人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

那珂太郎詩集「音楽」

久しぶりに戦後現代詩を取り上げる。那珂太郎(1922-2014・福岡県生れ)は現存詩人のなかでも最長老のひとりで、芸術院会員でもあった。詩歴は長いが寡作で、処女詩集「ETUDES」1950に次ぐ第二詩集が以下に紹介する詩を収録した中期の代表詩集「音楽」1966にな…

日記(3月30日・金曜・晴れ)

春一番かというくらい風が強い。暖かいのはありがたい。電気温風機のせいで1月には1万円を越えた電気代だったが、先月は小型ヒーターと加湿器の組み合わせで4,500円に抑え、今月は4千円を切った。 今週は眠たくて眠たくて、とにかく寝ている。肉体的には鬱症…

高橋新吉詩集「戯言集」(10 ・完)

最終回。 「高橋を敬愛していた中原中也は生涯高橋を優しく美しい心の持ち主と慕っていました。詩を読む限り高橋には烈しい面もあったように思えます。他人や社会への違和感にも敏感な人だったでしょう。こういう悩みを持つ人は本来賢くて優しいんですね。そ…

'DAIMAJIN:Monster Of Terror'

見ましたよ40年ぶりに(上)。まさか夜中に寝床で携帯電話の画面で再会することなるとはね。これを見た小学生の頃には21世紀には手のひらサイズのコンピューター電話で写真撮れたり、日本語タイプ機能で手紙送れたり、国際的映像バンクで動画見たりできるよう…

高橋新吉詩集「戯言集」(9)

今回の前書き。 「これだけ見事に、表現も的確で内面性も豊かな詩を書いている人がなぜ精神障害者として3年間の監禁治療を強いられたのか?お父さんの自殺から、自分が詩人の道に進んだからだと苦しみが高じて、それが重度の統合失調症の症状を示すようにな…

日記(3月28日・水曜・晴れ)

拘置所にぶちこまれたり入退院を繰り返していると毎日入浴する習慣がなくなる。そういうところでは週に3回あればいい方だし、留置場などは5日おきだった。留置場にはなんの罪状もなくても不審者という名目で拘束できるのだ。 拘置期間は10日ごとに強制的に延…

高橋新吉詩集「戯言集」(8)

今回の前書き解説。 「お気づきの通り、ダダには根本的にタブーとの内部矛盾があります。タブーへの否定を突き詰めていくと主体も自己否定を起こして消滅する。そうするとタブーは一気に熱狂(ファッショ)へ傾倒する。そういうダダイズムとファシズムの危険な…

HELP! 4人はアイドル

「ジョンは躁鬱だったかもしれないけどA型かB型だったんじゃないかと思います」という意見をいただきました。血液型性格判断は日本ならではとはよく言われること。欧米の資料を探しても出てこないでしょう。もしあるとしたら日本人によるインタビュー、もし…

高橋新吉詩集「戯言集」(7)

今回の前書き。 「もし犯罪や狂気が社会的適応性の不全であるならば、社会的適応性に問題はない犯罪や狂気は存在しないはずでしょう。しかし現実にはそれはある、と想像できます。家族愛を始めあらゆる愛、弱者へのいたわり、相互扶助、郷愁、努力・友情・勝…

日記(3月26日・月曜・晴れ)

寝過ごした。受診は朝10時なのに枕元の時計は10時10分だ。徒歩1分のクリニックとはいえ寝起きの仕度はある。パジャマはトレーナー型だからズボンは着替えるが上はセーターと襟巻きでごまかす。 「空腹で服薬してもね」と主治医に言われている、「代謝が遅く…

高橋新吉詩集「戯言集」(6)

今回の前書き。 「こんにちは。高橋新吉の場合は、ほとんど正方形の棺桶に閉じ込められたような3年間だったと思います(高橋に限らず、当時の精神病の入院治療自体がそういうものだったわけですが)。完全に生気を失い、廃人同様になったら治療の完了というこ…

定番イタリアン!

「ジョン・レノン全アルバム」が難航しているので、穴埋め記事をだらだら書こうと思います。掲載したジャケットをご覧ください。どれも70年代初期のイタリアン・ロックの名作と言われるもので、筆者もイタリアものを聴き始めた最初の10枚の中にこの3枚が入っ…

高橋新吉詩集「戯言集」(5)

今回の前書き。 「こんにちは。この詩は作者の実体験に基づくものですが、狂気と監禁、権力という主題は高橋新吉と同時代の世界各地の文学に繰り返し現れます。両世界大戦の間です。狂人と罪人がともに監禁によってしか保護・治療・懲罰できないとすれば、そ…

ストックトン「女か虎か」(再録)

これから再録するのは8か月前の記事。アメリカ本国では中学生ならみんな一度は読む話、ポオの「黒猫」やO.ヘンリーの「最後の一葉」並みに誰もが知る短篇小説とのこと。ならばさぞかし著名作家かと思うのだが、作者はこの一篇のみで名をとどめる凡庸な娯楽小…

高橋新吉詩集「戯言集」(4)

今回の前置き。 「はじめまして。難解に感じられるとしたら筆者の筆と考察の未熟によるものですが、高橋新吉自身に明快な読解を拒むものがあるとも思います。 高橋はぼくが大学在学中に亡くなったので、長老詩人の晩年と逝去を意識したのひとりです。30年あ…

ジョン・レノン全アルバム(2)

