人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

(3)タンジェリン・ドリーム

タンジェリン・ドリーム(Tangerine Dream,1970-)も日本では早くから人気バンドだった。初期4作はマイナー・レーベルのOhr、5作目からはイギリスの新興レーベルだったヴァージンに移籍したが、ドイツ本国やイギリスでのヒットもあってピンク・フロイドのよう…

あるジャズ・バンドの記録・序

前にも同じような記事を書いたが、ぼくは以前ジャズのアルトサックス奏者だった。もちろんアマチュアだが、ジャズの世界には意外にプロとアマの垣根はなかった。アルトを選んだのは勘違いからだったが(テナーと変わらないと思ったのだ)アルトにして良かった…

(2)クラフトワーク

もっともドイツらしいバンドにクラフトワーク(Kraftwerk,1970-)を挙げるのに異論はあるまいと思われる。だがその実体はバンドかどうかもあやしい。もともとお金持ちの子息であるラルフ・ヒュッターとフローリアン・シュナイダーが電子音楽の実験として始めた…

初めてモダン・ジャズを聴く10 枚

●「オリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット」(1952,1953) 戦後白人ジャズのヒット作。ピアノを入れず、トランペット(チェット・ベイカー)とバリトン・サックスが舞うようなアンサンブルを聴かせる。(画像1) ●ザ・クインテット「ジャズ・アット・マッセ…

ジャーマン・ロック(1) 魁!蠍団

フレンチ・ロックのお次は70年代ジャーマン・ロックをご紹介する。ヨーロッパのロックは仏独伊が三大国という定評があり、オランダやデンマークもいいバンドを出しているが、マーケットが小さいために国内活動だけでは維持できず、女性ヴォーカル+英語詞と…

村野四郎『魚における虚無』ほか

村野四郎(1901-1975・東京生れ)は戦前からの長い詩歴を持ちながら、戦後に広い読者を獲得した詩人。知的で平易な作風をもつ。代表作を3篇挙げよう。 『魚における虚無』 村野 四郎 ぼくたちは自らの脂で煮つめられ 自分の脂に浮いていた 眼をあけたまま 錫び…

フレンチ・ロック(8) ・ワパスー

フレンチ・ロック(8)最終回は最終回にもっとも似合わないバンド、ワパスー(Wapassou,1974-1986)。しかも大物と同格で1回まるまるだ。全10バンドを取り上げたわけだが、バンドも推薦アルバムの選出も筆者の偏向は避けた。エルドンとワパスーの優遇にも一応の…

岩田宏『感情的な唄』( 再録)

岩田宏(北海道生れ・1932-)の作品はこれまで何篇かご紹介してきたが、なかでも屈指の一篇を再録する。戦後現代詩でももっとも鮮やかにインチキくさい怪作にして傑作といえばこの作品の右に出るものはないだろう。 『感情的な唄』 学生がきらいだ 糊やポリエ…

(7)モナ・リザ&タイ・フォン

フレンチ・ロック(7)はモナ・リザ(Mona Lisa,1974-)とタイ・フォン(Tai Phone,1975-1979)をご紹介する。格は同程度なのだが、日本での知名度は大きく水をあける。 タイ・フォン(当時の表記はタイ・フーン)は大手ワーナーで70年代から日本盤が発売されて熱心…

ヨーコ・オノ

最近痛感するのはぼくにはブログに限らず標準語(口語的文語と言ってもいい)の文章しか書けないということだ。 いわゆる標準語も関東の方言を加工して全国的に流通させたもので、それも140年経って純粋な標準語も方言もなくなった。標準語の文体に方言の語彙…

(6)ピュルサー&アトール

フレンチ・ロック第六回はピュルサー(1975-)とアトール(1974-)をご紹介する。ピュルサーを先に置いたのは、結成が66年に遡る、下積み時代が長いバンドだからだ。 アンジュ、ゴング、マグマ、カトリーヌ・リベロ+アルプに次いで、前回準A級のトップにエルド…

西脇順三郎『体裁のいい景色』5

全35篇と勘違いしていたが34篇だった。これが西脇順三郎(1894-1982)の帰国第一作、日本語詩の処女作になる。まず意図して外国語の直訳的文体を用い、さらに誇張している(「秋という術語を用いる季節が来ると」「一個の青年が」など全編にわたる)。これは日本…

フレンチ・ロック(5) エルドン

これまでの4回でご紹介したのがアンジュ、ゴング、マグマ、カトリーヌ・リベロ+アルプ。文句なしにA級といえるのはここまでだろう。後のバンドはA級とは呼べずせいぜい準A級、記憶に残る存在ではあっても前記の大物4バンドほどのスケールではない。 ピュル…

西脇順三郎『体裁のいい景色』4

これまで解説した通り西脇順三郎は萩原朔太郎だけを日本の詩人として尊敬し、萩原の後継者を自認した。だから萩原のもうひとりの弟子・三好達治の詩を認めなかった。萩原の尊敬する前世代の蒲原有明、北原白秋も眼中になかった。同年代の詩人たちとはだいた…

(4)カトリーヌ・リベロ+アルプ

フレンチ・ロック(4)は初めての女性ヴォーカル・バンド。しかもアンジュ、ゴング、マグマに匹敵する大物。フランス4強だろう。さらに全組現役でもある。 この4月発売の4枚組セット(画像1)のおかげで、晴れて気兼ねなくカトリーヌ・リベロ+アルプ(Catherine …

