへの影響の大きさは当時のUKパンクとはまったく違うサウンドだったからでしょう。ラリーズ同様平均年齢が高く、60年代のガレージ・パンク/サイケに強い影響を受けて70年代パンク・シーンにデヴューした、いわば遅れてきたバンドだったのです。ロックの歴史をよく咀嚼している点ではラリーズよりテレヴィジョンに軍配が上がります。
画像3は82年にカセットのみでリリースされたメンバー公認ライヴ「ブロウ・アップ」で、代表曲やカヴァー、アルバム未収録曲が聴けます。

デビュー作は文句なし、第2作も渋い名作です。リーダーのトム・ヴァーラインも80年代いっぱいまでは地味にソロ・アルバムを発表していました。アルバム2作毎にレーベル移籍という、評価は高いがセールスは伸びないミュージシャンの典型でした。87年の読売ホールの初来日ライヴでは「1曲ごとにエフェクター調整で5分休み」という(当然MCなし)悠然たるステージを見せてくれました。まるで色気のない、ライヴ・ハウスでの演奏のようなたたずまいでした。
これは93年のテレヴィジョン一時再結成の来日(川崎文化体育館)でも変わりませんでした。96年に未発表ライヴ+ベスト&レア・トラックをまとめた「ザ・ミラーズ・テイル」以後新作は途絶えていましたが、06年には「ソングス・アンド・アザー・シングス」と「アラウンド」の2作同時リリース、2010年秋にも来日公演を果たしました(筆者は入院中でした)。
全作をオン・タイムで聴いてきた数少ない人です。新奇なサウンドではないだけ今聴いてもいいものですね。これで地下流通音源も公式発売してくれるといいのですが。