人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

スウェーデンの70 年代ロック

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スウェーデンと言ったら何をおいてもアバで、かつてグレアム・ナッシュに「多くの人に愛されたとは言ってもアバやヴィレッジ・ピープルはロックの殿堂には入らないだろ?」と単なるポップ・グループ呼ばわりされたが2010年にはロックの殿堂入りしてしまった。全ヨーロッパでの人気は凄まじくアルバムの売り上げは3億5000万枚を突破する。10作ほどのアルバムしかないからビートルズを凌駕するといえる。元々はビョルン&ベニーという男性デュオで、それぞれの奥さんのアグネッタとフリーダを加え男女混声にしてパワーアップしたのがアバだった。以上アバ終り。

しかしスウェーデンのロックは何でもありの、ドイツのロックに劣らず混沌としたところからはじまった。掲載アルバムは、
○ノーヴェンヴァー「6:eノーヴェンヴァー」1972(画像1)
○サムラ・ママス・マンナ「ごはんですよ!(Maltid)」1973(画像2)
○カイパ「カイパ」1975(画像3)

まずドロドロのサイケ・バンド、トゥリーズ・グラス・アンド・ストーンズ(69年)やアルガーナス・トラッドガルド(72年)があった。それと同時にケブネカイゼ(71年)やメイド・イン・スウェーデン(69年)といったシャープなハード・ロックのギター・バンドがあった。ノーヴェンヴァーは極端に渋いハード・ロックで、スウェーデン語のヴォーカル(ポップス系ではないバンドは自国語で歌うようだ。サムラもカイパもそう)も重い。黒っぽさがないのもスウェーデンのロックの特徴といえる。

サムラはとぼけたバンド名やジャケット、タイトルからも判るとおりシニカルなユーモアで知られた存在。初期はフリー・ジャズ的傾向が強かったが次第に複雑なアレンジの計算された作風に向かった。最高傑作は78年の「家庭のひび割れ」。現在も復活活動中。

カイパも復活活動中のバンドで、サムラと親好が深かった。こちらは非常に端整な音作りで、ジェネシスやキャメルら抒情的なイギリスのバンドからの影響が強い。プログレッシヴ・ロック愛好者ならば好感が持てるバンドの筆頭に挙げられるが、そうでなければあまりに淡泊な作風に興味を持てないかもしれない。センスが良すぎて地味、という典型で、こうして見ると今回掲載の3バンドはいずれもあまりに渋い。スウェーデンのロックはどうも通俗的なハッタリに欠けるようだ。