人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(33b)ソニー・クラーク(p)

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キャリアの長さや実績から見てもソニー・クラークより明らかに重要なジャズ・ピアニストは10人を下らない。ハード・バップ期から後でもマル・ウォルドロンポール・ブレイがいる。このふたりなどはフリーからジャズ・ロックまでやっていて到底筆者も把握しきれていない。だが身も蓋もないことを言えばブレイ抜きのジャズはあり得る。創造性では50年代のハード・バップ・ピアニストより優れているだろう。だが、T.S.エリオットの古典的批評「伝統と個人的才能」の通り個人的才能による創造力は伝統に根差した表現のような普遍性を持たない、とも言える。

クラークはバディ・デフランコ・カルテットを55年に辞して56年はフリーランスのセッション・ピアニストになり、9枚のアルバムに参加する。掲載アルバムは、
ソニー・クリス「ゴー・マン!」(画像1)
・サージ・チャロフ「ブルー・サージ」(画像2)
・フランク・ロソリーノ「アイ・プレイ・トロンボーン」(画像3)

で、ソニー・クリスはアルト・サックス、サージ・チャロフはバリトン・サックス、ロソリーノはトロンボーン。いずれもワン・ホーン・カルテットで、各々生涯畢生の力作と言ってよい。そのピアニストにクラークが選ばれた意味は大きい。この年は他にソニー・クリス「プレイズ・コール・ポーター」、ジェームズ・クレイ「テナー・マン」、スタン・リーヴィー「グランド・スタン」に参加、掲載アルバムに劣らない(後はハワード・ラムゼイ・オールスターズの企画盤)。「テナー・マン」ではクラークの代表曲になるオリジナル『マイナー・ミーティング』の初演が注目される。
チェット・ベイカー・カルテットのリチャード・ツワージックもそうだが、ボストンとL.A.には直接の人脈交流があって、サージ・チャロフはボストンの顔役のひとりだった。チャロフは57年に34歳で急死。
ロソリーノのワン・ホーン・アルバムはJ.J.ジョンソンすら羨望する出来で、J.J.の傑作「ブルー・トロンボーン」はロソリーノへの回答だという。
だがこれらのアルバムではソニー・クリスが抜群に面白い。クリスには生前のチャーリー・パーカーとのライヴ録音があって、パーカーは正直言って盛りを過ぎている。クリスはバリバリだ。だがパーカー圧勝なのだ。そういうクリスの持ち味はどこか憎めないところがある。