人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

偽ムーミン谷のレストラン(36)

せっかくの夕べなのであえて話題にはしなかったが、とヘムレンさん。アレをいわゆる黒歴史と言うのだろうな。ここまで言えばきみには通じると思うが。 ああ、アレかね、とジャコウネズミ博士。おたがいアレには悩まされたものだ。私もムーミン谷の紀元までは…

偽ムーミン谷のレストラン(35)

・卑怯もの! とフローレンはいつもより低く、ですがレストランのすみずみまで響きわたる声で罵りました。それは普段の彼女を知るなら唖然とするような豹変ぶりで、居丈高ではないだけ冷酷に真実を突いた鋭さを感じさせました。それは決して彼女が口にしたこ…

「フィル・ウッズ&ヨーロピアン・リズム・マシーン」

[Phil Woods and His European Rhythm Machine-And When We Are Young]68.11.14&15 http://m.youtube.com/watch?v=vhFG9T5PiIM この力強い演奏を聴いて、演奏者の人種や国籍を即座に当てられる人は少ないと思う。これはアメリカの白人ジャズ・アルトサックス…

アル中病棟入院記222

(人名はすべて仮名です) ・5月12日(水)小雨のち晴れ (前回より続く) 「日記をつけるため手帳を開くと、3月24日全体会のメモが目についた。テーマは『最近思っていること』で、当時の座席順に柳瀬、渥美、松本、清水、冬村、杭瀬(欠席)、加山、木島、仲村、勝…

偽ムーミン谷のレストラン(34)

これはなんだろう、たぶん誰でも立ち寄っていい種類の祝賀会、おそらく立食パーティが催されているに違いない。そう確信したスナフキンは、中からにぎやかな人声が聞えてくる建物の開け放したドアから玄関をくぐりました。最後の食事にありついたのはいつの…

偽ムーミン谷のレストラン(33)

ホッピーで乾杯というのも間が抜けておるが仕方があるまい。しかしジョッキとはすまんな。容器自体に重みがあるから利き腕で持たんとつらかろう。 それはあっしも気づきませんでした。でも瓶のホッピーなぞありますかね?だいたいホッピー自体、他人が飲むの…

アート・ペッパー「ザ・トリップ」

[Art Pepper Quartet-The Trip]76.9.15&16 http://m.youtube.com/watch?v=oRq61VypkLk ペッパーは「ミーツ・ザ・リズム・セクション」57ばかりが突出した名作とされて、他の作品は印象稀薄なきらいがある。その上ペッパー(1925~1982)は、53年~56年、60年~…

アル中病棟入院記221

(人名はすべて仮名です) ・5月12日(水)小雨のち晴れ (前回より続く) 「そうなの?という婦長の口調には何かこれから嫌味を言いたそうな気配があった。アルコール依存症治療病棟という環境が大きいとは思うが、ここでは看護婦が患者の人格を揶揄したり誹謗し…

偽ムーミン谷のレストラン(32)

最初、人びとはスナフキンの存在に気がつきませんでした。あるいは、気がつかないふりをしていました。気づくとはすなわちその存在を認めることであり、認めてしまえばそれは間違いだ、認識の違いだと言ってもあとの祭りです。 ですが認識の違いにも種類はあ…

アンドレ・ジッド(8)ジッドの日記とジャンル意識

それまでの創作をアンドレ・ジッド(1869~1951)が詩的散文、レシ(物語)、ソチ(風刺的作品)に分類したのは、1926年『贋金つかい』とその創作日記『贋金つかいの日記』の刊行に際してでした。ジッド生涯の大著は『ジッドの日記』で、明らかに全編の没後公刊を…

アル中病棟入院記220

(人名はすべて仮名です) ・5月12日(水)小雨のち晴れ (前回より続く) 「避難にはそれなりに用意をしている人もいて、中西さんはハンカチで口と鼻を押さえ、尾崎さんと大芝くんはタオルを防塵マスクにして気分を出していた。降谷智子は枕を抱えていたのでまた…

偽ムーミン谷のレストラン(31)

第四章。 実は私も同じ疑問を持っていたのだ、とムーミンパパは言いました。それがいつからのことかは憶えていないが、他人と話題にしたこともある。だが確証をつかんだのは一度もないのだ、とムーミンパパは頭をかかえました。しかしこれではあまりに話が飛…

また性懲りもなく

またこんなのが来た。いじましいというか、こんな卑小な詐欺を仕掛けてきて情けないとは思わないのだろうかとうんざりするが、不馴れな人には実害が発生しているのも確からしい。内容も典型的な手口なので、この種のメールは一切黙殺することをお勧めする。 …

頭の中の映画10/フェリーニ、アントニオーニ

フェリーニはロッセリーニやデ・シーカ、ヴィスコンティら先輩監督たちを追い抜いて国際的な名声を獲得した人で、北欧映画におけるベルイマン、日本映画における黒澤明と似た立ち位置を第二次大戦後の映画界に占めました。黒澤には木下恵介、ベルイマンには…

アル中病棟入院記219

(人名はすべて仮名です) ・5月12日(水)小雨のち晴れ 「朝はいいタイミングで起きる。ワゴン到着五分前。勝浦くんも起こす。朝食後に、水曜日は全体会があるがどんなもんかねえ、と部屋で話していると朝の会に呼ばれる。午後二時20分から防災(避難)訓練がある…

偽ムーミン谷のレストラン(30)

