人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

集成版『夜ノアンパンマン』第四章

(31) 第四章。 わかりました、としょくぱんまんはあまりの話に腕組みをしそうになりましたが、スマートなぼくには似つかわしくないな、と思い額に手を当てました。少しうつむき加減のそのポーズは山型パンの輪郭にばっちりきまっていたので、こいつこんな時…

映画日記2018年5月18日・19日/B級西部劇の雄!バッド・ベティカー(1916-2001)監督作品(2)

1952年度アメリカ本国公開のベティカー作品は4作ですがそのうち西部劇が3作を占めるので、ユニヴァーサルでもベティカーは西部劇担当の監督とされていたのでしょうが、ノンクレジットながら監督デビュー年の'44年以前に2作の第二次世界大戦戦争映画を手がけ…

集成版『夜ノアンパンマン』第三章

(21) 第三章。 地獄と現実の地続きのような夢から目醒めると(アンパンマンはいつも現実的、または地獄の夢しかみません。かまどから生まれてきたからかもしれません)、しばらくしてアンパンマンは自分が乳頭になっているのに気づきました。それまではどこか…

映画日記2018年5月16日・17日/B級西部劇の雄!バッド・ベティカー(1916-2001)監督作品(1)

映画界入り以前に異色の経歴を持つ俳優は多いですが監督となると俳優ほどではないとはいえ、アメリカの戦後監督バッド・ベティカー(1916-2001)は大学卒ながらメキシコでプロの闘牛士をしていたという人で、ルイス・マイルストン監督の『二十日鼠と人間』'39…

集成版『夜ノアンパンマン』第二章

(11) 第二章。 アンパンマンは唐突、かつあまりにも飛躍したジャムおじさんの発言に、ジャムおじさんはどうかしてしまったのではないかと思いましたが、考えてみればこれまでもジャムおじさんは極端に感情や行動の振幅が激しく、かつまた自分の固執する信念…

集成版『夜ノアンパンマン』第一章

(1) 第一章。 あんパンが初めて製菓店の店頭に並んだのは1874年とされており、翌1875年(明治8年)4月4日には花見のために向島の水戸藩下屋敷へ行幸した明治天皇に山岡鉄舟が献上し、お気に召された天皇によりあんパンは宮内省御用達となりました。以降、4月4…

映画日記2019年5月13~15日/蔵原惟繕(1927-2002)と日活映画の'57~'67年(5)

昭和29年('54年)に戦後ようやく製作再開を果たした日活(明治45年='12年設立)がメジャー5社(松竹・東宝・大映・東映・新東宝)に並ぶ業績を上げるようになったのは昭和31年('56年)の『太陽の季節』と石原裕次郎主演作『狂った果実』に始まる太陽族映画のヒッ…

集成版『戦場のミッフィーちゃんと仲間たち』第八章(完)

(71) 第八章。 近代西洋文化における音楽の把握は通常メロディ(旋律)、ハーモニー(和声)、リズム(拍子)の3要素の組み合わせとして把握されます。和声と旋律、拍子が有機的に複合するには旋律をなすモード(もしくはスケール、音階)が一定の規則に基づいていな…

フランス最大のロックバンドへの間違いだらけのアメリカのロック誌の酷評

MAGMA マグマ ★Mekanik Destruktiw Kowmmandoh / A&M 4397 (1973) : https://youtu.be/7hDOK-IN_cU 〓Kohntarkosz / A&M 3650 (1974) : https://youtu.be/7FjkLffnQjw ★Udu Wudu / Toma. 6001 (1976) : https://youtu.be/igqUcXaPG-s クリスチャン・ヴァン…

集成版『戦場のミッフィーちゃんと仲間たち』第七章

(61) 第七章。 マイメロからの報告は毎回ハローキティのお店の仲間たちを落胆させました。どうせマイメロだから、と過大な期待は持たないようにしても藁にもすがりたい気持の時にはせめて希望のかけらだけでももたらしてはくれないか、と思うのが人情という…

