人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

風化する記憶・後編(連作22)

(連作「ファミリー・アフェア」その22) S市の二年間は幼稚園の通園や銭湯通い、同じ市営住宅の男の子たち、買い物や小児科通院、月ロケット、テレビ取材(ぼくは動植物図鑑を丸暗記していたので。近所中の人に囲まれてまったく喋れなかったから放送された可…

(43e)デイヴ・ブルーベック(p)

Dave Brubeck(1920-2012,p)。 ブルーベックと言えば「タイム・アウト!」、「タイム・アウト!」と言えば5拍子のヒット曲『テイク・ファイヴ』'Take Five'と昔から決まっているのだ。アルバム'Time Out!'59.6-8(画像1)は発売前から絶大な自信を持って送り出…

風化する記憶・前編(連作21)

(連作「ファミリー・アフェア」その21) 初めて思考能力というものに気づいたのはまだ弟が生まれる前だから三歳頃、声に出さずとも頭の中で文章が作れるのが不思議だった。それから記憶を反芻する習慣がついた。今でもそうだ。 家族揃っての夕食後、水曜晩の…

(43d)デイヴ・ブルーベック(p)

Dave Brubeck(1920-2012,p)。 大ヒット作「タイム・アウト!」に先立つ3作はブルーベック・カルテットのもっとも勝負をかけた時代だっただろう。アルバムごとに明確なコンセプトを持ち、訴求力と普遍性がある。 さらにこのカルテットはレコードという媒体と…

通院日記・2月25日月曜・晴れ

今日の通院はメンタル・クリニックのみ、明日は歯科があって事故や急病でもない限り今週はそれだけ。ぼくのような生活保護医療者にとって対人事故による怪我・負傷は最悪で、医療証の対象外の上に生保受給者は家財保険以外の保険の加入は貯蓄とみなされるの…

(43c)デイヴ・ブルーベック(p)

Dave Brubeck(1920-2012,p)。 この頃まだ世評はブルーベックのピアノの表現力(主にスウィング感)への不評が尾を引いていた。そこでブルーベックは自作曲のソロ・ピアノ・アルバムで勝負する。それが'Brubeck Plays Brubeck'56.4(画像1)で、マイルスやビル・…

松尾芭蕉「野ざらし紀行」1685

松尾芭蕉(1644-1694)の紀行文「野ざらし紀行」1685は稿本により読み継がれ、木版印刷されたのは、芭蕉没後の1698年になってからだった。晩年の大作「奥のほそ道」で頂点を極める芭蕉の、六編の紀行文・日記(随想文)の最初の一編であり、文庫版では七ページと…

(43b)デイヴ・ブルーベック(p)

Dave Brubeck(1920-2012,p)。 後のロック・バンドでは当たり前になった大学の学園祭ツアーがデイヴ・ブルーベック・カルテットに始まるというのはちょっとした盲点で、ジャズ・クラブのような敷居の高い場所に出入りできない大学生や青年層もこれなら気軽に…

マーク・ボランから三枚

マーク・ボラン(1947-1977)とはもちろんギンギンのグラム(厚化粧)・ロックで70年代初頭に大スターだった人で、キンクスやザ・フーとも違った意味でイギリス人の趣味・嗜好を感じさせるギタリスト兼歌手。T.レックスとその前身ティラノザウルス・レックスはバ…

(43a)デイヴ・ブルーベック(p)

Dave Brubeck(1920-2012,p)。 昨年92歳の長寿をほとんど生涯現役で全うしたデイヴ・ブルーベックは公平に見れば20世紀のジャズを代表する数人のうちに含まれるだろう。それほどポピュリラティを誇るジャズマンだった。 ブルーベックは初期に'Dave Brubeck Oc…

生々流転・後編(連作20)

(連作「ファミリー・アフェア」その20) 古本屋では文庫本の三好達治詩集と梶井基次郎短編集を買った。毎月購読している音楽誌の特集はザ・ドアーズだった。高校生の頃熱中し、今では心の傷を開くようなバンドだ。 実家までの私鉄は空いている各駅停車を待ち…

(42e)ポール・デスモンド(as)

Paul Desmond(1924-1977,alto sax)。 70年はデビュー以来初めて録音がない。「明日に架ける橋」の次作はモダン・ジャズ・カルテットとの競演で、現行盤CDは'Live In New York'71.12(画像1)として再発されている。「ファースト・プレイス・アゲイン」でやって…

生々流転・前編(連作19)

(連作「ファミリー・アフェア」その19) 半年足らずで二度目の入院となると病状は初めての入院より重く、退院までの期間も長引いたので反省時間はたっぷりあった。ちょうど3年前に未決囚監にいた時季だったので、蝉の声が聞こえるうちに退院できたらいいな(3…

(42d)ポール・デスモンド(as)

Paul Desmond(1924-1977,alto sax)。 'Easy Living'では日本盤アルバム・タイトルになっている『水玉と月光』'Polka Dots and Moonbeams'が美しい。'Grad To Be Unhappy'はロリンズも演奏しているビリー・ホリデイ作のタイトル曲『不幸せでもいいの』、ポッ…

訪問看護を受ける・後編(連作18)

(連作「ファミリー・アフェア」その18) 訪問看護の精神保健福祉士Aさんは30歳だが実年齢よりぐっと老成した趣きのある人で、考えてみればぼくはもともと年齢など意識しないたちだったから気にするまでもなかった。寛解(または軽鬱)状態のぼくはものわかりの…

