この記事は昨年の再録。ナジム・ヒクメット(1902-63、ソヴィエト)の詩を英訳を参照して紹介する。ピート・シーガーによってイギリス民謡からメロディーを採られ、その後多くのミュージシャンがとりあげている。英訳題は'I Come And Stand Every Door'、邦題は「死んだ少女」で通っている。語り手は広島の原爆で死んだ7歳の少女の亡霊である。画像は原曲のイギリス民謡集からで、歌の題材である少女のつらい境遇をひと目でつたえる。旧ソヴィエトだから仕方ないとはいえ、末尾の数行が惜しい。お読みいただければわかる。
私はあらゆる家のドアの前に立つ
でも誰にも私の足音は聞こえない
私がノックをしても気づく人はいない
だって私は死んでいるから、死んでいるから
私は7歳で死んだ
遠い昔、広島で
今も私は7歳のままで
死んだ子供たちはさまよい続けている
私の髪は燃え上がる炎に焦げて
目はかすみ、やがて見えなくなった
死が訪れ、私の骨を灰に変え
灰は風に吹き散らされていった
果物もいらない、ご飯もいらない
お菓子もパンもいらない
もうなにもいらない
私は死んだのだから、死んだのだから
私の願いは平和だけ
今日もどこかで戦争がある、だがいつか
この世界の子供たちが
笑い、遊びながら元気に育ちますように
(続く)