映画日記2019年5月10~12日/蔵原惟繕(1927-2007)と日活映画の'57~'67年(4)

昭和39年('64年)、日本の映画界は最大のピンチを迎えました。日本の映画人口が史上最大を記録したのは昭和33年('58年)で12億2,745万人、年間映画観覧数人口比12.3倍となり日本人一人当たり年に12.3回映画を観ていたことになりますが、翌昭和34年('59年)から…

集成版『戦場のミッフィーちゃんと仲間たち』第六章

(51) 第六章。 初めて車輪にペダルをつけた自転車の一般販売はフランスで1861年、ペダルによって後輪をチェーンで回転させる現在のような自転車が発売されたのはイギリスで1869年のことでした。それらに先立ち、直接足で地面を蹴って進ませる自転車の元祖が…

集成版『戦場のミッフィーちゃんと仲間たち』第五章

(41) 第五章。 この町でうっかりすると失ってしまうのは、ハローキティのリボンに限ったことではありませんでした。怪奇現象に法則性を求めても仕方ないことですが、社会のルールでは重要なものほど法的な所有権が厳重化されているものです。たとえば親権な…

映画日記2019年5月7~9日/蔵原惟繕(1927-2002)と日活映画の'57~'67年(3)

これだけは恥ずかしい懐メロ曲の筆頭に上がるのはGS歌謡の代表曲「小さなスナック」、デュエット曲なら「銀座の恋の物語」なのは昭和生まれの日本人なら誰しもが知ることで、歌っている本人は楽しくても聴かされる方は恥ずかしくて仕方がないからですが、意…

集成版『戦場のミッフィーちゃんと仲間たち』第四章

(31) 第四章。 いけない、エゴサーチを済ませておかなくちゃ、とミッフィーちゃんははたと思い出しました。毎日の仕事の前にはそれを済ませておかないと、彼女は落ちつかないのです。ただし自分でやるのは面倒なので、職務上は部下である友人や妹にやらせる…

映画日記2019年5月4~6日/蔵原惟繕(1927-2002)と日活映画の'57~'67年(2)

今回の3作中鈴木清順作品は米Criterion社のDVDボックス『Nikkatsu Noir』2009収録、蔵原惟繕の2作はやはり同社のDVDボックス『The Warped World of Koreyoshi Kurahara』2011で世界初DVD化されたもので、公開時もほとんど注目されず再上映の機会も少なく、従…

集成版『戦場のミッフィーちゃんと仲間たち』第三章

(21) 第三章。 私が10歳で、私たちの町のラテン語学校に通っていた頃の体験から話を始めよう。当時のいろいろなものが私に向かって匂ってくる。暗い路地、明るい家や塔、時計の音、人の顔、住み心地のよい温かな快適さに満ちた部屋、秘密と幽霊に対する深い…

映画日記2019年5月1~3日/蔵原惟繕(1927-2002)と日活映画の'57~'67年(1)

今年はロイドとキートンの短編サイレント喜劇、小林正樹監督作品、アステアのミュージカル映画にソヴィエト連邦末期のパラジャーノフ監督作品、長編アニメのしんちゃん映画、サイレント時代のソヴィエト映画の古典プドフキンとドヴジェンコの代表的三部作と…

集成版『戦場のミッフィーちゃんと仲間たち』第二章

(11) 第二章。 そろそろ出ないとヤバいんじゃない、と、それまで黙ってちびちびとオレンジジュースをすすっていたウインがボソッとつぶやいたのとハローキティのお出ましがほぼ同時だったので、おしゃべりに興じていたミッフィーたちはぴたり、と黙り込みま…

集成版『戦場のミッフィーちゃんと仲間たち』第一章

(1) 第一章。 まったくあの女ったら!とミッフィーちゃんはアイスピックをふるいながらバーバラにこぼしました。あいつらなんかみんな私たちの商売を真似てるだけじゃないの。おかげでうちの店も閑古鳥つづきじゃ、上がったりもいいところだわ。ねえアギー?…