まず評伝の通り、68~69年のドキュメンタリー・アルバム(ヨーコとの共作)三部作「トゥ・ヴァージンズ」(写真上)「ライフ・ウィズ・ザ・ライオンズ」「ウェディング・アルバム」は音楽作品ではない。 半年後に迫ったビートルズの解散を睨み「平和の祈りをこめ…

高橋新吉詩集「戯言集」(3)

高橋新吉は精神分裂症(現在の統合失調症候群)と診断されている。きっかけは父の自殺によるショック、激しい自責の念からくる幻覚・妄想・錯乱だったという。 それにしても四方板壁・二畳に3年間監禁(事実上慢性患者への治療は監禁以外にない)…これを耐え抜い…

ジョン・レノン全アルバム(1)

ザ・ビートルズの正式な解散声明は70年4月だが、直後に発表されたアルバム「レット・イット・ビー」は投げ出してあった未完成セッションで、納得のいく傑作を出して解散だ、と団結して本当に傑作を作ったのが解散前に発売された「アビー・ロード」だった。 …

高橋新吉詩集「戯言集」(2)

「ダダイスト新吉の詩」1923の紹介で、日本のダダ運動は数年で霧消した、と述べた。高橋と宮澤賢治の影響は詩誌「歴程」の同人たちに大きく、「歴程」はまた高村光太郎の寄稿誌でもあった(シュールレアリスム=モダニズムの詩誌「詩と詩論」と抒情詩の詩誌「…

大島弓子「綿の国星」

何年かぶりに取り出したら、第1巻(78年6月)の表紙はチビ猫じゃなくてラフィエルなんですね。しかも暗くて輪郭がはっきりしない(白泉社のコミックスは紙質が良くないし、インクの発色も悪いと思われる)。ソデのリード文に支離滅裂なものも多いから、大手他社…

高橋新吉詩集「戯言集」(1)

「ダダイスト新吉の詩」に続き、前回で詩集の概要を解説し、ようやく「戯言集」1934の紹介に入る。 これは高橋新吉(1901-1987)の第一詩集「ダダイスト新吉の詩」1923(その前に「まくわうり詩集」という習作がある)・第二詩集「祇園祭り」1926・第三詩集「高…

ジョン・レノン1,000字評伝

次回からの記事で目指しているのは全訳詞集で、ご期待にそえるかわかりませんが、訳詞+評伝の形になります。ジョン・レノンの場合は作品の背景が重要かつ理解に必要で、それが強みと弱みの両方になっています。 前回端的に書いたように、ビートルズ解散後の…

高橋新吉「戯言集」序

今回からは高橋新吉(1901-1987・愛媛県生れ)の第四詩集「戯言集」1934から、表題作の連作長編詩『戯言集』を紹介したい。 高橋新吉は戦後にはダダと禅の詩人として国際的にも知られるようになる。たとえば戦後間もない代表作『るす』、 留守と言え ここには…

続「つる姫じゃーっ!」

どうもです。つる姫支持者もひとりくらいいるだろう、と期待もしていませんでしたが、まさかいらっしゃるとは。しかも予想もつかなかったかたから(笑)。 これが、だいぶ時代は下りますが「有閑倶楽部」あたりだったら老若男女問わず「あれ面白いね」という感…

ディラン後書き・レノン前書き

どうもです。最初10曲くらいは面白くてたまらず、訳してみると理解が違うなーと張り切っていましたが、もう限界です。飽きてきました(笑)。 他の重要曲は『ライク・ア・ローリング・ストーン』級の長編ばかりなので(あれは意地で訳しましたが)とりあえず短編…

山上たつひこ「ガキでか」

こうして「山上たつひこ『ガキでか』」と記すだけで中年男の胸が熱くなるような気がします。山上たつひこは一時小説家宣言をしてマンガから遠ざかっていましたが、今は「中春こまわり君」(第1巻2009年~)として中年男になったガキでかの哀愁生活を描き充実し…

ジョン・レノンのアルバム(序)

ジョン・レノンは生きていれば今年で71歳になる。ひとつ年下のボブ・ディランが予想しなかった大復活を遂げ、ビートルズの盟友ポール・マッカートニーもアメリカのライバル、ブライアン・ウィルソン(ビーチ・ボーイズ)も中年時代の不遇を拭って新鮮な音楽活…

高橋新吉「ダダイスト新吉~」続

前回の高橋新吉詩集「ダダイスト新吉の詩」1923の紹介で、日本では本場のダダの分裂期にダダが輸入されたためあっけなくダダ運動はコミュニズム、抒情詩、シュールレアリスムに分散した、と述べた。高橋と宮澤賢治の影響は詩誌「歴程」の同人たちに大きく、…

土田よしこ「つる姫じゃーっ!」

今回はマンガの話でも書こうと思いますが、だれも知らない作品の話をしても仕方がない。だからと言って語り尽くされたマンガを取り上げるのも芸がない。すると意外に「だれもが知っているけれどだれも語らない」作品というのがあるわけです。 ギャグ漫画など…

ボブ・ディラン訳詞集・最終回

今回で一旦最終回。ボブ・ディラン(1941-)はムラがある人だが、かつては本当に天才だった。特にアルバム第二作「フリーホイーリン」1963から第七作「ブロンド・オン・ブロンド」1966までの神がかり状態は近年編集されたドキュメント映画「ノー・ディレクショ…