人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(10)映画「ハートキャッチ!」

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今回はスチールもつけた。絵柄がこれまでのプリキュアとかなり違う、かつての「おジャ魔女どれみ」に近く頭身は大きめ、色彩も原色を避けた柔らかいものになっている。これは敵組織「砂漠の使徒」の戦術が人間のコンプレックスからモンスター「デザトリアン」を造り出す、というけっこう陰惨な設定をやわらげるためでもあり、砂漠の使徒に敗北してパートナー妖精を喪い、侵略を防げず変身能力も失った先代のプリキュアキュアムーンライト(シリーズ初の高校生)がブロッサム、マリン、サンシャインを認め、変身能力を回復し仲間になるまでのこれまたいささか重いドラマを絵柄にまで反映させないためでもある。ここまでの展開が実に長かった。

「映画ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー…ですか!?」(10.10・監督=松本理恵東映配給・71分・興行収入9.3億円)は「オールスターズDX」を除けば最高の業績を記録。玩具売上125億円もプリキュア史上最高で、映画のヒットによるところも大きい。またプリキュア映画初の女性監督(東映アニメーション所属)を起用。85年生れ、テレビ・シリーズでは06年の「Splash☆Star」から演出に加わり、25歳の長編劇場用作品デヴュー作になる。

テレビ・シリーズも前作「フレッシュプリキュア!」以上の異色作になったが、あちらが劇場用作品では手堅かったのに較べ「ハートキャッチ」は映画も女児がついていけるのはここまでか、ひょっとしたら親ごと脱落かもしれないぞ、という、テレビ・シリーズと符丁を合わせた異色作になった。パリを舞台にしているが、場面の多くは夜。
しかも本作の敵は400年前に地球に送り込まれた組織の最初の幹部で、自分の存在意義に疑問を抱いたために組織から追放され、キュアアンジュによって封印されて肉体は崩壊寸前。5歳の孤児の少年の祈り(「お父さんをください」)で偶然復活し、少年を狼男に変えて10年以上世界を放浪してきた、という暗い設定。
この呪縛からオリヴィエ少年を救い、ドラゴンに変化してパリを焼き尽くそうとするサラマンダー男爵を阻止しようとするのがクライマックス。少年とプリキュアたちの心の触れあい、三界に家なき男爵の絶望とラストの改心(歴代では3人だけ)も細やかに描かれている。際どい成功作か。(続く)