西脇順三郎『体裁のいい景色』3

西脇順三郎(1894-1982)の特異性を現代詩史から探ってみよう。 現代詩史を辿ると、現代詩の源流は高村光太郎(「道程」1914)と萩原朔太郎(「月に吠える」1917)に行きつく。金子光晴(「こがね虫」1923)や宮澤賢治(「春と修羅」1924)も高村・萩原の系譜と解せる。…

フレンチ・ロック(3) ・マグマ

同じバンドの作品だとひと目でわかるジャケット。フレンチ・ロック第三回はアンジュ、ゴングにも引けをとらないどころか、音楽の強引さでは英米ロックも含めてトップ・レヴェルにある恐怖のジャズ・ロック集団マグマ(Magma,1970-)をご紹介する。恐怖というの…

西脇順三郎『体裁のいい景色』2

画像の説明をしていなかった。画像2は思潮社「現代詩読本・西脇順三郎」1979表紙(85歳)、画像2は同書掲載の絵画作品。画像1は東京創元社「全詩集大成・現代日本詩人全集」1955の西脇順三郎全詩集の口絵写真で、「著者近景」ならぬ「著者遠景」(62歳)。もちろ…

2007年5月23日(再録・改稿)

2007年5月23日ぼくは逮捕された。その朝宿を出て離婚したばかりの妻子の住むマンションに着き、コンビニ弁当をエントランスで食べた。集合ポストの表札はもう妻の旧姓だった。 ぼくはまだ宿無しで、別居中に妻からの民事訴訟(事実上の理由はぼくの病気)で離…

西脇順三郎『体裁のいい景色』1

西脇順三郎(1894-1982)は新潟県小千谷市の名家に生まれ、経済学を学びつつも英文学に転向。ロンドン留学中の英文詩集「スペクトラム」1925刊行後帰国し慶應義塾大学英文学科教授に就任、古典はもとより最新のヨーロッパの芸術思潮を紹介しつつ自作を発表した…

フレンチ・ロック(2) ・ゴング

フレンチ・ロック第二回はゴング(Gong,1970-)をご紹介する。フランスを代表する長寿ロック・バンドで最新作は2009年、YouTubeには昨年のライヴもアップされており、リーダー(ヴォーカル、ギター)のデヴィッド・アレンが今年74歳なのを考えると(ジョン・レノ…

八木重吉『人を殺さば』

○八木重吉 (1898.2~1927.10) 東京生れ。東京高師卒。キリスト者として神と愛を信じ、希望の微光を見出だそうとする詩を残した。二九歳で病没。詩集「秋の瞳」1925、「貧しき信徒」1928他。 (大岡信編「ことばよ花咲け」集英社文庫より) * 『人を 殺さば』 …

フレンチ・ロック(1)・アンジュ

おそらくフランスのロックなど聴かないという方が多いと思われる。フランス・ギャル、ミシェル・ポルナレフ、ヴァネッサ・パラディ(レニー・クラヴィッツ絡みだが)など、日本でも人気が出るポップス歌手など10年にひとり現れればいいほうだ。 だがフランスに…

世界初の長篇記録映画

「世界初の長篇劇映画」の記事は先日掲載したが(D.W.グリフィス「国民の創生」米1915)、今回は「映画史上初の長篇記録映画」のお話。 短篇記録映画なら映画の発明とともにフランスのリュミエール兄弟が「汽車の到着」「工場の出口」1895などを製作している。…

あとがきジョン・レノン全訳詞

さてジョン・レノン全訳詞も完結した。予想以上に後期作品への当惑がコメントに寄せられた。訳者も同感で「ヌートピア宣言」以降の作品がこんなに「ジョンからヨーコへ」一色とは思わなかった。あらためて整理してみよう(原題略)。 ○ジョンの魂(プラスティッ…

長女の誕生日は(娘たち2)

次女の誕生日ついでに長女に触れないのは不公平だろう。誕生日は1998年9月1日。写真は2004年10月撮影のプリクラで、ぼくの手元にある唯一の娘たちの写真。振り袖の写真は婚約中の妻で、友人の結婚式での一枚。ぼくたちは33歳と31歳の晩婚だった。 里帰り出産…

ジョン・レノン全訳詞(14・補遺)

62『ディア・ヨーコ(愛するヨーコ)』 'Dear Yoko' 何年も一緒なのに 一日でもきみがいないと寂しい 今きみがここにいないというだけで 愛するヨーコ (アルバム「ダブル・ファンタジー」より・抄訳) 69『ヒア・ウィー・ゴー・アゲイン』 'Here We Go Again' …

次女誕生の記(2001年5月18日)

次女の誕生は2001年5月18日午前2時半。母の日からすぐ。一昨日バースディ・カードを送った。訪問看護のアベさんに撮ってもらった写真を同封。「ぼく写真は駄目なんですよ」本当にアベさんの撮影は頼りなかったが、本棚の前で膝を抱えているのを選ぶ。 今朝は…

ジョン・レノン全訳詞(13)

63『アイム・ステッピング・アウト』 'I'm Stepping Out' 朝起きるとブルースがいっぱい どうしてなんか訊かないでくれ 台所で煙草をふかして 心配事を吹き飛ばす ぼくは飛び出す ぼくは飛び出す ぼくは飛び出す ぼくは飛び出す (アルバム「ミルク・アンド・…

芸術

まだ遠視用の眼鏡が出来てこない。こういう時は文献の引用や翻訳はしんどいから気楽なエッセイなら目の負担も軽いのだが、たいした話題もない。もし失明したら公的文書以外は口述筆記ですらも何も書かないだろう、と思う。 近松秋江やジェイムズ・ジョイスは…