(42c)ポール・デスモンド(as)

Paul Desmond(1924-1977,alto sax)。 デスモントの本格的リーダー作第1作と言える「ファースト・プレイス・アゲイン」59.9がブルーベック・カルテットの「テイク・ファイヴ」59.6-8を受けて制作されたように、デスモントのRCA第3作'Take Ten'63.6(画像1)はブ…

訪問看護を受ける・前編(連作17)

(連作「ファミリー・アフェア」その17) 通院を始めてからもぼくはしばらくはまだ幻覚や幻聴に襲われていた。部屋の中に人間のかたちをした空気の塊がいてぼくの様子を見ていた。一緒の布団で娘が寄り添ってきて、重みや体温、息づかい、姿まで見えてくるが「…

(42b)ポール・デスモンド(as)

Paul Desmond(1924-1977,alto sax)。 デスモントはデビューからほぼ20年間ブルーベック・カルテットの専属メンバーだったので、その期間はカルテットの仕事の合間をぬって10枚ほどのリーダー作しかない。独立して旺盛な活動を始めた矢先に52歳の若さで癌で逝…

診察日日記・2月18日月曜・小雨

今日は内科・歯科・メンタル・眼科と午前中だけで4軒ハシゴ。昨夜はなんでこんなに集中するかなーと思いながら床についた。携帯で「美少女戦士セーラームーン」を入眠用に見ているが(効果あり)たかだか20年程度で見事に稚拙で古くさい。バブル末期、ぼくもラ…

(42a)ポール・デスモンド(as)

Paul Desmond(1924-1977,alto sax)。 ビ・バップ以降のジャズ界に輩出した白人アルトサックス奏者でも最大のジャズマンのひとり。人気は突出しており、ザ・デイヴ・ブルーベック・カルテットの固定メンバーになった50年代初頭から没年までの25年間に渡ってジ…

病名の進展、その他のエッセイ

(1)ぼくも診断名の変遷はほぼ同じです(ぼくは双極1型ですが)。ストレス性の強迫性障害→鬱病→躁鬱病、と、これは躁鬱病が判明していく一般的なパターンのようです。 3週間後くらいに載せる記事にも書きましたが、精神医学は100人医師がいれば100通りの診断が…

(41g)ジェリー・マリガン(bs,p)

Gerry Mulligan(1927-1996,baritone sax,piano)。 60年代以降のマリガンは巨匠の余裕でなんでもありになる。もちろん筋は通っている。マイルスと匹敵する唯一の白人ジャズマンたるゆえんだが、マイルスのようなストイックな方向ではなくもっと自由に多彩な活…

無免許男の感想その他のエッセイ

(1)今は故郷に帰っている友人が「こっちじゃ徒歩3分のコンビニでも車」と言ってたのを思い出しました。ぼくは電車と徒歩でずっと生活してきたので(それで十分だし)すぐ車、という感覚は理解できません。かえって面倒では?人数多いし子供もいるから?うーん。…

(41f)ジェリー・マリガン(bs,p)

Gerry Mulligan(1927-1996,baritone sax,piano)。 マリガンは、というかヴァーヴというレーベルは大物同士の共演アルバムをやたらに作りたがるところで、たとえば名盤と名高いゲッツとJ.Jの「オペラハウス」などぼくはまるで良さがわからないが、レーベルを…

ありふれた二人・後編(連作16)

(連作「ファミリー・アフェア」その16) 彼女は18歳で秋田県の人口4000人の小さな町からひとりで上京してきた。上京は憧れでもあったし高校以上の進学を実家に許されなかったこともあり、父親は税務署長、母は郵便局勤め、兄は高校教師という家庭環境もあった…

(41e)ジェリー・マリガン(bs,p)

Gerry Mulligan(1927-1996,baritone sax,piano)。 前回のチェット・ベイカーとの再会アルバム'Reunion'57.12(パシフィック)とは前後するが、ニューヨーク復帰後のマリガンは基本的には大手ヴァーヴ・レーベルの専属になる。 'Getz Meets Mulligan in Hi-Fi'5…

ありふれた二人・前編(連作15)

(連作「ファミリー・アフェア」その15) 結婚生活の間、夫婦で意見が分かれた時には九割方妻の判断のほうが良い結果になった。ぼくは一度にいくつもを平行して片付けなければと焦りがちなタイプだったが(職業病とも言えた)、妻はひとつひとつを慎重にこなし(…

(41d)ジェリー・マリガン(bs,p)

Gerry Mulligan(1927-1996,baritone sax,piano)。 そしてマリガンは再びニューヨークに戻ってきた。ニューヨークの音楽家組合は全米屈指の過当競争地区だから非常に規定が厳しく、59年末にロサンジェルスから移住したエリック・ドルフィーも組合規定で「移住…

病状の推移・後編(連作14)

(連作「ファミリー・アフェア」その14) 入院から10日間は寝たきりだった。24時間点滴で食事もなく、喉が渇くと氷を含ませてもらうか吸い飲みでひと口程度(吸い飲みの実用性を初めて知った)。昼も夜もわからず、夢と現実、妄想の区別がつかず(再び裁判された…

(41c)ジェリー・マリガン(bs,p)

Gerry Mulligan(1927-1996,baritone sax,piano)。 チェット・ベイカーは甘いハンサムでソフトなプレイにも中性的魅力があり、マリガン・カルテットの成功でたちまちガレスピー、マイルスを抜くジャズ誌の人気No.1トランペッターにになった。1年半も在籍せず…