映画日記2019年4月28~30日/オレクサンドル・ドヴジェンコ(1894-1956)の「ウクライナ三部作」

セルゲイ・エイゼンシュテイン(1898-1948)、前回ご紹介したフセヴォロド・プドフキン(1893-1953)とともにサイレント時代のソヴィエト映画の3大巨匠監督と並び称されるオレクサンドル・ドヴジェンコ(Olexander Petrovych Dovzhenko, 1894-1956)ですが、首都モ…

集成版『偽ムーミン谷のレストラン』五部作・第三部予告

『戦場のミッフィーちゃんと仲間たち』 ♥ (五部作『偽ムーミン谷のレストラン』第三部・初出2015年4月~8月、全八章・80回完結) (お借りした画像と本文は全然関係ありません)

集成版『荒野のチャーリー・ブラウン』第八章(完)

(71) 最終章。 チャーリー・ブラウンは自分を、もう長いこと泥の中を匍匐前進しているだけのアメーバか繊毛虫のように思いました。アメーバやゾウリムシ、また繊毛虫などの単細胞生物(たんさいぼうせいぶつ)とは、体が複数の細胞からできている多細胞生物に…

ロック史上最高のデビュー・アルバム

MOBY GRAPE モビー・グレイプ ★★★★★Moby Grape / Col. CS-9498 ('67.May.29) : http://www.youtube.com/playlist?list=PLpvztXgGzYSE20HuDuqGH8kYM8DVWENHN ★Wow (c/w "Grape Jam") / Col. CKS-3 ('68.Apr.3) : https://youtu.be/6khG54XE-Ws : https://yout…

集成版『荒野のチャーリー・ブラウン』第七章

(61) 第七章。 嵐の吹く暗い夜でした。私たちは暖炉の前でくつろぎながら、そろそろ晩酌にしようかとウィスキーのための氷を割ったところでした。夜の静寂が嵐にかき乱されていても、暖かな室内では吹きすさぶ嵐すら静寂の一部でした。私たちは退屈していた…

映画日記2019年4月25~27日/ フセヴォロド・プドフキン(1893-1953)の「革命三部作」

ロシア革命(1917年)以前のロシア映画も演劇文化の蓄積を生かして短編時代から長編映画への転換期だった1913~16年には十分な発展をとげ、イヴァン・モジューヒンやナタリー・リセンコ、アラ・ナジモヴァら舞台出身で映画製作者も兼ねていた国際的大スターを…

集成版『荒野のチャーリー・ブラウン』第六章

(51) 第六章。 スヌーピーはついに頸椎を掻き切ると、握りつぶしたトマトのように溢れだす自分自身の血だまりの中に倒れ込みました。とはいえもともと犬は座高が低いので、倒れたと言っても座りこんだ程度にしか見えません。あんな不器用なやつだったかな、…

集成版『荒野のチャーリー・ブラウン』第五章

(41) 第五章。 やれやれ待たされたよ、とチャーリー・ブラウンはため息をつきました、ようやく主役のぼくたちの出番だ。 主役って?と、スヌーピーが歯をむき出します。これはスヌーピーが相手をせせら笑う時特有のジェスチャーでしたが、チャーリーはあえて…

映画日記2019年4月22日~24日/一気観!『映画クレヨンしんちゃん』シリーズ!(8)

ボックスセット『映画クレヨンしんちゃんDVD-BOX』2017は第25作『襲来!!宇宙人シリリ』2017の公開にあわせ前年度までの第24作までを収録した24枚組セットですが、前回ご紹介した第21作『バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』2013は監督が橋本昌和('75年生ま…

集成版『荒野のチャーリー・ブラウン』第四章

(31) 第四章。リラン・ヴァン=ペルト。 ・リラン! 無理に呼び起された不快から、反抗的に、ちょっとの間目を見開いて睨むように兄の顔を見あげたが、すぐまたぐたりとして、ズキンズキンと痛むこめかみを枕へあてた。ぼくは、腹が立ってならなかったのだ。…