・ムーミン谷の二人の長老賢者の対話 (ヘムレンさん) この谷の法律は誰もが知ることはできない。それはわれわれを支配する少数の議会の秘密で、それらが確実に守られているのは疑えない。とは言え知りもしない法律に支配されているのは何ともいえない苦しみ…

偽ムーミン谷のレストラン(29)

スナフキンが着いたのは、夜も更けてからのことでした。谷は深い雪の中に横たわっていました。谷の両側にそびえるはずの山はまったく見えず、霧と夜の闇に包まれていました。街の中心地を示すかすかな灯りさえなく、スナフキンは長いあいだ国道から谷に通じ…

文学史知ったかぶり(15)

アメリカ合衆国の独立国化は1776年ですがこれは州単位で植民地から独立国家となっただけで、法の制定や運用は長らく州単位で行われ、現在でもその名残をとどめます。日本でも鎌倉幕府設立までは中央集権というシステムはなく、本格的な統一国家としての中央…

アル中病棟入院記218

(人名はすべて仮名です) ・5月11日(火)雨 (前回より続く) 「昼食のワゴンが届き、配膳が終り、みんなが食べ始めた頃に勝浦くん戻ってくる。梅崎さんはやっちまったってよ。缶チューハイ一本だけで酔いが回ったそうだ。だが毎日飲み潰れて再入院までにはなら…

偽ムーミン谷のレストラン(28)

ムーミン谷のなかでもとりわけ謙虚な存在といえば、誰もが思い出せないほど影の薄い双子夫婦のトフスランとビフスランでした。双子夫婦とは比喩表現ではなく、実際に双子であり夫婦なのです。 夫婦というからには一方が雄の特性、一方が雌の特性を備えるはず…

偽ムーミン谷のレストラン(27)

(喧騒) んにゃむにゃくにゃへにゃほにゃふにゃはにゃわにゃぺちゃくちゃわちゃはちゃぐちゃべちゃがちゃばちゃわらわらわら… ・シャラップ! とミムラ姉さんがテーブルを一打しました。全員いちどにしゃべるんじゃないの!うちは35人もいるんだから、あんた…

文学史知ったかぶり(14)

アメリカ初期自然主義を代表する作家と作品は、 ※スティーヴン・クレイン(1871~1900) 代表作/『街の女マギー』1893/『赤い武勲章』1895 ※フランク・ノリス(1870~1902) 代表作/『死の谷』1899/『オクトパス』1901 ※ジャック・ロンドン(1876~1916) 代表作/…

アル中病棟入院記217

(人名はすべて仮名です) ・5月11日(火)雨 「久しぶりの雨で肌寒い。もし来週月曜が退院日になるなら今週のプログラムで最後の一巡だ。もう内容には既視感があるから、実質的には二か月で一通りの学習を履修している。入院してきた時は初入院の人が大半だった…

偽ムーミン谷のレストラン(26)

みなさんチラホラ注文を決め始めたみたいですぜ、とスティンキー。あっしらも食事の前の一杯くらい決めましょうや。レストランって名乗るなら景気づけの酒くらいあるでしょう? それもいいが、私はまだ勤務中なんでね、とヘムル署長。早く勤務が明ければいい…

偽ムーミン谷のレストラン(25)

そろそろ注文を決めねばな…だがこうしてムーミン谷の住民が一堂に会すると、とジャコウネズミ博士は言いました。われわれも今やすっかり谷の古老という感慨がひしひしと寄せてくるな、そう思わんかねヘムレンさん? 少々の留保をつければね、とヘムレンさん…

偽ムーミン谷のレストラン(24)

万引き?失礼な。私が万引きするのは食料品だけ、しかも廉価な缶詰類だけだということくらいお前だって承知しているだろう?だいたい万引きなど問題にするのは本当の貧乏を知らぬ証拠だぞ(せせら笑う)。 (殺意を抑えながら)そうかしら、私は本当の貧乏は知ら…

アル中病棟入院記216

(人名はすべて仮名です) ・5月10日(月)曇り (前回から続く) 「午後の掃除は週に一度の環境整備(消毒清掃)。三田さんが灰皿当番を忘れて寝ているので工藤くんが次回の担当日との入れ替えで灰皿当番にまわる。掃除の後は二時からビデオ学習。自分の酒歴発表を…

偽ムーミン谷のレストラン(23)

ではわれわれも注文を決めなければな、とスノークは言いました。なに急ぐ必要はあるまい。どうせ大半の連中はメニューを読めさえしないのだから、当てずっぽうにカブラのドンドコ煮とかトンビのパッパラ揚げなどを頼むに違いない。あれば幸い、なければ自業…

アル中病棟入院記215

(人名はすべて仮名です) ・5月10日(月)曇り (前回から続く) 「昨晩から掲示板に*10:15~酒歴発表・佐伯様とあるのをみるたびに落ち着かない。朝食、検温、朝の会、冷蔵庫清掃(月曜のみ)と進み、いよいよ酒歴発表の時刻になる。アルコール科の患者だけなので…

エリック・ドルフィー(as,bcl,fl)「ファー・クライ」

[Eric Dolphy Quintet-Mrs.Parker Of K.C.]60.12.21 http://m.youtube.com/watch?v=MUDxI8k54VQ 60年12月20日~21日のドルフィーは大忙しだった。20日ジョン・ルイス「ジャズ・アブストラクションズ」(アトランティック)の録音でオーネット・コールマンと共…