人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

チェコの70年代ロック

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アルバム紹介からいく。上から、
○コレジアム・ムジカム「コンヴァージェンス」1971(画像1)
○プラスティック・ピープル・オブ・ザ・ユニヴァース「エゴン・ボンディーズ・ハッピー・ハーツ・クラブ・バンド」1974(画像2)
フェルマータ「ワスカラン」1977(左・画像3)

どのバンドも全作品がCD化され、廃盤にならずに70年代チェコの音楽文化を伝える作品群として大事に聴き継がれているようだ。
旧共産圏の例に洩れず(商業作品ではないので)制作・発表年が曖昧なところがある。コレジアム・ムジカムとフェルマータは国家公認音楽家だが、プラスティック・ピープルは国家非公認で地下活動を行っていた。ソヴィエト軍による自由化制圧を受けるまではチェコには約120ものロック・バンドが活動していて、チェコビートルズことオリンピックス、チェコヤードバーズことマタドールズ、チェコプリティ・シングスことプリミティヴスが人気を競っていた。事変によって音楽家は登録制となり、オリンピックはフェルマータに、プリミティヴスはプラスティック・ピープルになる。

さらに国家公認音楽家は楽器の私有も禁止され、国家貸与の楽器を使用するしかなかった。非公認音楽家の楽器私有は犯罪だった。
プラスティック・ピープルの録音はようやく78年になって国外に持ち出され、まずフランスでレコード化される。バンド名の由来となったザッパ&マザース初期から発展したサウンドで、グロテスクな囚人的ユーモアがある。民主化の後には自国でも英雄視され、メンバーからハシェク大頭領を輩出している。

フェルマータは無愛想なジャズロック・バンドで、2枚組4巻のCD全集がある(偶然だがコレジアムもプラスティック・ピープルも同数)。この作品はアンデス山脈ワスラカン山での震災をテーマにしたシリアスな内容で、アルバムの企画段階から省庁の介入があるのかもしれない。

コレジアム・ムジカム(公立音楽院)はキーボードのマリアン・ヴァルガ率いるトリオで、公立音楽院出身のエリート・バンド。クラシックのロック化を表向きのアリバイにしているが「コンヴァージェンス」は暴走する2枚組大作としてアフロディテス・チャイルド「666」、カナリオス「シクロス(四季)」と並ぶかもしれない。こんな破壊的な電気オルガンは他にない。